東芝メディカルシステムズ

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Technical Note

2009年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

CT−循環器領域における東芝CTの到達点

山田徳和
営業推進部

近年,多くの施設に64列Multi Detector Row CT(MDCT)が導入され,虚血性心疾患の診断ツールとして心臓CT検査が急速に普及しつつある。
これまで,心臓(冠動脈)をCTで撮影するためには,主に3つの技術的要素(時間分解能,空間分解能,広範囲撮影)が求められてきたが,これらは64列MDCTの登場でひとまずの到達点に達したという評価を得ている。
さまざまなメーカーが,64列MDCTの次の世代を担う装置を発表しているが,本稿では,撮影ボリューム内の究極的な同時相化を眼目として開発されたArea Detector CT「Aquilion ONE」(図1)について紹介する。


図1 Aquilion ONEの外観
図1 Aquilion ONEの外観

■ Area Detector CT「Aquilion ONE」

Aquilion ONEの特筆すべき特長は,体軸方向0.5mm×320列(160mm)のエリアディテクター(図2)を搭載したことである。これは,単に多列化し,高速でスキャンできる点にのみ着目したわけではなく,全心臓を寝台移動することなく一度に撮影することにこだわった成果と言えよう。このエリアディテクターの搭載により,ONE Rotation/ONE Beat以内での心臓CT検査が可能となり,検査のクオリティを向上させる上でさまざまな利点が生まれた。


図2 0.5mm×320列の面検出器
図2 0.5mm×320列の面検出器

■ ONE Rotation/ONE Beatによる心臓CT検査

One Rotation/ONE Beatでの心臓CT検査の大きな特長は,(1) 撮影時間を短縮することにより,体軸方向の時間分解能も向上すること,(2) 被ばく線量の低減,(3) 少ない心拍で検査が終了するため,心拍変動の影響を除外することが可能なこと,(4) 複数心拍間での心位相ズレによるバンディングアーティファクトが原理的に発生しないこと,(5) 不整脈症例への対応が容易なことなど,多くの点が挙げられる1),2)
従来,心臓のボリュームデータを得るためには,複数心拍にわたり複雑に入り組んだデータを収集する必要があった。その結果,心臓CT検査中に起こりうるさまざまなリスクを回避し,データの冗長性を担保するためには,多くのオーバーラップ撮影が余儀なくされていた。それに対して,Aquilion ONEは,その特性からオーバーラップ撮影をすることなく,短時間にシンプルなボリュームデータを収集可能なため(図3),心臓CT検査で問題とされてきた被ばく線量を従来の1/3〜1/4程度まで低減可能となり,さらには,心拍変動とバンディングアーティファクトの影響を排除することをも可能とした。
また,不整脈症例への対処にも非常に有効となっている。従来のCTで,複数心拍のデータから心臓のボリュームデータを構築する場合には,不整脈の発生を予測しておき,画像を再構成する際に不整脈が発生した部分のデータを除外する作業が必要となる。さらに,データを除外することにより発生しうるデータの欠損を避けるため,撮影のオーバーラップを多めにする必要があった。これに対して,Aquilion ONEでは1心拍のみの最適心位相から全心臓のボリュームデータを構築できるため,不整脈が発生していない整脈を1心拍含む撮影を念頭に入れて検査を行うだけでよい。もし,予期せぬ不整脈が発生した場合にも,システムがリアルタイムにR-R間隔を監視し,1心拍を追加撮影するという不整脈対応機能が搭載されているため,得られたデータの中から整脈を選択するだけで,良好な画像が得られるようになった。
このように,従来心臓CT検査では困難とされていた不整脈症例に対して,撮影から画像再構成においてさらに簡便なワークフローを実現した。


図3 心臓CT検査で収集されるボリュームデータの概念図
図3 心臓CT検査で収集されるボリュームデータの概念図

■ 多様化する心臓CT検査

心臓CT検査は,普及とともにその目的が多岐にわたり,その中から有用性が見出されてきたが,Aquilion ONEは複雑化する検査体系を簡便にするためにいくつかの撮影モードを搭載し,目的に応じた検査を的確に選択できるようインターフェイスを改良した(図4)。

1.Calcium Score mode
Calcium Score modeは,単純CT検査で,冠動脈の石灰化評価を目的とした撮影方法である。胸部単純CT検査より少ない被ばく線量で検査が可能となる。

2.Prospective CTA mode
Prospective CTA modeは,造影検査にて,心臓および冠動脈の形態評価を目的とした撮影方法である。心電図に同期して,1心拍の限られた心位相にのみprospectiveにX線を照射し,得られたデータから心臓が最も静止している心位相を再構成できる。さらに被ばく線量は,通常のヘリカルスキャンによる心臓CT検査と比べて,1/3〜1/4程度に低減可能となっている。

3.CTA/CFA mode
CTA/CFA modeは,造影検査にて,心臓の形態評価と心機能評価を同時に行うことを目的とした撮影方法である。1心拍すべての心位相にX線を照射するため,最適心位相の形態評価のみならず,壁運動や左室駆出率(EF)などの機能評価が可能なデータも得られる。もちろん至適位相のみ管電流を高くし,そのほかの位相では管電流を少なくする,ECG modulation機能も実装されている。


図4 Aquilion ONEにおける撮影モード
図4 Aquilion ONEにおける撮影モード

本稿では,東芝の最新CTであるAquilion ONEとその特長について紹介した。エリアディテクターを搭載したことにより,ONE Rotation/ONE Beat以内での心臓CT検査が可能となったAquilion ONEは,臨床現場で稼働を開始して1年が経過し,数多くの臨床的有用性が報告され始めていることを付記する。


●参考文献
1) 安野泰史・他 : 320列面検出器CTの使用経験 ; 心臓領域. 映像情報Medical, 40・7, 50〜55, 2008.
2) 吉岡邦浩・他 : 320列マルチスライスCT(ADCT)による心臓のイメージング. 映像情報Medical, 40・7, 56〜60, 2008.


【問い合わせ先】 CT事業部