インナービジョン

平成18年度 診療報酬改定に対するアンケート調査報告 コメント
インナービジョン6月号(21巻6号)より抜粋

【Q1】今回の改定全般についてどう思いますか?
  300床未満 300床以上
(1)評価する 2名 7名
(2)評価しない 3名 11名

(3)どちらとも言えない

4名 10名
【コメント】
300床未満
(1)評価する
・永年続いた部位別の点数を装置の機能別にしたこと(120床,診療放射線技師,磁気共鳴専門技術者)
・実力のあるところが評価される内容になっているから(100床,医師,放射線腫瘍学)
(2)評価しない
・基本的に医療費削減政策には賛成できない。特に療養型への影響が大きいことは,高齢化社会に向けての大きな不安材料となる。(38床,診療放射線技師)
・まずは技術料を下げたこと。また,診断・治療技術が進んでくれば,かかる費用が増えることは当然であり,その恩恵をみな受けていることが理解されていない。さらに,現状の医院経営は儲けているのは一部であり,大半はぎりぎりである現状を把握していない。(無床,医師,消化器外科)
・幾つかのポイントがあると思います。PET/CTやマンモの評価は当然の流れであって特記事項にはあたらないと思っております。重要な項目として,1)質の評価としての機種別点数制の導入,2)難易度評価としての部位別点数の廃止,3)CT,MRの二回目撮影の減算,4)安全に関する評価無しの4点に関して特記すべき大改訂かと考えます。
 1)についてはCT,MRともに装置のランクを分けた明確なエビデンスが学会レベルでも示されていない事です。つまり,1.5Tであれば7〜8年前のDWIやMRA,MRCP撮影のできないまたは診断能の低い装置であっても評価され,近年の0.4Tや1.0Tの高画質,高機能に関してまたは全く無視されている事です。施設によっては古い1.5Tを最新型のフルスペック1.0Tに更新したところもあるわけですから大変残念であると思われます。我々の有志の検討会に於いて実情を検討した結果,CT・MR共に保険上低ランクとされると,優秀な検査成績を持つ施設であってもほとんどが大幅な減収になります。求められていた評価とは機種別評価ではなく,その装置や施設で何の検査ができるのかという機能別評価が行われるべきであったと考えます。装置とは性能として機能が備わっていても検査を行う放射線技師の検査の力量が備わっていなければ装置の機能は使われる事がないわけですので,検査をおこなった機能に応じて検査の点数評価が異なる方が正当性を感じます。検査の質の担保が単なる検出器の列や静磁場強度で決定しているのだと厚生労働省が判断しているというのは残念です。
 2)の次に部位別点数制度の廃止ですが,この点について心電図やAB-Iは誘導数が違えば点数は異なり,DEXAに関しても検査方法で評価される点数は異なっております。超音波や一般撮影も検査部位で点数が異なるのは難易度評価の点でも当然の仕組みであると考えますがCT・MRにおいてのみ部位別評価が廃止されるのは他の検査項目,画像診断項目との整合性から考えても理解できません。もし部位別点数制度を廃止するのであれば部位別点数制度を始めた自らの制度の落ち度を明らかにしてから公に意見を問うべき重要な方針転換であろうと考えますが,中医協の議事録に於いてそのような議論をおこなった発言や経緯は見あたりません。今回の改訂により有志の検討会では特に胸・腹部検査を多く行っている施設は年間で一ケ月分の保険料収入が減少する施設もでると試算されました。逆に頭部の検査を多くこなしておる施設は驚くべき増収効果を示しており点数改訂の目的が理解できません。頭部検査を奨励しており躯幹検査の減少を意図しているのかと考えざるを得ません。このような難易度を無視した項目のみでの検査点数の一元化が今後他の方面に於いて拡大実施されない事を願うばかりである。
 3)に挙げた二回目検査の減算に関しては二回目検査を必要としている患者の状態を考えたとき施設の特性を合わせると理解しかねる現象が発生します。二回目検査を多くおこなう施設は頭部疾患・外傷や腹部疾患・肺炎の急性増悪などが主な検査理由になります。これらの検査は減らすべきであるとの意図からの点数誘導であろうかと考えられますがすでに国内の大規模医療機関の多くがDPC施行に参加している現状ではこれらの施設では「まるめ」である入院患者には基本的に影響を及ぼさずDPC不参加施設と外来患者に於いてこの改訂は影響を及ぼす事になります。当然外来患者さんであれば同一月内に複数のCT検査を施行する事は少ないことが通常です(必要でしたら入院しているでしょう)。DPC不参加施設で重篤な入院患者さんを抱えた地域の基幹施設において今回の改訂は必要として施行しても評価されないという事になっています。
 最後に4)に挙げた安全に関する評価がなされていない事は極めて残念です。たとえて言うなら脳卒中ハイケアユニットの新設や心疾患リハビリなどでPT,OTの経験を有した人材の配置は明記されているのに対して医療機関の具備すべき条件として「CTやMRを有している事」というのはあまりにも放射線技師の技術と必要性の認識が足りていないと言わざるを得ない者と考えられます。以上,大きく4つのポイントから今回の改訂を評価しない理由について述べました。
(実名希望:江端清和氏,30床,診療放射線技師)
(3)どちらとも言えない
・全般的にはマイナス改定であり,コストの切り詰めと従事者に更なる負担をもたらし,現場にはさまざまな混乱を生ずると思われる。PET担当医の立場からは,適応拡大とPET/CTの認可の点を評価したい。 (無床,放射線科医)
・政府の医療費抑制と医療機関の検査漬けのせめぎ合いか?(175床,診療放射線技師)

300床以上
(1)評価する
・画像診断管理加算を画像診断管理料に変更し専門医の行っている診断業務を正当に評価しようとする試みがなされつつあるので。(300床,放射線科医)
・以前の診療報酬では,高性能な装置に対して報酬での意味がなく,低性能装置と同等に扱われていたから。 (500床,診療放射線技師)
・管理加算と,機種による違い (1300床,放射線科医)
・不十分ではあるが画像診断の質について考慮してもらえたこと(1200床,放射線科医)
・点数のつけ方をわかりやすくしていること,必要な保険点数を作ったこと (1000床,放射線科医)
・施設間の格差を認める方向性が見える。 (1200床,診療放射線技師)
(2)評価しない
・加点については正当化できるが,減点についての理由が不明(800床,放射線科医)
・MRI検査に関して,保険点数にかなり無理がある。(320床,診療放射線技師)
・実際の経済的な動きと保険点数が益々乖離した。(343床,診療放射線技師)
・ますます隆盛の画像診断が下がっているから。小泉内閣をなくさなければ…。 (381床,診療放射線技師)
・質の低下 (824床,診療放射線技師)
・1.医療機関にとって大幅なマイナス改定となり,収入増の為の施策が難しいこと
 2.患者様にとっては,10月に自己負担額や高額療養費の見直しが控えていること
(804床,放射線科医)
・現行の医療制度改革の一つに病院機能分担がある。これは一定程度の人口密集地域では達成できるが,過疎の地方ではほぼ不可能に近い制度である。今回も含めてここ数年の改定は機能分担がされていることを前提(誘導)に進められており,地方では歪みが大きくなるばかりである。(地方においては人口ではなく面積で医療諸政策を考える必要がある) (616床,診療放射線技師)
・急性期医療切捨て,体裁だけ整えて,正当な評価がされていない。(500床,放射線科医)
・療養型病床群の取り壊しをはじめとして医療費圧縮のみに主眼をおいたもので国民の健康戦略にまったく配慮されていない。病院医療の担い手がどんどんいなくなり,このままでいけば4〜5年後には病院医療は都道府県で1〜2箇所のみに集中し,英国のように保険で医療と受けようとするとかなり待たされ,また,技術の高い医療者はプライヴェートに移行し,生命医学を支える担い手がいなくなる。(556床,放射線科医)
・装置の性能を十分に発揮できなくなるため(616床,診療放射線技師)
・数字合わせで,内容がない。 (1000床以上,診療放射線技師)
(3)どちらとも言えない
・画像診断について新しい加算ができたこと,少しは臨床的評価されたと考えられる。ただ,新しい加算ではまだまだ不十分であり,このままでは減価償却できるほど十分な収益は得られていない。(956床,医師,核医学診療科)
・難易度評価が中途半端。 (620床,診療放射線技師)
・一応,機種の性能の評価が取り入れられたから。ただし今回の評価がすべてかどうかは難しいようなきもします。 (1100床,放射線科医)
・医療費削減の大きな流れの中では,放射線関係には大きな影響は無かったと思いますが… (約1000床,診療放射線技師)
・PET-CTが診療報酬として評価される様になったが,CT/MRIの部位別評価が廃止されたから (700床,放射線科医)
・こちらからの要求には幾つかは答えている。又,CT/MRの機種による差別化であれ,撮影料の一辺倒の削減を止めることは出来たことは認めるが 技術評価が今回も適正に評価されていない。(600床,診療放射線技師)
・意味がわからない,どういう基準でつけたらいいのかわからない。(500床,放射線科医)
・乳房撮影には上げ,CT・MR躯体での部位別排除の下げなど,高低さのある改訂であり,個別評価で施設間の特異性が判断材料になる。(300床,診療放射線技師)