コマンドセンター導入による患者動向の可視化を看護業務の改善へつなげる
髙田幸千子(独立行政法人国立病院機構 京都医療センター 院長補佐,看護部長)

2026-3-16


コマンドセンター導入の経緯

当院は,京都市南部の伏見区に位置する600床(医療法)の高度急性期・急性期病院である。病院の主な機能は,地域がん診療連携拠点病院,地域医療支援病院,三次救命救急センター,地域災害拠点病院,地域周産期母子医療センターである。標榜診療科は38,看護単位は21,看護師の現員数は570名(2025年10月)である。看護方式は,現在12病棟が「セル看護提供方式®」を実施,そのほかは固定チームナーシングである。
2023年にDPC特定病院群に昇格した後の病院運営の課題の一つに,入退院フローの停滞があり,患者サービスと病院経営に負の影響を及ぼしていた。具体的には,入院依頼に対する病床管理担当看護師長からの電話に「そのベッドは明日の入院用です」「受け入れは〇分後にお願いします(30分以上かかることもしばしば)」「入院,うちですか?」などの返答や,紹介患者の依頼に対して,「少々お待ちください」と返答して15分以上経過する,「△の書類と◇の情報を送ってください」などの返答や反応をしていた。当センターの入退院フローに関する課題を表1のように整理した。
入退院フローにおける問題の背景には,診療科ごとのルールの存在,業務整理や改善ができていないことやIT化が進んでいないなど複数の因子が考えられ,上記の課題を解決するためには,PFM(Patient Flow Management)を再構築し,(1) 病棟,病院の状況をリアルタイムに把握し,(2) 安全で効率的に空床を運用すること,(3) 適切な応援体制を確保しマンパワーの適正配置と,(4) 業務のスリム化による実務環境の改善が必要と考えた。すなわち,情報の可視化と共有によるリアルタイム情報共有型組織への変革を目指した。

表1 入退院フローにおける課題

表1 入退院フローにおける課題

 

コマンドセンターについて

2023年,ある学会でGEヘルスケア・ジャパン社が開発した医療DXソリューションである「コマンドセンター」の活用を紹介する発表を聴講した。コマンドセンターとは,「病院経営のデジタル司令塔」として院内の多種多様なデータを包括的に解析・分析し,それらをリアルタイムに可視化することで,患者フローにかかわる全体のオペレーションを最適化するものである1)。これが,当院の考えるリアルタイム情報共有型組織の礎になるのではないかと考え,2024年からコマンドタイルを使用したPFMの改善による病院KGI(Key Goal Indicator)とKPI(Key Performance Indicator)達成の取り組みとコマンドタイルを業務整理に活用する方策の検討を始め,2024年12月から試行稼働,2025年4月から本格稼働に至った。なお,全国140の国立病院機構の中で,コマンドセンターの導入および活用は初となる。コマンドセンターとして導入したコマンドタイルの全景(図1)と4つのタイル(表2)を紹介する。

図1 コマンドタイル全景

図1 コマンドタイル全景

 

表2 導入したコマンドタイルと主な表示項目

表2 導入したコマンドタイルと主な表示項目

 

コマンドタイルの活用効果と業務改善の実際

コマンドセンターによってリアルタイムに状況が把握できたことと,さまざまな情報が一覧化されたことで,判断の迅速性が上がった。また,コマンドタイルによって同じ情報を共有できることで,相談や検討も容易になった。各タイルの業務における活用場面を表3に示す。

表3 コマンドタイルの業務への活用

表3 コマンドタイルの業務への活用

 

次に,コマンドタイルの活用の実際例を示す。

1.緊急入院受け入れ決定
これまで,緊急入院受け入れを決定する際は,病床管理担当看護師長は各病棟の空床状況・本日の入院数を調べ,緊急入院患者の病名・病態とマッチする候補病棟を絞り込み,当該病棟看護師長に受け入れ要請の電話を行っていた。しかし,「そのベッドは明日の入院用です」や「今,バタバタしているので受け入れまでに〇分くらいかかりますけど……」「またうちですか?」などスムーズな緊急入院受け入れができず,病床管理担当看護師長は,複数の病棟看護師長に依頼の電話をかけることもしばしばあり,日常的に緊急入院受け入れ病棟の決定に20~30分かかっていた。
コマンドセンター導入後は,【病床管理タイル】の緊急入院受け入れ順位の検証を行うのみである。それは,【病床管理タイル】で患者数・本日の入退院数・患者の詳細画面で危険度の高い患者数,【患者安全タイル】で重症患者数・濃厚な治療を受けている患者数と,【看護繁忙度タイル】で繁忙度タスク・勤務者数をチェックする。検証結果に基づき受け入れ病棟を決定,当該病棟看護師長に電話連絡をする。ここでは,上述のような反応はなく,所要時間は数分に短縮され,スムーズな入院受け入れが実現している。緊急入院受け入れの業務フローを図2に示す。
入院決定に要する時間が大幅に減少したことで,病床管理担当看護師長は,DPC期間を意識した退院管理に業務の幅が広げられた。各病棟の退院日とDPC期間の調査,Ⅱ期超え症例の分析や病棟看護師長への働きかけをするようになった。

図2 緊急入院受け入れの業務フロー

図2 緊急入院受け入れの業務フロー

 

2.看護師応援体制について
看護師の応援の采配もコマンドタイルを用いて行っている。【看護繁忙度タイル】を基本に置き,その他詳細な事項を【病床管理タイル】【患者安全タイル】【業務進捗タイル】で確認し,応援元病棟と応援先病棟を決定する。
看護師応援体制の考え方の概略を図3に示す。看護師のマンパワーの再配置をする際には,勤務している看護師人数,入退院数,処置やケアなどの残務量,医療・看護必要度B項目点数などから算出し,【看護繁忙度タイル】に表示しているタスクスコアを基に,繁忙度タスクの低い病棟からスコアの高い病棟へ看護師応援を計画する。その過程で【病床管理タイル】で本日の入退院数やその進捗状況と【業務進捗タイル】で治療・検査・他科受診などの搬送を伴う残務を確認し,判断材料とする。このように,各タイルに表示されている情報を総合的に判断し,応援の有無,応援先病棟と応援元病棟の決定,応援業務内容を決定している。
看護師の応援は,迅速な業務完遂が目的であるが,さまざまな潜在的問題をはらんでおり,その運用は大変難しい。コマンドセンターを活用することで,応援先病棟の業務負荷の回避だけでなく応援元病棟も応援を出してよかったと感じられ,実際に応援に行く看護師もやりがいを得られるwin-win関係を目指している。現在は,応援采配を総括している業務担当の副看護部長の判断プロセスを看護師長たちが学び,24時間365日の公正な看護師応援体制の確立を目指している。
看護師の応援の実際場面では,応援元看護師長は応援に行った際の学習目標や達成事項を明確にするなどして看護師への動機づけと人材育成の場として活用するように心がけている。応援先の看護師長は,「忙しいので応援をもらって当然」ではなく,応援に来てくれた看護師のレディネスを確認し応援時に達成したい事項ができているかや困ったことがないかなどの確認とpositive messageを伝えるなど,応援に来た看護師が気持ちよく働けるような関わりに努めている。その結果,応援先病棟から応援看護師に対するgood jobカードが多数寄せられ,自病棟では経験が少ない看護技術が経験できたりなど徐々に「応援=負担」の構図は薄れてきている。

図3 看護師応援体制の考え方

図3 看護師応援体制の考え方

 

終わりに

当センターは,直面するさまざまな課題に対する継続的な取り組みと,コマンドセンターによってリアルタイムに可視化された情報を活用し,さまざまな業務改善につなげてきた。入院患者数や院内迅速対応チーム(RRT:Rapid Response Team)の起動件数など病院目標指標においても,前年を上回る成果を上げることができ,業務のしやすさが向上することにより看護師の残業時間を40%削減する改善の成果が得られた。

●参考文献
1)GEヘルスケア・ジャパン : コマンドセンター.
https://www.gehealthcare.co.jp/products/command-center

 

(たかた さちこ)
1986年国立循環器病センター(現・国立循環器病研究センター)に入職。2001年に看護師長(国立奈良病院,国立循環器病センター)となり,2006年に医療安全管理者(国立循環器病研究センター),2011年から副看護部長(国立循環器病研究センター,国立病院機構大阪医療センター)を経て,2017年から看護部長(国立病院機構神戸医療センター,国立病院機構宇多野病院,国立病院機構大阪南医療センター),2023年から現職。


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