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次世代の画像解析ソフトウェア

【月刊インナービジョンより転載】

■当院における新・大腸解析ソフトの使用経験

上田 年男/二子石直樹/白石 哲史(社会医療法人天神会 新古賀病院放射線診断部)
中村 弘毅(社会医療法人天神会 新古賀病院消化器内科)
小野  研(社会医療法人天神会 新古賀病院放射線科)

●はじめに

当院ではCT Colonography(以下,CTC)検査を開始するにあたり,2010年5月にワークステーション「AZE Virtual Place 風神」を,さらに2011年4月には低被ばく化・高画質化のため80列multi detector CT「Aquilion PRIME」(東芝社製)を導入した。当初は,主に大腸内視鏡が挿入困難な症例に対して,より口側の大腸の評価を目的としてCTCを施行していたが,2011年5月よりCTC検診を開始し,AZE Virtual Placeを使用して約270例の大腸解析を行ってきた。
本稿では,当院におけるCTCの現状と,今回バージョンアップが行われた大腸解析ソフトウェアの,従来型との比較を含めた使用経験を紹介する。

●当院のCTC前処置法

前処置は,高張液法であるブラウン変法を中心に行っている。簡便かつ院内の滞在時間を少なくし,受検者の負担を軽減するためである。スケジュールは,検査前日より検査食を開始し,夕食後にクエン酸マグネシウム34g,センノシド錠24mg,ピコスルファートナトリウム10mLを飲用してもらう。当日は,検査3時間前からの飲水制限を行っている。また,偽陽性を減らすために,バリウムやガストログラフィンにてタギングも行なっている。当日午後の遅い時間から検査を行う場合は,内視鏡検査に準じた前処置法にバリウム(またはガストログラフィン)を加えたPEG法も有用と思われる。
実際に経験した症例を図1に示す。PEG法は残液が大量に残る欠点を有するが,デジタルクレンジング処理を行うことで,残液の影響を少なくすることができる。

図1 電子クレンジング処理画像
図1 電子クレンジング処理画像

●当院の大腸解析

撮影した仰臥位・腹臥位の画像をワークステーションに転送し,経路探索を自動で行い,大腸全体が5分程度で描出される。クレンジングにおいても,処理ソフトウェアのボタンを選択すると任意のCT値において自動で画像処理が行われる。ただし,腸管のガスが途絶えていたり,造影剤の濃度が高い場合などは手動で行う必要が出てくる。当院での画像表示は仮想内視鏡像・直交カット断面像・腸管展開画像,および仮想注腸像を使用している。病変の評価は,タギングされていない場合,およびタギングを行わない前処置の場合は,ポリープ観察モードで病変をROIにて囲み,その部分のMPR像を表示させて病変,もしくは残渣の判断を行っている。
図2は,ポリープ観察機能が有用であった気腫性嚢胞の症例である。MPR像での腸管壁内のairの存在が,診断に有用であった。また,腸管展開画像は全結腸の観察は容易であるが,腸管の屈曲部や膨らみが不十分な部位には歪みが生じ,観察が困難な場合があるため,病変の有無はほぼ仮想内視鏡像で確認している。このため読影に要する時間は40〜50分と長くなり,解析担当者の負担もかなり大きい。
当院でのCTCの成績であるが,治療対象にならない6mm未満の隆起性病変の検出率は72%で,治療対象となる6mm以上の隆起性病変での検出率は93%であった。

図2 ポリープ観察機能が有用であった1例
図2 ポリープ観察機能が有用であった1例

●大腸解析ソフトウェアの変更点

今回,AZE社の協力のもとに大腸解析ソフトウェアのバージョンアップを行った。大きな変更点は,腸管展開画像の表示方式と表示レイアウトである。展開画像は,大腸の拡張の程度に応じて展開像の幅が表示されるようになった。これにより,腸管幅の歪みが少なくなりポリープの観察が容易になった(図3)。結腸ひもや半月ひだの歪みが少ないと,ひだの肥厚がわかりやすく,発見の難しいLSTなどの鑑別にも期待できる。ただし,屈曲部の歪みに関してはもう少し改良が必要と思われる。また,従来は縦方向表示のみであった展開画像が,横方向にも表示できるようになったことで観察しやすくなった。

図3 腸管展開画像 ○ポリープの歪みが少ないのがわかる
図3 腸管展開画像 ○ポリープの歪みが少ないのがわかる

次に,従来の2体位同時表示の比較表示レイアウトは,CT画像・仮想内視鏡像で表示され,観察している部位および全体像がわからないことがあった。今回のレイアウト変更により,腸管展開画像・仮想内視鏡像・仮想注腸像およびCT画像を同時に観察できるようになった(図4)。これにより仮想内視鏡像と展開画像の2体位を同時に観察できるため,読影時間の短縮につながり,30分程度となった。ただ,欲を言えば,比較画像の中でもポリープ観察モードが使えれば病変の評価ができるので,今後の改善点として検討していただきたい。

図4 2体位比較表示 画面
図4 2体位比較表示 画面

CTCは,平坦型病変の描出能が低いことや病理学的評価ができないことを考慮すると,CTCのみで大腸検診を受け続けることは推奨できないが,治療対象となる6mm以上のポリープに関しては検出率が高く,大腸内視鏡施行医が不足している現状においては,大腸検診における重要なツールとして確立されていくものと思われる。
大腸解析ソフトウェアの展開画像の表示方式と表示レイアウトが改善され,解析精度が向上した。また,解析時間が短縮され,解析担当者の負担軽減につながった。今後,CADシステムの開発や,最適な前処置により,さらなる検査精度の向上・解析時間の短縮が期待され,被ばくの面では逐次近似法による画像再構成を使用していくことで低減することが期待される。

【使用CT装置】 Aquilion PRIME(東芝社製)
【使用ワークステーション】 AZE VirtualPlace 風神(AZE社製)

(2012年7月号)

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