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別冊付録

Session II Cardio-Vascular Imaging

心臓 I :SOMATOM Definition Flash with Stellar Detector 初期使用経験

静 毅人(独立行政法人 国立病院機構 高崎総合医療センター 循環器内科)

静 毅人(独立行政法人 国立病院機構 高崎総合医療センター 循環器内科)

高崎総合医療センターは,2012年6月に「SOMATOM Definition Flash with Stellar Detector」を導入した。本講演では,新開発の次世代型検出器である“Stellar Detector”を搭載したDefinition Flashによる,被ばく低減と画質向上の効果について報告する。

■Stellar Detectorの特長

1990年代後半から続けられているシーメンスの被ばく低減,画質改善の技術革新は,X線管の改良を中心に進められ,逐次近似再構成の技術にも大きな進歩があったが,ディテクタ部分については,97年に高発光のシンチレータが登場してから,あまり大きな進展がなかった。
従来のディテクタは,光を吸収して電流を発生させるフォトダイオードが中心にあり,その周囲にAD変換器が配されていた。そのため,長く複雑な配線が必要で,電子ノイズが発生しやすくなり,SNRの低下を招いていた。
新開発のStellar Detectorは,1枚のICチップ上にフォトダイオードとAD変換器を統合させることで,配線がほとんどなくなり,電子ノイズが大幅に改善する(図1)。そのため,z-Sharp Technologyによって0.33mmに向上した空間分解能の理論値を0.3mmに近づけられる。 また,Stellar Detectorにより,ノイズが同等の場合,線量をおよそ50mA低減できる(図2)。
さらに,ボーラストラッキング法のワークフローでありながら,テスト造影法と同様にTime Density Curveを確認して撮影するTest Bolus Tracking(TBT)法を併用することで,呼吸停止後の安定した心拍時に撮影を行っている。画像再構成も自動かつ迅速に進み,スタートボタンを押してから60秒程度で画像を確認することができる。

図1 従来のディテクタとStellar Detectorの比較
図1 従来のディテクタとStellar Detectorの比較
図2 Stellar Detectorによる線量低減効果
図2 Stellar Detectorによる線量低減効果

■多彩な心臓CTプロトコール

Definition Flashの心臓CTには,さまざまなスキャンプロトコールが用意されている。
冠動脈CTでは,心拍数が65bpm未満の場合はFlash Spiral Cardio,75bpm未満ではFlash Cardio Sequenceでのstep and shoot法を選択する。心拍数75bpm以上,心拍変動3以上の場合はNormal Spiralを用いる。
triple rule outの場合は,心拍数62bpm未満なら,被ばく線量のきわめて低いFlash Chest Painを選択し,63bpm以上で心拍変動3以上なら,Chest Painで撮影する。

■症例提示

1.Flash Spiral Cardio
●症例1:PCI後症例
73歳,女性,右冠動脈の狭窄でPCIを施行後,フォローアップで冠動脈CTを撮影した。0.54mSvと非常に少ない線量で撮影できている。他社製64列CTでは評価できなかったステント内腔が,明瞭に描出されている(図3)。

図3 症例1:PCI後フォローアップ(Flash Spiral Cardio)
図3 症例1:PCI後フォローアップ(Flash Spiral Cardio)

●症例2:高度石灰化症例
70歳,女性,PCI後のフォローアップ。Agatstonスコア5318ときわめて高度な石灰化が認められ,造影検査を通常断念するような症例だったが,0.63mSvで撮影可能であり,石灰化やステントによるアーチファクトが少なく,内腔が明瞭に評価し得た(図4)。

図4 症例2:高度石灰化症例(Flash Spiral Cardio)
図4 症例2:高度石灰化症例(Flash Spiral Cardio)

2.Flash Cardio Sequence
●症例3:狭心症疑い
76歳,男性,狭心症疑い例である。Flash Cardio Sequence(step and shoot法)で撮影した画像は末梢まできれいに描出され,実効線量は2.39mSvであった(図5)。

図5 症例3:狭心症疑い(Flash Cardio Sequence)
図5 症例3:狭心症疑い(Flash Cardio Sequence)

3.Normal Spiral
●症例4:高心拍・心房細動症例
86歳,女性,心房細動があり,心拍数は84bpmだった。Normal Spiralにより収縮期の最適位相で撮影(図6)。心房細動の高心拍症例でも,実効線量9.13mSvで,末梢まで明瞭に描出されている。

図6 症例4:高心拍・心房細動症例(Normal Spiral)
図6 症例4:高心拍・心房細動症例(Normal Spiral)

4.Flash Chest Pain
●症例5:血栓閉塞型上行大動脈解離
84歳,男性。胸痛のtriple rule out症例で心拍が安定していたため,Flash Chest Painで撮影した(図7)。冠動脈もきれいに描出されており,血栓閉塞型上行大動脈解離の状態も,エントリーを認めることができた。実効線量は2.88mSvと,非常に低被ばくであった。

図7 症例5:血栓閉塞型上行大動脈解離(Flash Chest Pain)
図7 症例5:血栓閉塞型上行大動脈解離(Flash Chest Pain)

■一般的な64列CTとDefinition Flashの画質と実効線量の比較

当院で2012年6月まで使用していた他社製64列CTとDefinition Flashの冠動脈CTにおける造影効果について,視覚的評価で比較検討した。
対象は,64列CTで撮影した最後の50症例と,Definition Flashの最初の50症例。いずれもβ遮断薬を用いており,高度石灰化や頻拍での中止例はなかった。64列CTはすべてヘリカルスキャンで撮影し,Definition Flashは心拍数や不整脈の有無によってプロトコールを選択した。
最適位相の画像からVR,MPR,CPR像を作成し,画質はpoor,fair,good,excellentの4段階で視覚評価を行った。また,1検査あたりの総計の実効線量を比較した。
実効線量総計の比較では,64列CTの平均値は35.1mSvであったのに対し,Definition Flashは7.6mSvと,triple rule outなどの比較的高い線量を要するプロトコールが含まれているにもかかわらず,平均1/5にまで低減されている(図8)。
画質は,64列CTではgood以上が82%だったが,Definition Flashでは94%となっている(図9)。

図8 64列CTとの線量の比較(検査総計の実効線量)
図8 64列CTとの線量の比較(検査総計の実効線量)
図9 64列CTとの画質評価の比較
図9 64列CTとの画質評価の比較

■Definition Flashの各プロトコールにおける画質と実効線量の比較

Definition Flashの導入直後から,連続100症例(triple rule outは除外)のプロトコールごとの比較も試みた。プロトコールは心拍数と不整脈の有無に応じて選択した。CARE kVを100〜120kVとして,Normal Spiralでは導入初期ということもあり,ECG modulationを使用しなかった。
各プロトコールの実効線量は,Normal Spiralが12.79mSv,Flash Cardio Sequenceが3.72mSv,Flash Spiral Cardioは0.78mSv,全体の平均値は6.12mSvと,非常に低かった。
画質評価は,Flash Spiral CardioとNormal Spiralでは,good以上が96%だった。

■まとめ

Definition Flashの導入により,被ばく低減と画質改善を実現することができた。また,TBT法との相性が良く,ワークフローも向上した。SOMATOM Definition Flash with Stellar Detectorの導入は,循環器領域における診断・治療効果判定の質の向上につながったと評価している。
現在,CARE kVを80〜100kVとして,半数以上の症例は80kVで撮影しているが,画質は十分に維持されている。低電圧にすることで造影効果が高まるため,造影剤も40cc程度に減量できた。
また,レートコントロールにより,80%程度は低被ばくで画質も良好なFlash Spiral Cardio で撮影し,Normal SpiralでもECG modulationを積極的に使用して,さらなる低被ばくと造影剤の減量を目指している。

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