モニタの常識・非常識

Q10 バックライトの交換さえ行えば,液晶モニタは永遠に使い続けられるのですか?

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 先月号でも話題にしましたが,液晶モニタの寿命を考える上で,最も大きな要因はバックライトの輝度低下です。それなら,バックライトだけ交換できれば,永遠に使い続けられるのでしょうか? この問題をモニタメーカーの(株)ナナオさんにお付き合いいただき(迷惑だろうなあ),考えてみることにします。

 RadiFoceブランドの3Mハイエンドモニタである「GX320」を例にとってみると,この製品のバックライト交換に必要な費用は約10万円(輸送費・セットアップ費別)だそうです。新品購入時の価格を90万円と設定し,4.5年後の交換を想定すると,9年間(新品4.5年+交換後4.5年)の使用で,100万円(90万+10万)が必要になります。

 一方,4.5年後に更新する場合,より性能が良くなった新製品を前機種から10%下がった81万円と見積もれば,90万+81万で171万円となります。

 そうです。これならバックライト交換の方が71万円も「お得!」という勘定です。ナナオさん,この計算で間違いないでしょうか?

  「はい,ただし他の部品が9年間壊れないことが前提です。新品ではすべてが保証範囲でも,バックライトを積み替えたモニタの “バックライト以外” は,製品の保証が切れてしまいます。モニタの構成パーツには,想定性能維持期間が設定されており,モニタ全体としては使用開始後3万時間が標準的な保証時間となります。この使用時間を超えた部品の品質は,当社も保証できませんので,有償修理であると同時に,どうしても修理期間を長く必要とします。また,バックライト以外にも経時劣化する部品に,(液晶パネルの)偏光板や拡散板があります。これらのパーツも,色味の変化や輝度に影響を与えますので,バックライトの交換だけでは完全な新品とはならないこともご理解の上,バックライト交換のご発注をいただければと考えております」

 ところで,実際にバックライトの交換を発注することは可能なのでしょうか? 再度,ナナオさんに確認してみました。

 「当社では,国内で開発から生産を一貫して行っているメリットを生かして,パネルメーカーの協力を得ながらバックライト交換サービスを実施できる体制を持っております。サービス実施可能な対象機種やコストにつきましては,当社営業までご連絡ください」

  なるほど,発注自体は可能なようですね。ちなみに,バックライトの交換には,約1か月かかるとのことでした。

 さて,読者のみなさんはいかがお考えになりましたか? バックライトの交換と新製品への更新,双方それぞれに「理由」があるようです。ただし,実際のバックライト交換には「交換中の代替モニタをどうするか」や「梱包・輸送コスト」のほか,「バックライト部品以外の故障リスク」がありますので,それらの対応や見積もりもお忘れなく。

松田恵雄 埼玉医科大学総合医療センター中央放射線部

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(月刊インナービジョンより転載)