富士通,ニューノーマル時代の遠隔産業保健を支えるシステムの実現に向け東京大学川上研究室と共同研究を開始

2020-10-22

富士通


富士通(株)は,テレワーク下における従業員の心身の健康のセルフケアや非対面で行う遠隔産業保健をトータルに支援する,ニューノーマル時代に対応した産業保健システムの実現に向けて,10月22日より,国立大学法人東京大学大学院医学系研究科川上憲人教授の研究室(以下,東京大学川上研究室)と共同研究を開始する。

本共同研究では,同社ストレスチェックシステム「FUJITSU ヘルスケアソリューション 組織ストレスアセスメント e診断@心の健康(以下 e診断)」を用いて毎日もしくは毎週実施するパルスサーベイ(注1)と,AIで顔の表情を認識する(株)富士通研究所(注2,以下 富士通研究所)の技術により,従業員の心身の健康状態などを判定するデータドリブン型アルゴリズムを,東京大学川上研究室の認知行動療法(注3)の知見などを活用して開発する。また,健康状態の判定結果と性別や年齢,性格特性などの属性情報を組み合わせ,一人ひとりに最適なアドバイスを導くアルゴリズムも開発する。

さらに,これらのアルゴリズムから導き出された結果の従業員へのフィードバックや,アドバイスに基づく従業員のセルフケアの状況を産業保健スタッフが容易に把握できる健康ポートフォリオを設計し,有効性を検証する社内実践を行う。

同社は本成果をもとに,「e診断」などの企業向け健康情報ソリューションや個人の健康医療情報管理基盤「FUJITSU ヘルスケアソリューション Healthcare Personal service Platform(以下 Healthcare Personal service Platform)」と連携する新たな産業保健向けPHR(注4)サービスを2021年度中に提供予定。

図1. 共同研究概要

図1. 共同研究概要

 

●背景

新型コロナウイルス感染症の拡大により,ニューノーマル時代の新たな働き方として,企業においてテレワークが急速に普及し,場所や時間を問わない勤務形態へとシフトする動きが高まる一方,テレワークを基本とする勤務では,従業員一人ひとりのメンタルヘルスケアを組織的に実施することが難しく,各自による心身の健康への気づきとセルフケアが重要になる。また,高ストレス者や長時間労働者に対する産業医面接などの産業保健を遠隔で実施するにあたり,従業員の健康状態の的確な把握と指導が求められている。

同社は,2020年7月に,ニューノーマル時代における新たな働き方「Work Life Shift」を発表し,約8万人の国内グループ従業員を対象にテレワークを基本とする勤務形態に移行した。あわせて,従業員の不安やストレスの早期把握と迅速な対応を目的にパルスサーベイやストレス診断を実施しており,この取り組みを加速させるため,今回,東京大学川上研究室と共同で,テレワーク勤務を行う従業員のセルフケア,およびテレワーク下における遠隔での産業保健を支援するシステムの実現に向けた研究を開始する。

●共同研究の概要

1.目的:
テレワーク下における従業員のセルフケアと遠隔産業保健を支援するシステムの実現

2.期間:
2020年10月22日(木曜日)から2021年3月31日(水曜日)

3.研究内容:
(1)従業員一人ひとりの心身の健康状態を判定するデータドリブン型アルゴリズムの開発
東京大学川上研究室が保有する認知行動療法などの健康関連の様々な調査データや文献をベースに,従業員向けに毎日もしくは毎週実施する「e診断」を用いたパルスサーベイと,富士通研究所が開発したAI表情認識技術を組み合わせ,心身の健康に関するデータと顔の表情から従業員一人ひとりの心身の健康状態の判定や健康関連因子の分析を行うデータドリブン型アルゴリズムを開発する。

(2)従業員一人ひとりに最適なアドバイスを行うアルゴリズムの開発
(1)で取得した個々の従業員の心身の健康状態や,その状態に影響を与えた行動の内容を,従業員それぞれの性別や年齢,性格特性などの属性情報と組み合わせて分析することで,個々人に最適なアドバイスを導くアルゴリズムを開発する。

(3)開発したアルゴリズムを適用し,社内で実践
(1)と(2)で開発したアルゴリズムについて,テレワーク下における従業員の心身の健康のセルフケアや遠隔産業保健における有効性を検証するため,同社従業員を対象に社内実践を行う。アルゴリズムから導き出された結果の従業員へのフィードバックや,アドバイスに基づく従業員のセルフケアの状況を記録し集約する健康ポートフォリオも設計し,社内実践を通じて有効性を検証する。健康ポートフォリオにより,産業医や産業保健スタッフが従業員一人ひとりのセルフケアの状況を容易に把握することが可能になる。

●今後について

同社は,今回開発するアルゴリズムの社内実践結果をもとに,「e診断」やクラウド型の健康管理支援システム「FUJITSU ヘルスケアソリューション LifeMark HealthAssist」をはじめとする企業向け健康情報ソリューションや,個人の健康医療情報管理基盤である「Healthcare Personal service Platform」と連携する,新たな産業保健向けPHRサービスを開発し,2021年度中に提供予定。

図2. ニューノーマル時代のICTによる遠隔産業保健支援

図2. ニューノーマル時代のICTによる遠隔産業保健支援

 

注1 パルスサーベイ:
簡易的な調査を短期間に繰り返し実施する調査手法。主に従業員の満足度調査に用いられ,ストレスチェックにも活用されている。パルス(pulse)とは日本語で脈拍を意味し,脈拍のチェックをするように,組織と個人の関係性の健全度合を測ることを目的とする。
注2 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市,代表取締役社長 原裕貴。
注3 認知行動療法:
うつ病や不安障害などのさまざまな精神疾患の治療に活用されている心理療法の一種であり,その人自身の考え方に働きかけて,行動をコントロールすることで生活上や仕事上のストレスを改善する方法。
注4 PHR:
Personal Health Recordの略。個人が自身の医療情報をはじめ,健康に関する情報を集積し管理するもの。個人の意志で開示をコントロールできるものを指す。

 

●問い合わせ先
富士通コンタクトライン(総合窓口)
TEL 0120-933-200
受付時間: 9時~17時30分(土曜日・日曜日・祝日・同社指定の休業日を除く)

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