Zio Vision 画像の本質を診る(ザイオソフト)
第16回呼吸機能イメージング研究会学術集会が2026年1月23日(金),24日(土)にランドマークホール(神奈川県横浜市)で開催された。研究会共催のランチョンセミナー2「間質性肺疾患,どう評価していますか? ―AIと拓く画像と構造理解の深化―」(ザイオソフト株式会社)では,小倉髙志氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター)が座長を務め,市川泰崇氏(三重大学大学院医学系研究科)と藪内英剛氏(九州大学大学院医学研究院)が講演した。
2026年4月号
間質性肺疾患,どう評価していますか? ─AIと拓く画像と構造理解の深化─
講演2:特発性肺線維症に対する抗線維化療法:定量的CTテキスチャー解析による効果予測
藪内 英剛(九州大学大学院医学研究院保健学部門)
本講演では,まず,特発性肺線維症(IPF)の予後因子や,IPFに対する抗線維化療法の効果判定および予測因子について述べる。その上で,同療法の定量的CTテキスチャー解析による効果予測について,ザイオソフト社の胸部CT解析システム「QZIP-ILD(Quantification by Ziosoft Informatics Platform for Interstitial Lung Disease)」(W.I.P.)を用いて検討を行ったので,その結果を報告する。
IPFの予後因子
1.臨床因子
IPFは予後不良な疾患であり,これまでの研究で多くの予後因子が報告されている。国際ガイドライン1)では,ベースラインの予後因子として呼吸困難度,拡散能(DLco)の低下,6分間歩行試験における酸素飽和度の低下,high resolution CT(HRCT)における蜂巣肺領域の程度,肺高血圧症の合併,GAP stage(IPFなどの重症度分類),縦断的な予後因子として呼吸困難度の増加,努力性肺活量(FVC)値の10%以上の減少,DLco値の15%以上の低下,HRCTにおける線維化所見の増加が挙げられている。また,胸膜肺実質線維弾性症(PPFE)を合併したIPFはIPF単独よりも予後不良であるという報告もある2)。
2.定量的CT因子
定量的CT因子のうち,CALIPER-VRS(vessel-related structure)スコア(>20%)は,予後および1年後のFVC低下の最も強い独立した予測因子であると報告されている3)。CALIPER-VRSスコアは,肺門部の血管を除去した3mm超の肺動静脈の血管容積の総肺容積に対する割合を示しており,肺の構造変化(線維化)に伴って血管容積の比率(VRS)が変化すると報告されている。
3.定性的CT因子
定性的CT因子のうち,牽引性気管支拡張と線維化スコアはIPFの生存率の予後因子であることが報告されている4)。また,CT上のPPFE様病変は,IPFの予後不良因子であることが報告されている5)。
IPFに対する抗線維化療法の効果判定および予測因子
1.抗線維化薬の治療効果
抗線維化薬(ニンテダニブ,ピルフェニドン)は,FVCの年間減少率を抑制する薬剤である。IPFおよび非IPFの進行性肺線維症におけるニンテダニブとピルフェニドンの有効性を比較したシステマティックレビューおよびメタアナリシス6)では,抗線維化療法はFVCの低下率を有意に抑制する効果があり,IPFおよび非IPF間で有効性に有意差は認められなかった。また,両薬剤間には,FVC低下率の抑制効果に有意差は認められなかったことが報告されている。
2.抗線維化療法後の治療効果判定
IPFでは,年平均150〜200mLのFVC低下が見られることから,これが抑制されれば治療効果があると判定される。ピルフェニドンの定量的CT因子による治療効果についての検討では,コントロール群と比較し,ピルフェニドン群の方が明らかに呼吸状態が安定し,テキスチャー解析における線維化パターン(GHNC法7)における線維化の全肺に対する比率)の変化が有意に抑制され,肺活量(VC)の変化も抑制されるなど,明確な治療効果が認められた7)。
また,治療6〜12か月後の%FVCの低下は,抗線維化療法の有意な予後因子であったことから,早期の治療介入が有効であることが示された8)。ただし,ベースラインの定量的CT因子を含む抗線維化療法の効果予測因子については,これまで報告がないのが現状である。
抗線維化療法の定量的CTテキスチャー解析による効果予測
われわれは,IPFに対する抗線維化療法後の治療反応を定量的CT因子が予測できるか検討した。
1.対象,方法
抗線維化療法を施行した連続症例を初回群(2015年7月〜2021年3月)と検証群(2021年4月〜2024年3月)に分け,適格基準と除外基準に照らして患者を絞り込んだ(初回群41例,検証群20例)。また,治療1年後の%FVCの変化を基に治療効果を2群に分類し,%FVCが10%以上低下している症例をノンレスポンダー(n-res),10%未満に抑制できた症例をレスポンダー(res)とした。
QZIP-ILDにて対象症例のCT画像解析を行い,8種類の病変〔気腔,浸潤影,線維化(牽引性気管支拡張を伴う浸潤影),すりガラス状陰影,蜂巣肺,網状影,牽引性気管支拡張,肺気腫〕および正常肺の,全肺に対する比率を算出した。統計学的解析(CTテキスチャー解析)は,n-resとresの2群間で単変量および多変量ロジスティック回帰分析を行い,臨床因子と定量的CT因子のスコアを比較した。診断能はROC解析で評価し,多変量解析における有意因子については肺葉ごとの解析も追加した。有意因子の予後との関連は全生存率(カプランマイヤー法)で評価し,有意因子の比率が高い群(カットオフ値以上)と低い群(カットオフ値未満)の比較には両側ログランク検定を用いた。
2.結 果
ベースライン臨床因子〔年齢,性別,BMI,GAPスコア,smoking index,抗線維化薬の種類,ベースラインの肺機能検査(%FVC,%VC,%DLco)〕について,初回群の2群間(n-resおよびres)を比較したところ,有意な因子は認められなかった。検証群においても同様であった。
定量的CT因子(8病変+正常肺)や,線維化所見を合算した値,VRSについて検討したところ,定量的CT因子の線維化(牽引性気管支拡張を伴う浸潤影:F病変)が最も有用な予後因子であり,次いで牽引性気管支拡張(T病変)単独の有用性が高かった。検証群においても同様であった。
多変量解析にて,初回群のF ratio〔線維化(牽引性気管支拡張を伴う浸潤影)の比率〕とT ratio(牽引性気管支拡張の比率)の予後予測能を比較したところ,n-resの予測におけるオッズ比およびAUCはF ratioの方が高かった(図1)。ROC解析による治療効果予測能も,F ratioの方が良好な結果を示した(図2)。また,検証群においても,F ratioの有用性が高かった。
初回群のF病変について,肺葉ごと(全肺,上葉,下葉)の予後因子としての有用性を単変量解析したところ,上葉のF ratioが最も高い識別能を示した(図3)。検証群においても同様であった。また,初回群のF ratioと全生存率との関連を検討したところ,上葉のF ratioが高い群は,低い群と比較し有意に生存期間が短かった(図4)。
図1 多変量解析による予後予測能の比較(初回群)
図2 ROC解析による治療効果予測能の評価(初回群)
図3 F病変における肺葉ごとの予後因子としての有用性の検討(初回群)
図4 初回群のF ratioと全生存率(カプランマイヤー法)との関連
3.症例提示
症例1(図5)は,80歳代,男性,治療1年後の%VCは10%以上低下しておりn-resである。CTテキスチャー解析で示すF病変(黄色の領域)は上葉および下葉の上方に比較的多く分布している。病理診断の結果,このF病変はPPFEの所見と合致していた。
症例2(図6)は,60歳代,男性,治療1年後の%VCは上昇しており,resである。F ratioは0.48%と非常に低く,このような症例では抗線維化薬の治療効果が期待できる。
図5 症例1:80歳代,男性,n-res
図6 症例2:60歳代,男性,res
4.考察・結果
F ratioは,治療後の進行群で有意に大きく,抗線維化療法後の進行の予測において最良のオッズ比を示した。F病変はIPFにおける不可逆的変化を示唆し,抗線維化療法の予後不良因子となりうる。また,上葉のF病変は,IPFにおけるPPFE様病変と推測され,抗線維化療法への抵抗性を示唆しており,IPF+PPFEがIPF単独よりも予後不良であるとの従来の報告に合致する。一方,従来,IPFの予後予測因子として報告されているVRSや間質性肺炎比率(線維化所見を合算した値)は,抗線維化療法の治療効果の予測因子とはならなかった。
以上より,CTテキスチャー解析による上葉のF ratioは,IPF患者に対する抗線維化療法の効果予測において有用なツールとなりうると考える。
●参考文献
1)Raghu, G., et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med., 183(6):788-824,2011.
2)Oda, T., et al., Chest, 146(5):1248-1255, 2014.
3)Jacob, J., et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med., 198(6):767-776, 2018.
4)Sumikawa, H., et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med., 177(4):433-439, 2008.
5)Fujisawa, et al., Respi. Res., 22:290, 2021.
6)Finnerty, J.P., et al., BMC Pulm. Med., 21(1):411, 2021.
7)Iwasawa, T., et al., Eur. J. Radiol., 83(1):32-38, 2014.
8)Aono, Y., et al., Ther. Adv. Respir. Dis., doi: 10.1177/1753466620953783. 2020.
藪内 英剛(Yabuuchi Hidetake)
1989年 九州大学医学部医学科卒業。94年 日本医学放射線学会診断専門医。2001年 医学博士(九州大学)。2015年〜九州大学大学院医学研究院保健学部門教授。
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