東芝メディカルシステムズ

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Technical Note

2010年4月号
Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

DR/DA(FPD)−腹部X線検査における大視野FPDと新画質コンセプト“PureBrain”の有用性

荒木陽子
X線事業部

X線TVシステムは,消化管造影検査や内視鏡下X線検査など,主に消化管および胆道系の検査に広く用いられてきた。近年の医療環境の変化に伴い,医療設備の効率的な運用が求められる中,これらの検査に加えて,血管造影検査や泌尿器検査など,従来専科装置で行われてきた検査も含め,各診療科の多様な要求に応える多用途なシステムであることが期待されている。
本稿では,Cアーム搭載型X線TVシステム「Ultimax-i」(図1),オーバテーブルチューブ型X線TVシステム「ZEXIRA」に搭載している17インチ角の大視野平面検出器「FPD1717」(図2)と新画質コンセプト“PureBrain”を紹介し,腹部領域検査におけるこれらの有用性について概説する。


図1 Ultimax-i/FPD1717システム
図1 Ultimax-i/FPD1717システム
図2 大視野平面検出器FPD1717
図2 大視野平面検出器FPD1717

■ 大視野平面検出器FPD1717

1.大視野,高精細,高濃度階調
検出器サイズ43cm×43cm,画素ピッチ148μmの高感度,高精細のX線検出器で,連続透視とパルス透視,および最大15fpsまでの撮影が可能である。視野サイズが広くなったことで,泌尿器検査においてはFPDによる腎尿管膀胱単純撮影(KUB)と腎盂造影が可能となり,透視検査後のカセッテ撮影の準備を行う必要がないため,検査効率が向上する。また,従来のFPDシステムの画像は,濃度階調10〜12ビットで出力および保存していたが,FPD1717では,16ビットのままHDD保存とDICOM保存を行う。これにより,画質を劣化させることなく高度な画像処理を行うことを可能にする。ユーザがウインドウ調整を実施する場合も滑らかな階調が維持されるため,画像処理の自由度が高い。腹部単純撮影で,腸閉塞,腎結石,尿管結石などの急性腹症を診断する場合に,腸管ガス,腎臓,肝臓,脾臓,大腰筋,横隔膜など,目的部位に合わせた階調処理を行うことで診断情報が増加する(図3)。

2.高感度,低被ばく
蛍光体にヨウ化セシウム(CsI)を用いた検出器を採用し,低ノイズで高感度のシステムを実現した。広いX線強度でリニアリティを保ち,ダイナミックレンジが広いため,被ばく低減と撮影ミスの減少に貢献する。また,検出器自体の感度が高いため,線質調整フィルタを厚くすることなく患者表面線量を低く抑える。X線条件が低く設定されるため,散乱線による術者被ばくとX線管装置への負荷を低減する。さらに,3段階の透視線量モードを備えており,検査に合った最適な線量を選択できる。ユーザは,検査中に操作卓上のスイッチを切り替えるだけで透視線量を増減することができ,不要な被ばくのない検査の実現に貢献する。


図3 FPD1717による腹部単純撮影像
図3 FPD1717による腹部単純撮影像

■ 新画質コンセプト PureBrain

PureBrainは,高精細・高S/N画像技術,画像安定化処理技術,最適透視画質技術を融合し,最小の操作で,被写体に依存しない安定した画質と,低線量での高画質を提供している(図4)。
以下に,主な画像処理機能を紹介する。これらの処理は検査名ごとに細かく調整して登録でき,ユーザが検査名を選択するだけで,各検査に応じた最適な画像を提供する。例えば,消化管造影検査では透視での残像を抑え,胆嚢造影検査や肝動脈造影検査ではS/Nとコントラストを上げる処理にするなどの設定が可能である(図5)。


図4 新画質コンセプトPureBrain
図4 新画質コンセプトPureBrain
図5 FPD1717による胆道造影像
図5 FPD1717による胆道造影像

1.ノイズ低減フィルタ:SNRF
消化管造影検査における残像の少ない透視画像,インターベンションにおけるカテーテルの視認性,小児検査や婦人科検査などにおける低被ばくなど,これらの要求に応えた新しい画像フィルタ処理が“Super Noise Reduction Filter(SNRF)”である。SNRFは,1枚の画像内にて必要な信号とノイズを計算して有用な情報を抽出し,微細な構造を残したまま粒状性ノイズを低減する。
透視ノイズ低減フィルタとして一般的なリカーシブフィルタは,過去画像の加算を行うため,処理前の画像(図6 a)に対して画像処理後は残像が生じる(図6 b)。一方,SNRFはフレーム加算を必要としないため,残像を生じさせることなく鮮鋭度を保ったまま大幅にノイズを低減する(図6 c)。これにより,視認性の良いクリアな透視画像を提供する。
また,撮影画像に対しても適用することが可能である。SNRFによるノイズ低減効果を被ばく線量の低減に置き換えることで,より低被ばくの検査が実現する。

2.デジタル補償フィルタ機能:A-DCF
高濃度部と低濃度部の明るさを自動補正する“Advanced Digital Compensation Filter(A-DCF)”により,透視画像および撮影画像を,診断に重要な情報を残したまま最も観察しやすい濃度に調整し表示する。従来の画像処理では観察が困難であった,腸管ガスの重なりやスキンラインなどが黒つぶれする場合や,体厚が厚くカテーテルが見にくい場合などに有効である。

3.オートウィンドウ処理
実際の撮影では,被検者の体格や部位,直接X線の影響で,撮影ごとに画像レベルの頻度分布(ヒストグラム)が大きく変化する。そのため,既定のウインドウ値やガンマカーブから選択しただけでは適正な画像が得られない。オートウィンドウは,画像ヒストグラムに応じたウインドウ値とガンマカーブを自動作成して,適正な濃度分布の画像を提供する。

4.透視自動記録機能
透視自動記録機能では,透視画像を常時メモリに記録し,透視終了後に再生や保存を行える。タイミングを逃さず任意範囲の透視画像の確認ができ,X線照射を繰り返すことなく動態観察ができる。嚥下造影などの機能検査に有用であるとともに,内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)や経皮経肝的胆道ドレナージ(PTBD)などの胆道系造影検査において,撮影を行わずに透視画像から保存する画像を選択することが可能である。


図6 回転ファントム透視画像のSNRFによるノイズ低減効果
図6 回転ファントム透視画像のSNRFによるノイズ低減効果

X線TVシステムは,透視と撮影で得られた画像がそのまま診断に用いられることが多いため,リアルタイムで画像処理を行うことが求められる。SNRFに代表される高度な画像処理も,近年のハードウエアとソフトウエアの進歩により実現化した。今後も実装可能になる画像処理技術が増えることで,さらなる画質向上と被ばく低減を推進していきたい。

*PureBrain,Ultimax,ZEXIRAは東芝メディカルシステムズ(株)の商標です。

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【問い合わせ先】 X線事業部 TEL 0287-26-5042