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取材報告

2012
第32回医療情報学連合大会開催
「地域社会に貢献する医療情報学」をめざし医療連携やビッグデータのあり方などを討議

会場の朱鷺メッセ
会場の朱鷺メッセ

大会長:岡田正彦 氏(新潟大学名誉教授)
大会長:岡田正彦 氏
(新潟大学名誉教授)

A会場の大会長講演の様子
A会場の大会長講演の様子

シンポジウム2「臨床検査の医療情報」のパネルディスカッション
シンポジウム2「臨床検査の医療情報」の
パネルディスカッション

I会場の一般口演「広域保健医療・連携医療支援(地域連携・遠隔医療)」
I会場の一般口演「広域保健医療・連携医療支援(地域連携・遠隔医療)」

学会企画「見えてきた地域医療連携における標準の形」ではデモとチュートリアルを実施
学会企画「見えてきた地域医療連携における標準の形」ではデモとチュートリアルを実施

ポスター会場風景
ポスター会場風景

企業展示には50社が出展
企業展示には50社が出展

ホスピタリティールームも盛況
ホスピタリティールームも盛況

  第32回医療情報学連合大会(第13回日本医療情報学会学術大会)が,2012年11月15日(木)〜17日(土)の3日間,新潟市の朱鷺メッセ新潟コンベンションセンターで開催された。テーマは,「地域社会に貢献する医療情報学:元気で長生きするための医療をめざして」。新潟大学名誉教授の岡田正彦氏が大会長を務め,そのほか山口大学大学院医療情報判断学分野教授の井上裕二氏が副大会長を,秋田大学医学部附属病院医療情報部教授の近藤克幸氏がプログラム委員長を,川崎医療福祉大学医療情報学科教授の岡田美保子氏が実行委員長をそれぞれ務めた。

  大会初日の開会式で挨拶した岡田大会長は,一般演題が過去最高の376題となったことを紹介し「医療の進歩は基本的に情報化だと言えるが,その意味で医療情報学は従来も,そしてこれからも重要な分野である。集まった演題も,最先端の技術を利用した研究や長期間の調査データを基にした発表,地道な日常の成果をまとめたものなどバラエティに富んでいる。この新潟の地で医療の未来形についてディスカッションして欲しい」と述べた。

  初日の午後にメイン会場で行われた大会長講演は,「大規模臨床試験のインパクトと歪められたエビデンス」と題して行われた。岡田大会長は,「いつか使えると考え収集してきた患者データは,精度不足などから結局役に立つことはなかった。また,1990年ごろから大規模臨床試験が行われ大きなインパクトを与えたが,残念ながらその解析に医療情報学のノウハウはあまり生かされなかった」と述べ,血圧や血糖値の臨床試験データを紹介してデータの見方に潜む問題点を指摘した。そして,今後,“ビッグデータ”として注目を集めている電子カルテなどの蓄積データについて,若い研究者はデータを集めれば良いという昔の失敗を繰り返さないで欲しい,そして医療情報を正確に評価するツールを提供してさまざまな視点からの評価に耐えうる基盤となるデータを提供できるように研究,開発を進めて欲しいとエールを贈った。

  また,学会長講演として浜松医科大学医療情報部教授の木村通男氏による「医療情報の過去・現在・未来−Data,Information,Intelligence 第3回 未来編」が行われた。2010年の浜松での過去編,2011年の鹿児島における現在編に続いてのもの。そのほか,特別講演2題,大会企画3題,共同企画14題,産官学共同企画,学会企画,シンポジウム8題など多彩なプログラムが行われた。

  シンポジウム3「在宅医療における医療介護福祉連携」は,JAMI課題研究会の在宅医療におけるPHR研究会とのコラボレーションで企画されたもので,東京大学政策ビジョン研究センターの秋山昌範氏と日本病院薬剤師会の土屋文人氏が座長を務めた。シンポジウムのねらいを説明した秋山氏は,超高齢社会の中での在宅医療は従来の病院医療の経験や,急性期から慢性期に移った患者を診るというような視点だけでは捉えきれなくなっており,多職種の連携は当然として,そのための情報共有や提供のあり方,制度や運用を新たな視点で考え直すことが求められているとして,患者側を含めて実際に在宅医療やケアにかかわる看護師や薬剤師などから現場での課題が報告された。最初に在宅で祖母を看取った家族の意見として東京都在宅療養推進会議の宮崎詩子さんが家族の立場から情報提供の課題について述べた。続いて,セコム医療システムの黒岩泰代氏が薬剤師の立場で訪問服薬指導を行う際の患者を中心とした情報共有の課題について意見を述べた。東京大学大学院医学系研究科の水木麻衣子氏は,看護師として在宅医療コーディネーターを務めているが,コーディネーターは情報収集と整理を行い患者および家族の意思決定を支援することが役割であり,家族の意思の“ゆらぎ”をコントロールできるように情報を峻別することも必要だと述べた。また,管理栄養士で東京大学大学院医学研究科の佐々木由樹氏は,終末期の高齢者に必要な摂取カロリー量について根拠となる研究やデータがないことを紹介し,在宅医療において必要な栄養量を把握するためのアセスメント項目を採用することを提案した。最後に,新潟大学法科大学院の鈴木正朝氏が在宅医療に医療情報にかかわる刑事,民事,行政の各法制度について概説し,刑事や民事に比べてゆるい規制であるはずの個人情報保護法に過剰反応が見られることがひとつの問題になっていること,また,個人情報保護法には2000個の法律と条令があって連携医療推進の際のネックになっていることなどから,医療情報保護法(医療等分野個別法)の制定に向けた動きがあることを紹介した。鈴木氏は,今後,医療情報の定義やシステムを提供するベンダーなども規制の対象になるのかなどの議論は必要だが,連携のためのシステムを構築する際の前提となる法規制が一元化されることから,医療連携の推進のためには新法の制定が不可欠となると述べた。秋山氏は,高齢者の摂取カロリーの例からもわかるように,従来あるエビデンスは入院医療を基にしたデータであり,在宅医療に本当に必要な情報については検討されていないのではないかと述べ,多くの知見が収集されたビッグデータを利用して医療介護福祉の連携に必要な情報基盤づくりに向けて今後も検討を行っていくと締めくくった。

  展示ホール(ウェーブマーケット)では,企業展示として50社が出展。ホスピタリティールームは,三菱電機,富士通,アライドテレシス,デル/アルファテック・ソリューションズ/日本マイクロソフト(共同出展),日本電気,GEヘルスケア・ジャパン,東芝医療情報システムズ/インテル(共同出展),日本アイ・ビー・エムが出展した。

  また,学会企画として「見えてきた地域医療連携における標準の形 役割別チュートリアル&デモ〜標準なら繋がるのに!」が行われた。地域医療連携の中でネットワークを利用した情報共有が重要性を増しているが,企画ではIHEやSS-MIX,HL7などを利用した情報連携の方法を解説と各社の実機を利用したデモで紹介し,標準化された環境での運用のメリットをアピールした。取り上げられたのは,1)産官学SS-MIX・IHE合同領域のPIX(Patient Identifier Cross-referencing:患者情報相互参照)/PDQ(Patient Denographics Query:患者基本情報の問い合わせ)を用いた異なる地域医療ネットワーク間の情報連携,2)HL7領域のHL7を用いて異なる電子カルテシステム間でデータ互換を実現する,3)IHE:臨床検査領域のIHEによる臨床検査システムの連携・統合,4)IHE:PCD(Patient Care Device)領域の手術室・ICU・病棟システムを連携・統合するIHE-PCD。

  次回の第33回医療情報学連合大会は,兵庫医科大学医療情報学主任教授の宮本正喜氏を大会長として,2013年11月21日(木)〜23日(土),神戸ファッションマート(兵庫県神戸市・六甲アイランド内)で開催される。


●問い合わせ先
第32回医療情報学連合大会事務局
TEL 025-243-7040
FAX 025-243-7041
E-mail jcmi2012@shinsen.biz


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