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別冊付録

技術解説

ネットワーク型ワークステーションを中心としたソリューション

株式会社 AZEマーケティング部

●進化する3Dワークステーション ─スタンドアローン型からネットワーク型へ─

近年,世界中の医療施設では,施設内のコンピュータ(以下,PC)をつなぐ院内ネットワークの導入や整備が,日々の医療活動を行う上で必須となっている。その利用目的は,画像撮影のオーダリング,画像送信,読影依頼,電子カルテ配信など多岐にわたる。医用ワークステーション(以下,WS)においても,これまでは医用画像ファイルをDICOMプロトコールで送信するためだけにネットワークを利用してきたが,数年前からは画像ファイルだけでなく,解析処理自体をネットワークで共有するようになってきた。つまり,ネットワークの発展によってWSは,スタンドアローン構成から,複数のPCで本体を共有するネットワーク構成へとシフトしてきている。

ネットワーク型WSにおいて,ネットワークの利用方法は二通りある。1つは,従来からWSの基本機能とされているDICOM画像ファイルの受信,送信機能であり,もう1つは画像処理の共有である。前者は既知のとおり,CT,MRIなどで撮影された画像を受信して,院内のPACSサーバあるいはビューア端末に送信する機能である(図1)。後者は,画像ファイルを送受信するのではなく,院内の汎用PCから画像処理サーバにアクセスしてサーバ上で画像処理を行うことで,画像処理サーバの高スペックハードウェア,高機能アプリケーションをネットワークで共有する方法である(図2)。つまり,ネットワーク型WSを1台導入し,複数のPCで共有することで,複数台のWSを導入するのと同等の機能を実現できる。これを“Thin(シン)クライアント構成”と呼ぶこともできる。最近ではネットワークの書籍などでよく見かけられる言葉である。

図1 ネットワーク型WSにおけるDICOM画像送受信
図1 ネットワーク型WSにおけるDICOM画像送受信

図2 ネットワーク型WSにおける画像処理共有
図2 ネットワーク型WSにおける画像処理共有

この技術は,一般企業向けの情報システムにおいては1999年頃から取り入れられており,業務アプリケーションを高いスペックのサーバに集約し,ユーザーの手元にある端末PCからそのアプリケーションを利用する技術である。アプリケーションやデータの集約管理が可能であり,端末PCに高いスペックを要求しないことから,導入および運用コストが削減できる。

●ネットワーク型WSが可能にする医療ソリューション

ここからは,ある架空の中規模病院でWSをスタンドアローン型からネットワーク型に変更する場合について,どのような医療ソリューションを実現できるかシミュレートしてみよう。A病院ではCT,MRIを1台ずつ保持しており,その各モダリティ操作室にWSを1台ずつ,合計2台持っている。しかし,最近になり下記のような要望が生じてきた*1

1.A診療放射線技師: MRI室のWSはMRIとしか接続されていないので,CT画像の解析ができない。
2.B医師: 医局でカルテを参照しながら心臓の解析機能を使いたい。今はCT操作室に行かなければならない。
3.C診療放射線技師: オーダがたくさんあっても,WSが2台しかないので作業効率が悪い。
4.D情報管理担当者: 超多列CTを導入予定だが,PACSサーバにThinスライスデータを貯め込むだけの容量がない。
*1 架空の病院,架空の要望である。

これらの要望に対して,AZEのネットワーク型WS「AZE VirtualPlace Premium」を導入した場合の解決方法を見てみよう。

1.A診療放射線技師への提案

A技師はMRI操作室勤務であるが,CT画像を基に解析を行うこともしばしばある。しかし,手元にあるWSはMRIとしか接続されておらず,CTの撮影画像は転送されていない。これに対してネットワーク型WSでは,図3のとおり,画像処理サーバが各モダリティ(CT,MRI)と接続されていれば,クライアントPCはCT,MRIのどちらの画像も参照,解析することができる。しかも,個々のクライアントPCとモダリティとを接続する必要はない。これは,接続費用の削減にもつながるであろう。

図3 ネットワーク型WSによるモダリティ接続構成
図3 ネットワーク型WSによるモダリティ接続構成

2.B医師への提案

B医師は,読影業務を医局で行うことがある。そこでは主に,PACSサーバに送られた画像を参照しながら読影業務を行っている。しかし,この病院では,PACSサーバには解析結果画像のみが送られる運用であり,B医師が心臓コロナリーの狭窄率を再度解析したい場合は,CT操作室のWSに出向かなければならなかった。しかも,そこには電子カルテ端末がないため,カルテを見ながら解析を行うことは困難であった。これに対してネットワーク型WSでは,B医師は医局にいながらも,手元のクライアントPCからWSを操作し,CT,MRIの元データから解析作業を行うことができる。クライアントPCには特殊なスペックを必要としないため,専用のPCを購入する必要もない。

3.C診療放射線技師への提案

ある日,C技師は急に3件の心臓解析依頼を受けた。いつものようにCT操作室のWSに出向いたが,そこでは他の技師が画像解析作業を行っており,WSを利用することができなかった。これに対して,AZE VirtualPlaceに搭載されているWebアクセス機能を利用してみよう。AZE VirtualPlace Webアクセスは,画像処理サーバへのアクセスツールとしてWebブラウザを利用することが可能である。現在ではほとんどのPCに搭載されインターネットの閲覧に必須とされているWebブラウザを端末とすることにより,あらゆる場所,時間にWSを利用することができる(図4)。ユーザーは,手元のPCからインターネット閲覧と同様の操作でWebブラウザを起動し,VirtualPlaceのURLにアクセスするだけでWSを利用できる。これにより,緊急を要する場合や混雑時,また手術やカテーテルなどの処置現場でも,要望に応じたタイミングでWSを利用することが可能となる。つまりC技師は,CT操作室にあるオーダリング端末などのPCからWSを起動して,解析機能を使うことができるのである。
また今日では,インターネット網を利用した仮想的なLAN(VPN)を利用して,他施設や医師の自宅,あるいは協力病院とネットワークを通じてWSの共有が行われているケースもある。

図4 AZE VirtualPlace Webアクセスにより,Webブラウザを利用してWSへのアクセスが可能
図4 AZE VirtualPlace Webアクセスにより,Webブラウザを利用してWSへのアクセスが可能

4.D情報管理担当者への提案

この病院では,来年に128あるいは320列などの64列を超える超多列CTの導入を考えている。一方で,現行の画像サーバは読影用の画像のみの配信を目的としているため,ここに検査1件につき数万枚のThinスライスデータを保管する運用は困難となる。そこで,4TBのハードディスクを搭載したAZE VirtualPlace Premiumを導入し,一時的なThinスライスサーバとして運用するソリューションを提案したい。AZE VirtualPlace Premiumは4TBの画像蓄積容量を持ち,Enhanced DICOMに対応した大量画像高速受信が可能である。さらに,32GBのメモリを搭載して,大量画像の同時処理もストレスなく行える。まさに大量画像の蓄積,配信を目的としたモデルと言える。

以上,4つの要望を例に挙げて,ネットワーク型WSによるソリューションを考えてみた。その利点をまとめると,図5のように大きく3点に集約される。ネットワーク型WSは,ただ導入するだけでもある程度の機能を発揮できるが,導入の際にそのデータ容量や使用頻度を考慮して,各医療施設にマッチした構成で導入すると,より有用性を発揮する。AZE VirtualPlaceシリーズは,スタンドアローンから大規模ネットワークまでさまざまな構成に対応できるよう,Lexus,風神,雷神,Premiumのプロダクト展開を行っている。

図5 ネットワーク型WSの利点
図5 ネットワーク型WSの利点

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