シーメンス・ジャパン株式会社

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Technical Note

2010年4月号
Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

CT−3Dルーチン化後のNext Step─マルチスライスCT最新撮影技術とワークフロー

谷川 光
マーケティング本部CT事業部

近年,腹部領域の画像診断におけるマルチスライスCTの重要性はますます高まっている。件数の増加,撮影範囲の拡大に加え,3D画像はルーチン化するとともに検査目的・データの利用方法の多様化も著しい。
これらの背景からシーメンスは,診断におけるNew Dimensionを実現する新しい撮影技術とともに,ワークフローの抜本的な改善を目的とした新しいイメージング製品を開発した。


■ Adaptive 4D Spiral

腫瘍性病変に対しては従来,同一位置での連続したConventional Scanによってパーフュージョン等の解析を行ってきた。
しかし,カバレッジが検出器幅に制限されるために,解析は局所に制限される上,確定診断後の外科的治療の術前情報に必要な範囲の血流情報はまったく望めない。また,Conventional Scanでは体軸方向分解能が不足する。したがって,従来の手法の延長ではすべての問題点の解決とはなり得ない。
シーメンスがマルチスライスCTの最新機種(図1)に搭載した“Adaptive 4D Spiral”は,これらの制限を解消する新しい撮影技術である(図2,3)。Adaptive 4D Spiralは,寝台のスムーズな加減速を行う連続往復Spiral Scanによって1〜1.5秒間隔で途切れのない経時的データを取得し,パーフュージョン等の解析,4D Imagingが可能である。検査目的に応じ,撮影間隔や途中休止なども自由に調整できる。撮影中はリアルタイムに線量の最適化を行う。
さらに時間軸での処理によって,コントラストを保ちつつSNRを改善する“4D Noise Reduction”を新たに開発した。両者の併用により,線量最適化を行わない場合と比較すると,約50%の被ばく低減が可能である。
カバレッジは「SOMATOM Definition AS+」では270mmである。プラナー像での拡大率を考慮すると,体軸方向12インチのFPDに匹敵し,腹部血管造影を代替するために十分なカバレッジを確保している。さらに「SOMATOM Definition Flash」では480mmものカバレッジを有し,腹部大動脈瘤など,より広範な病変へも対応可能である。
Adaptive 4D Spiralが実現した真のOne Organ Imagingによって画像診断に新たな評価軸を提供する。


図1 Adaptive 4D Spiralを搭載できるシーメンスの最新CT
図1 Adaptive 4D Spiralを搭載できるシーメンスの最新CT
a:SOMATOM Definition Flash
b:SOMATOM Definition AS+


図2 Conventional ScanとAdaptive 4D Spiralの比較
図2 Conventional ScanとAdaptive 4D Spiralの比較

図3 Adaptive 4D Spiral によるVolume Perfusionと4D image
図3 Adaptive 4D Spiral によるVolume Perfusionと4D image

syngo.via

syngo.viaは,画像保管やレンダリング処理を行う本体とネットワーク接続された複数のクライアントから構成され,クライアントはHISなどとの共用も可能である。開発にあたっては,ワークフローを撮影オーダ発生の時点から見直し,新開発の高速化・自動化技術を多数投入している(図4)。


図4 syngo.via 概念図
図4 syngo.via 概念図
赤線は,従来なかった新しい接続,青線はsyngo.viaによって高速化される部分を示す。

オーダ情報はCTへとともに,syngo.viaへも送られる。この時点でsyngo.viaは,オーダ目的に合致する画像処理を判断すると同時に,比較読影に必要な過去画像を自動的に取り込む。前述のAdaptive 4D Spiralによって270mmの範囲を10位相の再構成を行った場合を例にすると,9000スライスものデータが発生するため画像転送時間はワークフローに大きく影響する。
そこで,シーメンス製モダリティからsyngo.viaへ独自プロトコールを利用して高速画像転送を行う“Direct Image Transfer”を開発した。同一のネットワークにおいて転送時間を比較すると,DICOM Q/Rでは1125秒,Direct Image Transferでは360秒であり,大幅な時間短縮が可能である。
画像処理において従来のワークステーションでは,ソフトの起動とデータをメモリに展開するまで操作者の待ち時間が発生する。syngo.viaでは,画像データを受け取ると最適な処理エンジンを直ちに自動実行するため,この待ち時間は発生しない。さらに,2D画像を含むマルチモダリティ対応と高度な自動処理機能を搭載している。腫瘍サイズの変化を判定する場合を例にすると,PETとの比較読影,フュージョン,高精度な自動処理による腫瘍部のセグメンテーションなどが可能である(図5)。
ネットワーク上のあらゆる場所から自由にアクセスし,手軽に2D,3D,4D,解析結果を参照できる上,高精度な自動処理によって処理の客観性,再現性を向上させるsyngo.viaは,ワークステーションでもなく,PACSでもないまったく新たなコンセプトのImaging Softwareであり,診療のワークフローを強力に加速する。


図5 syngo.viaによる腫瘍サイズ変化の判定
図5 syngo.viaによる腫瘍サイズ変化の判定
各2回のCT,PET,フュージョンを表示している。また,腫瘍部をセグメンテーションしサイズの変化を数値化している。

今後もシーメンスは,イノベーションリーダーとして,モダリティ個々の断片的な開発ではなく,診療ワークフロー全体を見据えた製品開発を進めていく所存である。

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