シーメンス・ジャパン株式会社

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別冊付録

Session II Cardio-Vascular Imaging

ポストプロセス:救急診療での「syngo.via」の活用

本多正徳(済生会宇都宮病院 放射線科)

本多正徳(済生会宇都宮病院 放射線科)

本講演では,シーメンス社の画像解析ソリューション「syngo.via」が,当院の救急診療において果たしている役割を中心に説明する。

■サーバサイドプロセッシングシステムを採用したsyngo.via

シーメンス社のsyngo.viaは,サーバサイドプロセッシングシステムを採用した,PACSを凌駕する新しいタイプの画像診断システムだと言える。従来のPACSと3D画像処理ワークステーションを組み合わせた機能を有しており,特筆すべきは,サーバサイドプロセッシングによって,モダリティから自動転送された撮影データを自動解析することである。人の手を介することなく,curved MPR像やvolume rendering(VR)像など,われわれが要求する3D画像を提供してくれる,新時代の画像診断ソリューションであると認識している。

■救急診療でのsyngo.viaの画像処理

夜間,休日の救急診療では,多くの施設でマンパワーが不足しているのが実情である。これはわが国だけでなく,例えばドイツなどでも同じような状況であり,専門性の高い放射線科医や診療放射線技師が不在のため,画像診断や提供する画像のクオリティが低下してしまうことも考えられる。このような状況を改善し,マンパワーが不足している環境でもクオリティの高い診断をするための画像を提供してくれるのがsyngo.viaである。

●症例1:大動脈瘤
図1は,syngo.viaで画像解析を行った大動脈瘤の症例である。VR像をあらゆる角度に回転させたり,病変部を拡大して観察することが容易であるが,なかでもsyngo.viaが得意としている機能の1つに血管の自動抽出がある。撮影後すぐに,図1のように大動脈や左右の総腸骨動脈が自動的に描出される。この際,例えば右の総腸骨動脈の描出範囲が不足しているのならば,そのエリアをマウスで選択してクリックするだけで,広げることができる。
この血管の抽出のほかに,curved MPR像での血管内腔の評価も容易に行える。syngo.viaでは,curved MPR像上に,緑,黄,赤の3色で血管が選択され,中心線に直交する最大直径,最小直径を自動計測する(図2)。大動脈瘤ステントグラフト内挿術では,術前にステントグラフトのサイジングを行うが,syngo.viaでは最大直径,最小直径が石灰化を省いた状態で正確に計測できており,proximal neckの長さや,瘤までの距離も測定することが可能である。
当院の場合,大動脈ステントグラフト内挿術では,通常,診療放射線技師が3D画像処理ワークステーションを使用して,このような画像処理を行っている。一方で,大動脈瘤破裂など一刻を争う患者を受け入れる救急診療では,モダリティからの撮影データのサーバ転送,画像解析処理までが,syngo.viaにより短時間で自動的に行われている。これにより,その後の診断,治療を迅速に進めることが可能になっており,syngo.viaの真価が発揮されている。本講演前日にも,胸部大動脈瘤破裂の患者が救急搬送されてきたが,20時20分にCT撮影を行い,21時30分には大動脈瘤ステントグラフト術を終え,救命することができた。これも,syngo.via導入による成果だと考えている。

図1 症例1:syngo.viaでの大動脈瘤のVR像
図1 症例1:syngo.viaでの大動脈瘤のVR像
図2 症例1:curved MPRでの大動脈の自動計測
図2 症例1:curved MPRでの大動脈の自動計測

●症例2:冠動脈(正常例)
冠動脈領域においても,syngo.viaの活用が期待できる。検査終了後,syngo.viaを起動すると,血管が自動抽出された冠動脈の3D画像が速やかに表示される(図3)。しかし,あくまでも自動抽出であるため,syngo.viaのビューワ上で血管を描出したい箇所をクリックで選択して,より高い精度の画像を得るように追加処理する。
当院では現在,冠動脈疾患の緊急検査にはsyngo.viaを使用していない。しかし,今後,救急において利用することで,冠動脈狭窄におけるCT angiographyの高い陰性適中率を生かせるようになれば,冠動脈造影を行わずに,低侵襲に診断できるようになると期待している(図4)。これまでの経験では,syngo.viaは非常に高い精度で冠動脈を描出できている。
なお,syngo.viaの3D画像は高精度であるが,当院の場合,診療放射線技師が作成したより精度の高い3D画像を長期保存用としている。しかしながら,syngo.via導入により,迅速に画像を提供できる環境を構築できたことは,救急診療において重要なことだと考える。

図3 症例2:冠動脈(正常例)でのsyngo.viaによるVR像
図3 症例2:冠動脈(正常例)でのsyngo.viaによるVR像
図4 症例2:syngo.viaでの冠動脈狭窄の評価
図4 症例2:syngo.viaでの冠動脈狭窄の評価

■救急診療におけるsyngo.viaの役割

救急診療では,撮影データのポストプロセスがカギとなる。syngo.viaが実際にどのような役割を果たしているのか,当院における救急診療のワークフローを解説する(図5)。
まず,多くの施設で行われている一般的なワークフローを説明する。診療科の医師が電子カルテシステム上で検査オーダを発行すると,その情報がRISに送信される。さらに,RISに送られた情報は,ワークリストとして,CT,MRI,PET・CTなどのモダリティに転送される。その後,撮影が行われると,撮影データは検像システムに送られることになる。検像システムでは,画像の並べ替えなどの作業が行われ,そのデータがPACSに保存される。
これらの作業は,診療放射線技師が手動で操作するのが一般的である。しかし,これは,画像の転送ミスや転送忘れなど,医療事故につながる,リスクの高い作業だと言える。加えて,検像システムからPACSに転送するまでに,ある程度の時間が必要になり,それによって,放射線科医の読影も遅れ,診療科の医師が画像を参照できるようになるまでにも時間を要する。また,画像処理を行う場合は,モダリティでの撮影が終わった後,そのデータが3D画像処理ワークステーションに転送され,診療放射線技師がオーダに応じ,労力をかけて3D画像を作成して,完成したデータをPACSに送信している。このため,診療放射線技師の作業負担になるだけでなく,放射線科やほかの診療科の医師が3D画像を参照するまでに時間がかかってしまう。
さらに,救急診療の場合,救急担当医がモダリティのコンソールや3D画像処理ワークステーションの設置場所まで来て画像を確認するため,その間,診療放射線技師は検像作業や3D画像作成を行えない。また,救急担当医がコンソールや3D画像処理ワークステーションのモニタで,PACS送信前の画像を観察しながら,放射線科医とディスカッションする場合,放射線科医は画像診断室からコンソール設置場所などにわざわざ出向かねばならず,非常に非効率である。
しかし,当院では,syngo.viaを導入したことで,このような問題点が解決している。syngo.viaを活用したワークフローでは,RISからモダリティにワークリストが送信されるとともに,syngo.viaのサーバにも同様にリストが送られる。この段階で,syngo.viaでは,取得したオーダ情報に基づいて,自動前処理が行われる。撮影後に,モダリティからsyngo.viaのサーバにデータが自動的に転送されると,解析処理がなされる。放射線科医は,PACSの読影ビューワからsyngo.viaを起動すると,すでに画像解析処理が終了しており,すぐに読影ができる状態になっている。そのため,救急担当医とのディスカッションも画像診断室から電話で行える上に,救急担当医よりも早く3D画像を観察できるために,より適確なコメントをすることが可能となる。

図5 当院の救急診療におけるsyngo.viaを用いたワークフロー
図5 当院の救急診療におけるsyngo.viaを用いたワークフロー

■救急診療におけるsyngo.via導入の評価

救急診療におけるsyngo.via導入の評価を以下にまとめる。

  1. サーバサイドポストプロセッシングシステムであるsyngo.viaは,夜間,休日など診療放射線技師が不足している状況においても,クオリティを低下させることなく,高精度の画像を提供できる。これにより,通常の診療時と同等の診断クオリティを維持することに貢献している。
  2. モダリティからの撮影データの自動転送とポストプロセッシングの組み合わせによって,リアルタイムでの読影が可能になり,救急診療での有用性は非常に高い。さらに,画像診断室にいながらにして,救急担当医と電話でディスカッションすることも容易である。
  3. データの自動転送は,医療安全の観点からもメリットが大きい。医療安全を図るためには,ヒューマンエラーを防ぐ観点からも,できるかぎり人の手を介さないデータの転送が重要である。syngo.viaの自動転送機能により,転送ミスや転送漏れなどをなくすことができる。

■まとめ

本講演では,救急診療でのsyngo.viaの活用について述べた。syngo.viaが,世に出てからあまり時間が過ぎていないが,今後さらに機能が進化していくことで,これからの時代に必要となる画像診断ソリューションになると考えている。

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