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クラウドとモバイル時代に解き放たれる3Dの無限の可能性

【月刊インナービジョンより転載】

■心臓特化型画像診断センター「心臓画像クリニック(CVIC)飯田橋」の試み
  —最新3Dワークステーションを利用した心臓の画像診断と臨床画像

心臓画像クリニック(CVIC)飯田橋 小山 望/寺島 正浩

●はじめに

心臓の画像診断は,従来,冠動脈カテーテル検査,心臓核医学検査,心臓超音波検査といった検査方法に頼られてきたが,近年,CTやMRIといった高度画像診断機器を用いることで被ばくや負担を最小限に抑え,非侵襲的検査で心臓の動き(心機能)や3次元(3D)で心臓ならびに冠動脈の形態を詳細に把握できるようになった。しかしながら,このような高度心臓画像診断を頭部検査,腹部検査と同じように,いつでも提供できる医療機関はまだまだ限られているのが現状である。そこでわれわれは,“1人でも多くの患者様と,その治療に専念している臨床医に,最新,最良の心臓画像診断を届けたい”と考え,この理念を実現するために2009年11月,東京の飯田橋に心臓特化型画像診断センター「心臓画像クリニック(Cardiovascular Imaging Clinic:CVIC)飯田橋」を開設した。本稿では,われわれの実際の活動について紹介をしたい。

●オーダーメイドの高度心臓画像診断の実現

当院の一つの特徴として,できるだけ依頼医または患者様のニーズに合わせた画像診断を提供することを心がけている(図1)。例えば,冠動脈CT検査は当日迅速検査を制限なく受け入れられる態勢を整え,依頼医からの要望があれば,患者様に検査結果をその場で説明し,検査所見を持って依頼医のもとへ戻ることが可能となっている。また,外来受診した患者様に冠動脈CT検査を実施した際,症状に一致した高度狭窄病変が見つかり,そのまま当院から病院へ緊急入院となる症例をすでに20例近く経験している。開院後,3か月のCT検査の統計を見てみるとその有病率は50%で, 2人に1人は何かしらの冠動脈疾患を抱えて来院されていることになる(図2)。通常の医療機関と比較しても,非常に高い有病率と思われ,循環器の領域での非侵襲的画像診断としては,まだまだハードルが高いのでないかと考えられる。
当院では,このような心臓画像診断のニーズ,スピードに迅速に対応をしていくため,膨大な画像データを高速処理可能な3Dワークステーション(WS)を4台導入している。一方,そのような高機能・高性能3DWSを自在に操作可能な,高度解析技術を要する画像解析スペシャリストの育成を併行して実施している。

図1  不整脈に対するアブレーション治療計画前CT検査 ZIOSTATIONを利用したPV選択抽出の例。横隔神経および食道の位置関係も明瞭に描出できている。このような画像解析は画像解析者と臨床医とのコミュニケーションが非常に重要となる。
図1 不整脈に対するアブレーション治療計画前CT検査
ZIOSTATIONを利用したPV選択抽出の例。横隔神経および食道の位置関係も明瞭に描出できている。このような画像解析は画像解析者と臨床医とのコミュニケーションが非常に重要となる。

図2 CVIC開設後2か月半の患者統計 CT検査で来院された患者様の2か月半の統計を見ると,1枝,2枝,3枝病変で全体の44%を占めており,バイパス術後のフォローアップまで含めると,2人に1人の割合で,冠動脈病変を抱えて来院されたことになる。非侵襲的心臓画像診断のいっそうの普及の必要性が認識される。
図2 CVIC開設後2か月半の患者統計
CT検査で来院された患者様の2か月半の統計を見ると,1枝,2枝,3枝病変で全体の44%を占めており,バイパス術後のフォローアップまで含めると,2人に1人の割合で,冠動脈病変を抱えて来院されたことになる。非侵襲的心臓画像診断のいっそうの普及の必要性が認識される。

●3DWSを活用したCT・MRIの心臓画像診断

当院では3DWSを中心とした画像診断システムを構築している。前述のように,CT・MRIの操作室,診察室には4台の3DWS(ZIOSTATION Ver1.3.03:ザイオソフト社製)が設置され,検査終了後速やかに画像処理,画像解析ができる体制づくりをしている。また,2部屋ある診察室には3DWS(同機種)がそれぞれ設置され,当日の検査結果について,患者様が希望されればWSを用いてその場で説明ができるように配慮している。これは,非常に新しいスタイルでの診療であり,検査終了直後,診察室で自身の心臓3D画像を見せられるインパクトは非常に大きく,検査を受けた満足度も非常に高くなるようである。

●最新3DWSを利用した心臓の画像診断と臨床画像

■症例1:術前冠動脈評価, 心電図異常,高血圧(図3
43歳,男性。整形外科による椎弓切除術の前の冠動脈評価のため,当院に紹介された患者様である。当初MRIによる検査依頼であったが,体重が120kg超であったためMRI検査を断念し,冠動脈CT検査を施行した。冠動脈CT上,LAD#7に有意狭窄を認め,RCA#2にCTOと思われる病変を認めた。LCX#11 distalにも慢性完全閉塞性病変(CTO)と思われる病変を認めたため,すぐ手術施行可能か否かの判断が必要となった(図3)。しかし,この患者様は1日も早い手術を熱望され,結果としてすぐに椎弓切除術を実施することになったが,手術終了後にRCAのCTOにトライする予定を組むなど,今回の冠動脈CT検査が手術の術式の変更,ならびに,冠動脈疾患の早期診断,早期治療に非常に役立つ形となった。このように,術前に冠動脈評価を迅速に実施することにより,手術日の決定を速やかに行い,心疾患の治療が必要であれば治療の順位をどうするのかが決定できるようになるなど,冠動脈CT検査の多様性と可能性を改めて認識させられた。

図3  症例1:外科手術前の 冠動脈スクリーニングの必要性 この症例では,術前冠動脈CT検査で,LAD#7に有意狭窄を認め,RCA#2にCTOを認めた。心疾患のリスクファクターが高く,心電図異常が指摘された患者様には冠動脈スクリーニングが有効である。術者は心疾患の合併に恐れることなく,外科手術に集中できる環境を自ら作ることが可能となる。
図3 症例1:外科手術前の 冠動脈スクリーニングの必要性
この症例では,術前冠動脈CT検査で,LAD#7に有意狭窄を認め,RCA#2にCTOを認めた。心疾患のリスクファクターが高く,心電図異常が指摘された患者様には冠動脈スクリーニングが有効である。術者は心疾患の合併に恐れることなく,外科手術に集中できる環境を自ら作ることが可能となる。

■症例2:腎不全,心室期外収縮,左室壁運動異常(図4,5
63歳,男性。人工透析を行っている患者様で,冠動脈の高度石灰化症例である。石灰化スコアは11294で,3枝すべてに高度石灰化(3枝ともに>2000)を認め,CT画像上では狭窄の評価は困難であった。そこで,患者様の同意を得て,直ちに冠動脈MRA検査を施行した。冠動脈MRA検査の結果,LADおよびLCXには明らかな狭窄病変を認めず,RCAの#2および#3の高度石灰化のために評価困難であった部位は,冠動脈MRAの所見と合わせて評価することで,有意狭窄であることが判断できた(図4)。われわれは,この症例を経験して以後,腎不全症例に対して患者様の希望があればCTによる造影検査は施行せず,単純CTによる石灰化スコアの評価を実施後に非造影冠動脈MRA検査を施行するようにしている(図5)。MRIはその原理的な特徴により,石灰化からのMR信号を得ることができない。冠動脈MRA検査は,このような高度石灰化症例でも,狭窄内腔の描出が妨げられないため絶好の検査方法となる1)

図4  症例2:冠動脈高度石灰化の冠動脈CTAと冠動脈MRA CTでは高度石灰化のために詳細評価が困難であるが,MRAと組み合わせることで責任病変を同定することが可能となる。このようなアプローチができれば,石灰化病変に悩む透析患者の冠動脈スクリーニングがもっと身近なものとなることが期待される。
図4 症例2:冠動脈高度石灰化の冠動脈CTAと冠動脈MRA
CTでは高度石灰化のために詳細評価が困難であるが,MRAと組み合わせることで責任病変を同定することが可能となる。このようなアプローチができれば,石灰化病変に悩む透析患者の冠動脈スクリーニングがもっと身近なものとなることが期待される。

図5  症例2:ZIOSTATIONによる 左室壁運動解析 冠動脈スクリーニング症例にも,必ずシネMR画像を用いて左室壁運動解析を施行している。EF(左室駆出率)のほか,EDF(左室拡張末期容積),ESV(左室収縮末期容積),SV(1回拍出量),CO(心拍出量),CI(心係数)を表示し,正常値との差を明確にしている。また,心位相と左心室内腔容積の関係を示す時間容積曲線とPFR(Peak Filing Rate),PER(Peak Ejection Rate)を算出して,左心室の拡張能や収縮能も評価している。
図5 症例2:ZIOSTATIONによる 左室壁運動解析
冠動脈スクリーニング症例にも,必ずシネMR画像を用いて左室壁運動解析を施行している。EF(左室駆出率)のほか,EDF(左室拡張末期容積),ESV(左室収縮末期容積),SV(1回拍出量),CO(心拍出量),CI(心係数)を表示し,正常値との差を明確にしている。また,心位相と左心室内腔容積の関係を示す時間容積曲線とPFR(Peak Filing Rate),PER(Peak Ejection Rate)を算出して,左心室の拡張能や収縮能も評価している。

●まとめ

「最初の発作が最後の発作」と言われる心疾患には,診断,治療にスピードが求められる。そのスピードに対応するためにはCT,MRIから得られた膨大な画像データを簡便で,かつ高速画像処理が可能な3DWSの開発が必須である。また,再構成される画像の画質は解析者の技量に非常に左右されやすい。そのため,医療機関側では画像解析スペシャリストの育成,解析手技の標準化などを,ソフトウェアの開発に並行して実施する必要がある。本稿では,国内初の高度心臓画像診断に特化した当院の活動について簡単に紹介させていただいた。今後も,幅広く日本の循環器医,放射線科医,臨床検査技師,診療放射線技師など多方面のスペシャリストの方々からのご支援をいただき,また,スタンフォード大学をはじめとする海外医療機関,研究機関とのコラボレーション,各種医療関連企業のご協力を得ながら,"最新で最良の心臓画像診断"を追究していくためにスタッフ一同,全力を尽くしたい。

●参考文献
1) Liu, X., Zhao, X., Huang, J., et al. : Comparison of 3D free-breathing coronary MR angiography and 64-MDCT angiography for detection of coronary stenosis in patients with high calcium scores. Am. J. Roentgenol., 189, 1326〜1332, 2007.

(2010年6月号)

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