シーメンス・ジャパン株式会社

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Technical Note

2010年4月号
Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

DR/DA(FD)−Artis zeeシリーズ最新技術─腹部領域への展開

林 昭人
マーケティング本部AX事業部

血管撮影装置「Artis zee」シリーズでは,高い画質・駆動性・操作性を有する装置本体に,最新の2D/3Dイメージング応用技術を統合させることで,高度化するインターベンション手技に対し多彩な画像支援環境を提供している。
本稿では,腹部領域を中心に展開している最新ソフトウエア・ハードウエア技術に関して紹介する。


■ ソフトウエア

1.syngo DynaCT
syngo DynaCT”は,今日のIVRにおけるCTライクイメージング普及に先鞭をつけたアプリケーションである。Cアーム回転によりボリュームデータを収集し,コーンビームCT再構成によりスライス画像を作成した後,MPR/MIP/VRTによる3D表示を行う。現在も,画質・処理速度・操作性での性能向上が続いており,TACEなどでの利用や後述する非血管系3Dガイディング機能,血管系3Dロードマッピング機能などへ応用されている。

2.syngo iGuide
syngo iGuide”は,体表面から軟部組織中へのデバイス誘導を支援する3Dガイディング機能である。syngo Dyna CTによる3D画像上で計画した誘導予定パス(直線)のグラフィックと,透視ライブ像上とをリアルタイムで重ね合わせることにより,透視下での三次元的なガイディングを可能にする。角度や深さの制限がなく,肋骨等のアーチファクトの影響が少ないため,バイオプシー,RFA,椎体形成術などの非血管系IVRに有用である(図1)。


図1 syngo iGuide
図1 syngo iGuide
syngo DynaCT画像データをもとに,体幹部での体表からのデバイス誘導を支援する。バイオプシー,RFA,椎体形成術など,非血管系IVR全般に応用できる。

3.syngo Embolization Guidance
syngo Embolization Guidance”は,前述のsyngo iGuideを進化させた新しいアプリケーションで,塞栓術時の血管内デバイスの誘導を支援する機能である。syngo DynaCTによる3D画像上で,目的とする血管の近位部と遠位部とを指定すると,血管走行に沿った誘導予定パス(曲線)が自動抽出される。このパスのグラフィックと透視ライブ像とをリアルタイムで重ね合わせることで,透視下でデバイスの誘導を行う。立体的に複雑な形態を成す血管群に対して,事前に3D上で血管を同定しておくことができ,Cアーム角度変更による透視画像の変化にもリアルタイムで追従するため,塞栓術だけでなく,血管系IVR全般へ応用できる(図2)。


図2 syngo Embolization Guidance
図2 syngo Embolization Guidance
syngo DynaCT画像データをもとに,指定した血管走行グラフィックを透視画像上に投影できる。Cアーム角度変更に自動追従し,血管系IVRにおける3Dガイディングの役割を果たす。

4.syngo iFlow
syngo iFlow”は,造影剤を注入しながら連続撮影された一連の血管動画像から,画像上の各ピクセルがピーク値を迎えるまでの経過時間(Time to Peak)を算出し,その値をカラーマッピングさせる2Dアプリケーションである。画像中に血流時相情報が含まれるため,インフローとアウトフローの判別がつけやすくなり,動静脈や腫瘍支配血管の同定などが容易になる。また,治療前後や,病変側・正常側の画像を比較することで,相対的な血流の違いを把握することもできる(図3)。


図3 syngo iFlow
図3 syngo iFlow
2D連続撮影データから造影剤のピーク到達時間を算出し,カラーマップを作成する。腫瘍へ至る血管の同定や,治療前と治療後での血流速度の違いを把握することができる。

5.syngo iPilot
syngo iPilot”は,作成した3D画像と透視中のライブ画像とを,リアルタイムで重ね合わせ表示する3Dロードマップ機能である。あらかじめ手技に必要な領域を3D画像化しておき,必要に応じて透視画像とオーバーレイ表示することで,デバイスを迅速に誘導することができる。従来は脳血管内治療分野で使用されているが,現在では,腹部大動脈ステントグラフト留置術時に使用されることもある。また,欧米ですでに開始されている心尖部からの人工心臓弁留置術の際にも,必須機能として利用されている(図4)。


図4 syngo iPilot
図4 syngo iPilot
syngo DynaCT画像データを透視画像上へ直接投影させることで,3Dロードマッピング機能を提供する。従来は脳血管内治療で用いられることが多かったが,近年では欧米を中心に,分枝型のステントグラフトや人工心臓弁の留置計画用として利用されることが増えてきた

■ ハードウエア

1.Cross Hair Light
“Cross Hair Light”は,フラットディテクタの前面カバーに装着された赤色ライトマーカーである。長軸・短軸の中心2方向からライン状の赤色マーカーが対表面に向かって投影され,2本のラインが重なる交点を視野の中心として把握することができる。前述のsyngo iGuideにおいて,体表上の穿刺点やデバイス挿入角度を知ることができるほか,通常の透視時でもパンニングや位置合わせ時に使用でき,透視頻度を減らし被ばく抑制効果が期待できる(図5)。


図5 Cross Hair Light
図5 Cross Hair Light
フラットディテクタの前面に赤色クロスラインマーカーを搭載し,体表面上にターゲットポイントを投影する。非血管系IVR時に有用であるほか,パンニング時の透視回数を減らすことができる。

2.Double Slide C-arm
“Double Slide C-arm”は,天井懸垂メインCアームにスライド回転を補助するセカンドCアームを追加したダブルスライド方式Cアーム機構で,「Artis TA」に採用されている。正面回転(プロペラ)だけでなく,側面回転(オービタル)においても,CTライクイメージングに必要な広角200°回転が行える。頭部から下肢へ至る広い範囲でsyngo DynaCTが利用できる唯一のシステムであるため,体幹部全領域IVR用システムとして高評価を得ている。また,回転撮影位置はCアームを平行移動させればよく,天板を移動させる必要はない。このため,Cアーム退避位置が問題となりやすいステントグラフト治療を目的としたハイブリッドORへの導入例も増えてきた(図6)。


図6  Double Slide C-arm
図6  Double Slide C-arm
ダブルスライド方式Cアーム機構により,側面からのCTライクイメージングが可能。Cアームを平行移動できるため,患者を動かすことなく広範囲でデータを収集できる。

血管撮影装置Artis zeeシリーズで,腹部領域を中心に展開している最新のソフトウエア/ハードウエア技術について紹介した。アプリケーションソフトだけ,専用ハードウエアだけ,ましてやCTライクイメージングだけでは,高度化するIVRを支援していくのは困難である。今後もシーメンスは,多彩な機能を開発・製品化するだけでなく,これらを統合させることによって,IVR画像支援環境の動向とニーズに沿った最適なシステムの提供を進めていく。



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