東芝メディカルシステムズ

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Technical Note

2009年7月号
特集1−ボーダレス時代のPACS & WS選び−PACS最新技術

PACS−フィルムレスの先を見据えて−東芝の考えるPACSのこれから

2008年度の診療報酬改定に伴い,医療機関ではフィルムレス化が急速に進んでいる。また,それだけではなく,レセプトオンライン化など日本版EHR(Electronic Health Record)構想に向けた医療情報電子化の流れが着実に進みつつある。
東芝は,これらに則したソリューションの提供を継続するため,フィルムレス化のみを目的としたPACSは不十分であると判断。“フィルムレスの先を見据えたシステム”をコンセプトに,弊社PACS「RapideyeCore」のさらなる進化を加速させている。本稿では,その概要を紹介させていただく。

●フィルムレスの先を見据えた,さまざまなな医療情報の統合管理

EHR構想がめざす将来を考えると,放射線系画像データ,生理検査部門データ,波形データ,褥瘡チェック等の写真,検体検査結果などの多種多様な医療情報は,患者単位に管理され,どこでも利用できる環境が整備されていく必要がある。これを実現するため,近年は電子カルテとPACS,DACS(Document Archiving and Communication System:PACSから派生した造語)1),2)の連携といった新たなシステム構想が発表されつつある。しかしながら,400床以上の大規模病院ですら電子カルテの普及率約25%という現状を考慮すると,上記のような先進的構想はまだ普及段階に入っているとは言い難い状況である。
そこで東芝は,普及が進むPACSにDACS機能を付与することで,患者単位の医療情報管理を実現し,EHR実現の第一歩を踏み出そうとしている。具体的には,RapideyeCoreが実装している複数部門データ管理機能(静止画,動画,波形データなど)やWindows汎用データ管理機能を駆使し,既存システムの統合や患者単位で整理された医療情報の管理といったソリューションを提供している(図1)。この部門システム統合によって集約される医療情報の多くは,文字情報ではなく画像情報であることが多いため,PACSのデータ管理形態を利用することで非常に効果的に管理可能である。また,弊社がPACSの開発で培った大容量ファイル管理・配信技術をフルに活用できるため,保管領域の有効活用やデータ圧縮展開性能の向上などが期待できる。


図1 RapideyeCoreのコンセプト
図1 RapideyeCoreのコンセプト

●ヘルスケアIT(医療情報システム)とモダリティ(医療機器システム)の融合

さて,医療情報システムの発展とは別に,医療機器に付随する臨床アプリケーション技術は目覚ましい速さで発展を遂げている。これらのアプリケーションは医療機器ごとに付随するものであるが,複合アプリケーションの利用による特定疾患向けの解析や,治療フェイズでのアプリケーション利用などといった展望が模索され始めてきている。
そこで東芝は,上記のような臨床アプリケーションを医療情報システム側で利用する方式での発展という形を模索し,その技術検討,開発企画を進めている。具体的に製品化されたものとしては,マルチスライスCTのコンソール機能を部分移植した“Rapideye MPR”,モダリティのRAW-DATA保管・管理機能などが挙げられる。今後は,これらの拡充を図ることで,医療機器の垣根を越えたアプリケーションの提供,医療情報の有効活用といった新たな価値の創造をめざしていく。
以上のように,東芝は“フィルムレスの先を見据えたシステム”,“総合医療メーカならではのソリューション提供”というコンセプトでシステム強化を図り,新たな価値の創造,医療の質の向上に貢献していきたいと考えている。


●参考文献
1) 武田 裕・他 : 医療の新システム概念である「医療ドキュメント保管通信システム」. 新医療, 36・3, 92〜96, 2009.
2) 宮島孝直 : 「電子カルテ」と「診療録の電子保存」は果たして同一のパラダイムか. 新医療, 36・3, 109〜115, 2009.


【問い合わせ先】 SI事業部システム営業担当