富士フイルム,PET(陽電子放射断層撮影)検査用の放射性医薬品市場に参入
〜約60億円を投資し,神奈川・大阪に研究開発拠点を新設,「T-817MA」の治療薬と合わせ,アルツハイマー型認知症の診断から治療まで幅広く貢献〜

2014-11-5

核医学(PET,PET/CT,SPECT,SPECT/CT)

医薬品

富士フイルム


富士フイルム(株)は,脳疾患や心臓疾患,腫瘍などの各種疾病の機能診断に役立つPET(陽電子放射断層撮影)(*1)検査用の放射性医薬品市場に参入する。今後,約60億円を投資し,国際戦略総合特区(*2)に指定されている彩都西部地区(大阪府茨木市)と殿町地区(神奈川県川崎市)に研究開発拠点を新設する。

PET検査は,18F(フッ素)などポジトロン(陽電子)を放出する核種(*3)を化合物に標識した放射性医薬品をヒトに投与して断層撮影する検査で,各種疾病の機能診断に役立つ。また,従来の核医学検査と比べて高い感度と空間分解能を有しており,より診断に適した機能画像が得られることから,各種疾病の診断,治療方針の決定や予後の判定などに大きな役割を果たす。

現在,脳疾患領域においては,高齢化社会の進展に伴って,アルツハイマー型認知症が増加している。アルツハイマー型認知症の原因の一つとして,アミロイドβというタンパク質の脳内への異常な蓄積が考えられており,この蓄積はアルツハイマー型認知症が発症する15~20年前から始まっていると解明されつつある。また,アルツハイマー型認知症の診断精度向上は,放射性医薬品を用いたPET検査でアミロイドβを検出する手法が有効であると期待されている。これまで,富士フイルムは,100%子会社の富士フイルムRIファーマ(株)を通じて,放射性医薬品分野ではSPECT検査(*4)領域で事業を展開してきたが,今後,アミロイドβ検出用薬剤の研究開発に取り組み,PET検査領域にも事業拡大を図る。

富士フイルムRIファーマは,本年10月14日に,大手製薬企業のイーライリリー・アンド・カンパニー(*5)と,同社のPET検査用放射性医薬品「florbetapir(18F)注射液)」(以下,「florbetapir」)の日本国内における共同開発契約を締結した。「florbetapir」は,イーライリリー・アンド・カンパニーが世界で最初に承認を取得した,脳内アミロイドβプラーク(*6)を可視化できる放射性医薬品。すでに,米国,EU諸国およびスイスにて承認され,アルツハイマー型認知症が疑われる認知機能障害を有する患者に対して,診断的評価を補助する目的で使用されている。

今後,富士フイルムRIファーマは,日本イーライリリーとの共同開発体制の下,「florbetapir」の国内承認取得を目指す。また「florbetapir」を用いたPET検査による認知障害の診断精度向上に取り組んでいく。

現在,富士フイルムグループでは,アルツハイマー型認知症の治療薬「T-817MA」の開発を行っている。「T-817MA」は,強力な神経細胞保護効果,神経突起進展促進効果を有し,病態動物モデルにおいて高い治療効果を示すことが確認されており,アルツハイマー型認知症に対して高い治療効果が見込める革新的な薬と期待されている。今後,治療薬「T-817MA」と診断薬「florbetapir」の開発を進め,アルツハイマー型認知症の診断,治療に貢献していく。さらに,アルツハイマー型認知症の予防手法の開発にもつなげ,アルツハイマー型認知症の予防から診断・治療まで幅広くカバーすることを目指す。

富士フイルムは,アンメットメディカルニーズが高い「がん」「アルツハイマー」および「感染症」を重点領域ととらえ,研究開発を積極的に推進して事業展開を図るとともに,革新的な医薬品の提供を通じて世界の医療の発展に貢献していく。

*1 Positron Emission Tomographyの略。
*2 国際戦略総合特区とは,産業構造および国際的な競争条件の変化,急速な少子高齢化の進展等の経済社会情勢の変化に対応して,産業の国際競争力の強化および地域の活性化に関する施策を総合的かつ集中的に推進することにより,我が国の経済社会の活力の向上および持続的発展を図ることを目的として設置された総合特区制度の一つであり,我が国の経済成長のエンジンとなる産業・機能の集積拠点の形成を目的とした国際戦略総合特区として,平成23年12月に7つの地域が第一次指定された。
*3 原子核中の陽子の数,中性子の数などによって規定される特定の原子の種類のこと。
*4 SPECT検査は,単一光子を放出する核種(例えば,99mTc,123Iなど)を化合物に標識した放射性医薬品をヒトに投与して断層撮影する検査で,PET検査同様,各種疾病の機能診断に役立つ。SPECTとはSingle Photon Emission Computed Tomographyの略。
*5 イーライリリー・アンド・カンパニー(米国本社)の他, 日本イーライリリー(株)(イーライリリー・アンド・カンパニーの日本子会社), Avid Radiopharmaceuticals, Inc. (イーライリリー・アンド・カンパニーの子会社)も含む。
*6 アミロイドβプラーク(老人斑)は,アミロイドβが凝集(重合)したものが沈着してできるもので,神経細胞を障害する。一般に,アルツハイマー型認知症患者の脳では,アミロイドプラークが同年齢の健康な人の5~10倍あるといわれている。

【PET検査用放射性医薬品の研究開発拠点の概要】

会社名 富士フイルムRIファーマ株式会社
国際戦略総合特区 京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区 関西イノベーション国際戦略総合特区
研究開発拠点 神奈川県川崎市 大阪府茨木市
延床面積 約2,000m2 約2,000m2
投資金額 約60億円

 

●問い合わせ先
富士フイルム(株)
医薬品事業部
TEL 03-6271-2171
http://fujifilm.jp

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