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別冊付録

KEY TECHNOLOGY

“SHINKA” AZE VirtualPlace ―最新技術動向―

「AZE VirtualPlace」が2010年に提供する“Anniversary Edition”は,以前より開発してきたAZE VirtualPlace雷神/風神シリーズをベースに,求められるさまざまなニーズに対応する要素を取り入れた,AZEが提供する最新ワークステーションである。Anniversary Editionは,現代の医療診断機器の進化に付随する問題点,増大するデータ量への対応およびその取り扱い,ポストプロセッシングおよびその質等に,確実に対応するソリューションと言える。 本稿では,“Anniversary Edition”が提供する新技術について紹介する
 *機種によって仕様が異なるため,新機能が搭載されない機種もあります。

●価値あるワークフローへ

近年,ワークステーションはネットワーク型が主流になり,放射線科だけでなく,院内のさまざまな場所で3D画像解析処理が行われている。また,AZE社のネットワーク型ワークステーションの特長である,ネットワーク上にある院内PCから機能制限やパフォーマンスの低下なく解析可能である点,Macintosh OSでも使用可能な点,クライアントPC側にデータが残らず情報が一元化できる高セキュリティシステムである点などが,大幅にワークフローを改善してきた。さらに今回,Anniversary Editionに搭載された新たな機能により,真の価値あるワークフローへと変貌を遂げる。

●AZE VirtualPlaceに搭載された新機能

1.AZE Auto Analyzer(AAA)/Preset Analyzer 

作業時間を短縮するため,解析処理の自動実行機能“AZE Auto Analyzer(AAA)”を実装した。これにより,ユーザーはAZE Auto Analyzerの条件設定画面で,対象データと対象機能を設定するだけで自動解析できる。
例えば,検査記述に“Coronary”とあるCTデータに対して自動的に冠動脈解析を実行する(対象データ:Series Description=“Coronary”,対象機能:CT冠動脈解析機能)。すると,CTから画像を受信したAZE VirtualPlaceでは,自動的に上記条件に対して確認が行われ,その条件が満たされる場合は,条件に設定されている対象機能が自動的にバックグラウンド処理される。ユーザーは患者リスト画面で処理の完了を確認して,解析結果を参照するだけで,手動操作を行うことなく,対象データの解析を自動的に完了できる(図1)。
また,予約指示後に解析処理する“Preset Analyzer”も搭載しており,QTVR自動作成等,ユーザーの目的に応じて使用できる。

図1 AZE Auto Analyzer(AAA):ネットワーク診断を加速するフルオートワークフロー機能
図1 AZE Auto Analyzer(AAA):ネットワーク診断を加速するフルオートワークフロー機能

2.ワンクリック連携

ユーザーは,PACSなどのシステムを起動するたびに,データの検索や情報の入力作業が必要となる。また,データ管理においても,複数のデータベースの存在は管理上不利益になることが多い。例えば,ある患者の画像をPACSビューワで読影中に,3Dワークステーション解析をする必要がある場合,ユーザーはPACSビューワ上に表示されている患者IDを覚えておいて,別途そのワークステーションの検索画面で該当患者データを再度検索する必要がある。このような人為的な作業は,情報の入力,選択ミスによるデータの取り違いを招く可能性があり,また,作業効率も悪くなってしまう。
“連携システム”の構築により,運用上の基本的な画像データベースはPACSのデータベースに統合され,データ管理の煩雑さを解消することができる。また,データの再検索のために人為的な情報再入力を必要としないため,データの選択誤りも避けることができる。この“ワンクリック連携”は,読影作業の効率向上,情報の一元管理を可能にするソリューションである(図2)。

図2 ワンクリック連携
図2 ワンクリック連携

●Anniversary Editionから搭載される新機能

次に,AZE VirtualPlace“Anniversary Edition”から搭載される新機能およびアプリケーションを紹介する。

1.CT冠動脈解析

機能改善されたAZE VirtualPlaceの“CT冠動脈解析”は,新たな抽出アルゴリズムを取り入れ,心臓抽出,冠動脈抽出の精度を飛躍的に向上させることに成功した。従来のアルゴリズムでは,造影効果の低いデータの場合血管抽出が不十分であったが,新しく開発したアルゴリズムでは,造影効果が低い場合でも血管が正常に抽出されるように精度向上が行われた。精度のチューニング工程では,各医療機関,モダリティメーカーの協力を受け,各モダリティ画像を利用したチューニングを行った結果,あらゆる医療機関のプロトコールを受け入れやすくなっている。また,この自動抽出精度の飛躍的な向上は,前述のAZE Auto AnalyzerおよびPreset Analyzerの能力を十二分に引き出すことを可能にした。これらの機能使用時のワークフローは劇的に向上する(図3)。

図3 冠動脈自動抽出
図3 冠動脈自動抽出

2.新ビューワ

ネットワーク型ワークステーションの普及に伴い,以前よりワークステーション側に読影機能の充実を求める声もあった。今回のAZE VirtualPlaceでは,3D解析機能の向上だけでなく,これらの声を取り入れて読影機能の大幅な向上を図ることに成功した。
新ビューワの特長としては,患者リスト選択から瞬時にビューワ表示が可能で,同一Studyのサムネイルを一覧表示できることや,他患者への瞬時の切り替えが可能となった点である。また,サムネイルから直接Drag&Dropでビューワ表示可能で,スピーディでインタラクティブな読影環境を提供する。これに加え,決まったレイアウトと決まった撮影条件の画像を自動配置設定が可能となっており,ルーチン作業のさらなる効率化を図ることができる(図4)。

図4 新ビューワ画面
図4 新ビューワ画面

3.CTコロナリー画像と心筋シンチグラフィ画像の3Dフュージョン

AZE VirtualPlaceでは,先進的な画像位置合わせアルゴリズム(アトラス法)を用いて,CT画像とRI画像の自動位置合わせを行うことができる。従来の位置合わせアルゴリズムでは,CTの高い解像度の画像とRI画像との間の共通点を見つけることが難しく,その結果,好ましい位置合わせ結果を得ることができなかった。これを解決するために,新しいアルゴリズム(アトラス法)では,CT画像とRI画像の双方の間に平均的な情報(アトラスデータ)を用い,CT,RIのデータをそれぞれアトラスデータに近づけることにより,位置合わせの精度を格段に向上することに成功した。このアルゴリズムを使用して位置合わせを行った画像を,CT冠動脈解析のコロナリー像と重ね合わせることで,虚血の広がりとその責任血管の位置関係を,容易かつ正確に認識することができる(図5)。

図5 CTコロナリーとシンチグラフィの3Dフュージョン画面
図5 CTコロナリーとシンチグラフィの3Dフュージョン画面

4.肺解析

心臓領域と同様に,呼吸器領域におけるCT検査もさまざまな医療機関で頻繁に行われており,その画像の診断補助ツールとしてワークステーションも多く用いられている。“肺解析”の主な機能は,ユーザーが任意に結節と思われる場所をクリックするだけで,結節部分を抽出することである。また,新たに開発された抽出アルゴリズムで,複雑な形をした結節でも抽出可能であり,容易にそのボリュームを計測できる。設定されたROIにおけるCT値のヒストグラムとそのパーセンタイル値をカラー表示することができ,肺の結節組織の性質を診断することができる。
肺結節の画像診断において,経時的観察は必要不可欠とされており,当社の肺解析の過去検査比較画面は臨床現場での要望を取り入れた画面レイアウト,操作性を持ち,効率良い検査画像の経過観察をサポートする。また,ダブリングタイムを計る機能を有している(図6)。

図6 肺解析画面
図6 肺解析画面

5.頭部ボリュームパフュージョン

CTの多列化によって一度に撮像される領域は大幅に広がり,前述のとおり頭部,呼吸器,循環器などのさまざまな領域でその性能は発揮され,進歩を続けている。特に,頭部領域では脳全体を一度に撮像することが可能となり,脳全体の四次元画像が容易に得られるようになった。これにより,従来1枚あるいは特定の領域だけで行われていた頭部パフュージョン解析を全脳で行うことが可能になり,AZE VirtualPlaceの“頭部パフュージョン”も,従来のシングルスライスの解析に加えて,脳全体の領域の解析が行えるように機能向上が図られた。
ユーザーは対象画像を読み込んで,解析実行ボタンをクリックするだけで,脳全体のパフュージョン解析を行うことができる。古くから急性期の脳梗塞などの評価に役立てられている頭部パフュージョンであるが,今後はより広い領域を解析することにより,的確な病変観察に役立つものと考えている(図7)。

図7 頭部ボリュームパフュージョン画面
図7 頭部ボリュームパフュージョン画面

6.肝臓解析

“肝臓解析”はドナーの肝実質容積測定など,生体肝移植術前シミュレーションや術後の経過診断を支援するソフトウェアである(図8)。肝実質を自動的に抽出することが可能で,下大静脈・門脈・肝静脈などを除いた肝実質ボリュームを算出することが可能である。当社特許技術を搭載しており,各血管の肝実質における支配領域をセミオートにて抽出可能である。肝右葉・左葉区別や,区域別(S1〜S8)のボリュームも計測可能である。
厚生労働省の先進医療の各技術の概要についての60番に,肝切除手術における画像支援ナビゲーションの項目(2010年4月1日現在)があり,肝切除シミュレーションを行うことで安全性の向上に寄与するとしており,その重要度がうかがえる。

図8 肝臓解析
図8 肝臓解析

7.MR遅延造影解析

現在,米国をはじめ,心臓領域におけるMRI検査の有用性が多くの医療機関で注目されている。当社もVirtualPlaceの開発当初から,このMRI心臓検査に着目し,これまでにMRIでの冠動脈撮像画像(Whole Heart MRA)の3D表示やMRI心筋パフュージョンなど,多くのMRI心臓検査の解析機能を提供し,それらは,2009年の北米放射線学会(RSNA2009)の展示会場でも,多くの医療従事者の方々から高い評価を得ている。なかでも,“MR遅延造影解析”は,新たな機能革新を遂げた。
ユーザーは,従来のように心筋のROIを手動で囲むことなく,自動ボタンをクリックするだけで,自動的に心筋ROIを設定することができる。また,梗塞部位を診断するために最も重要となる閾値設定は,画像の梗塞部位を囲むだけで,その信号値分布から自動的に閾値が設定される機能が実装された。もちろん,各施設で定められる固定値での閾値設定にも柔軟に対応できる。さらに,結果表示も梗塞領域をコア部分,グレー部分で分割表示することができ,梗塞病変の緊急性などの性質診断をサポートする(図9)。

図9 MR遅延造影解析画面
図9 MR遅延造影解析画面

8.T2 Mapping

膝関節などの関節軟骨の変性に有用なソフトウェアとして,“T2 Mapping”を開発した。軟骨のT2値は,コラーゲン配列の変化や水分含有量などによって変化する。このT2値の変化をマルチエコーシーケンスによってとらえ,画素値の変化からT2値を算出することが可能である。変形性関節症の診断に,非常に有用なソフトウェアである(図10)。

図10 T2 Mapping
図10 T2 Mapping

9. マルチボリューム内視鏡

“マルチボリューム内視鏡”は,ボリュームデータを視野角を持った画像として観察できる内視鏡ソフトウェアに,異なるシリーズのボリュームデータをまとめて表示できるマルチボリューム機能が付加されたソフトウェアである。このソフトウェアにより,SPECTによる機能画像とCTによる形態画像
を仮想内視鏡画像として同時に表示,観察することで,腹腔鏡,縦隔鏡,胸腔鏡のシミュレーションのサポートなどに有用である。また,大腸仮想内視鏡像と別データで取得したポリープやアップルコアなどの情報も同時に表示可能である(図11)。

図11 マルチボリューム内視鏡
図11 マルチボリューム内視鏡

●“あらゆる瞬間に最高の画質を”
超高速レンダリングエンジン “Formulaエンジン”

新開発の超高速レンダリングエンジン“Formulaエンジン”は,従来のレンダリング速度から約20倍の速度アップを実現した(当社比)。Formulaエンジンを搭載すれば,これまでのプログレッシブレンダリングによる疑似的なリアルタイムレンダリングではなく,本当の意味でのリアルタイムレンダリングを提供することが可能となる。
プログレッシブレンダリングとは,画像全体をまず粗く(低い解像度で)表示した後,徐々に精細に表示していく技術である。これまで,膨大なボリュームデータに対応するため,このような技術を用いることで,リアルタイム3Dを提供することを実現してきた(図12)。しかし,Formulaエンジンによって,数千枚という膨大な量のデータでも,常に最高画質でレンダリングを行うことが可能である(図13)。
最高画質で観察できることの最大の利点は,ストレスがないということである。実際の画像診断ワークフローにおいては何かの処理をする際に待たされるということが最大のストレスとなる。このストレスにより,ビューワやワークステーションを敬遠する人も少なくない。当社が提供するFormulaエンジンは,ストレスのないスムーズな読影,診断を可能とする,ユーザーフレンドリーな最高のソリューションである。また,最新CTで撮影された心臓4Dデータなどの4Dリアルタイム処理も,Formulaエンジンにより可能となる。いままで十分に生かすことができなかった4Dデータさえも,最大限に活用することが可能となり,これからの4Dボリュームデータ時代における高解像度なボリュームレンダリング上での読影,診断において,必要不可欠な技術・ツールとなるだろう。

図12 従来のレンダリング (プログレッシブ) 回転やオパシティを変えたりすると,このレンダリング(低解像度)になる。
図12 従来のレンダリング (プログレッシブ)
回転やオパシティを変えたりすると,このレンダリング(低解像度)になる。
  図13 Formulaによる レンダリング 回転やオパシティの変更など,その他の操作を行っても常に最高画質で観察できる。
図13 Formulaによるレンダリング
回転やオパシティの変更など,その他の操作を行っても常に最高画質で観察できる。

●おわりに

以上のように,日々進化を続けている画像診断システムの中で,AZE VirtualPlaceはユーザーの要望に応えながら,より使いやすく,高性能な解析アプリケーションを多数提供し続けている。今後も,これらの先進的なアプリケーション群により,世界中の医療施設の診断,治療に貢献していきたい。

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