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別冊付録

SPECIAL LECTURE − 特別講演1

心臓CTにおけるネットワーク型ワークステーションの新たなる展開
─進化するAZE Raijinを用いた解析・読影の実際

片平 和博
国家公務員共済組合連合会 熊本中央病院放射線科部長

片平 和博

多列CTや高磁場MRIの普及でボリュームデータ時代を迎え,ワークステーション(WS)による三次元画像処理のニーズが急速に高まっている。特に近年,臨床的有用性が明らかになってきた心臓CTにおいては,三次元画像は必要不可欠であり,複数の端末PCから同時に画像の解析や観察が可能なネットワーク型WSのメリットはきわめて大きい。そこで本講演では,特に心臓CTに焦点を当て,ネットワーク型WS「AZE VirtualPlace雷神」の有用性について述べる。

●ネットワーク型WSの有用性

1.ネットワーク型WSとは?

ネットワーク型WSとは,WS本体に加えて,院内ネットワークを用いて電子カルテやPACSなどの既存端末をクライアントにすることで,本体に搭載された機能を遠隔操作できるシステムである。本体を1台導入すれば,従来はWS上でしか行えなかった画像解析や2D/3D/4Dの画像参照がクライアントPCでも可能となり,読影医や臨床医は院内のさまざまな場所から閲覧することができる。また,遠隔操作による画像処理そのものは本体で行うため,クライアントPCのスペックに依存することなく高画質が得られるほか,本体を1台導入しただけで4〜5台のWSを導入したのと同じ効果が得られ,コスト面からも有用性が高い。

2.sliding thin slab MIP法のすすめ

簡便なボリューム読影の手法として有用な“sliding thin slab MIP法”は,厚みを持たせたMIP画像を用い,簡便なマウス操作のみでターゲット部位を任意断面で観察可能とする手法である。心臓CTにおいては,冠動脈全体の評価や狭窄部位の観察も容易に可能で,CPR像やVR像の作成を待つことなく2〜3分で診断できるため,急患にも対応できる。また,死角が少ない,細かい冠動脈分枝までくまなく観察可能,pre-PCI mappingとして活用可能,といった特長を有している。肺動脈血栓塞栓症や肺がんの胸膜播種,腸閉塞などの診断にも有用で,特に腸閉塞の詳細評価においては,任意断面を選択できることにより閉塞部位の状態が明瞭化し,きわめて有用性が高い。
さらに当院では,MRIにおいてもsliding thin slab MIP法を活用し,脊椎椎間板外側ヘルニアや頸椎の狭窄,膝の前十字靭帯損傷,大腸がん術前診断,Gd-EOB-DTPA造影MRIによる仮想超音波像を用いた肝細胞がんの診断,T2強調像による膀胱がんの診断などに役立てている。

●心臓CTの有用性を最大限に生かすためのネットワーク型WSの活用法

1.胸痛急患におけるearly triageとしての有用性

虚血性胸痛疑い患者で,12誘導心電図やトロポニンが正常もしくは診断不能なケースでは,心筋梗塞の予後予測の指標となるTIMI risk scoreに基づいて院内で8時間以上の経過観察が必要となる。しかし,繰り返しの検査には莫大なコストがかかり,また,TIMI risk scoreだけではリスク評価に不十分であることが問題であった。
そこで登場したのがCTによるearly triageである。CTAの急性冠症候群(ACS)のリスクに関する感度および陰性的中率(NPV)はいずれも約95%ときわめて高く(Hoffmann, U., et al. : JACC, 53, 1642-1650, 2009.),低リスクな胸痛患者群のearly triageに非常に有用との報告が近年,増加しており,救急における心臓CTの有用性を示唆している。当院での症例を図1に示す。

図1 症例:急性心筋梗塞
図1 症例:急性心筋梗塞

2.心臓CT普及に伴う課題と解決策

当院ではここ数年,CAGの減少と心臓CTの増加が著しいが,心臓CTの検査数は月100件を超えた頃から伸び悩んでおり,こうした検査数制限は多くの施設で問題となっている。最大の原因として,画像再構成に時間がかかることが挙げられるが,ほかにも,画像解析を行うためのマンパワー不足や,解析処理に時間がかかり救急症例への対応や即時読影が困難,任意断面の観察ができない従来の元画像・CPR像を主体とした画像処理の限界などがあり,これらの解決に,ネットワーク型WSの自動解析機能が役立つと考えている。
そこで,冠動脈CT即時読影における自動解析ソフト“AZE Auto Analyser”の有用性を検討した。読影法1はsliding thin slab MIP法のみ,読影法2 はsliding thin slab MIP法に加えて自動解析結果のボリューム読影を行っているが,その結果,acurracyが読影法1では88.5%,読影法2では95.2%と有意に向上した。特に,冠動脈硬化症例やステント挿入症例において,自動解析によって冠動脈の中心線がしっかりとトレースできたことで,診断能の向上につながったと考えられる。また,AZE Auto Analyserでは,狭窄長の計測や狭窄率の測定なども自動で行うことができる(図2)。

図2 AZE Auto Analyzerによる自動解析
図2 AZE Auto Analyzerによる自動解析

3.CAGを上回る情報が得られるvessel wall imaging

positive vessel remodeling(PR),low attenuation plaque(LAP),spotty calcificationは,急性冠症候群(ACS)のリスクファクターとされていることから,画像解析を行う際には,この3つを考慮してCPR像を作成することが重要である。ACSの原因となる不安定プラークは有意狭窄でないことが多く,ルーチンCAGでは評価が困難なことから,より低侵襲な冠動脈CTのvessel wall imagingで評価し,スタチン治療をはじめとした早期治療を行う必要がある。
スタチンを用いた経過観察の際のボリューム比較において,AZE VirtualPlaceでは,sliding thin slab MIP法で一方の画像を動かすと,もう一方の画像も追随するボリューム比較モードという機能があるため,プラークの比較も簡単に行うことができる。

4.冠動脈CTを用いたPCIマッピングの進歩

慢性完全閉塞(CTO)症例に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行時には,末梢の血流が見えないため,より安全に施行するために,CTやMRIによる術前マッピングの有用性が期待されている。PCIを行う際には,以前からCAG like viewが推奨されていたが,細血管の描出が困難で,分枝描出に限界があることが課題となっていた(図3)。そこで,CTOに対するPCI施行時には,3D画像による全体像の把握と,2D画像による閉塞部位の把握を両立できればより有用だが,AZE VirtualPlaceには,2D画像と3D画像を連動させて観察できるモードが搭載されており,より安全にPCIが施行可能となった(図4)。

図3 CAG like viewによるPCIマッピング
図3 CAG like viewによるPCIマッピング

図4 2D画像と3D画像を連動させたPCI術前マッピング
図4 2D画像と3D画像を連動させたPCI術前マッピング

●心臓CTの限界対策:頻脈

頻脈患者の血管の評価方法として,“4D-sliding thin slab MIP法”を考案した。頻脈等にて時間分解能の低い画像においては,画像ブレと有意狭窄の鑑別に迷う部分がより明瞭に描出されている画像ブレのない位相に乗り移りながら読影することで,診断精度の向上を図ることが可能となる。

●まとめ

64列CTの普及とともに,心臓CTがルーチン検査となりつつあるが,適応の拡大に伴い,画像解析をはじめとするマンパワー不足が大きな課題となっている。その解決策として,画像解析の自動化は非常に有効であり,ボリューム読影を容易に実現するネットワーク型WSの導入は,心臓CT検査にとって非常に効果的であると考えられた。

1990年熊本大学医学部卒業,同大学放射線科入局。
社会保険下関厚生病院放射線科,社会保険人吉総合病院放射線科,熊本整形外科病院放射線科,国立熊本病院放射線科,熊本大学附属病院放射線科助手,熊本中央病院放射線科医長などを経て,2010年4月〜現職。

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