TXP Medical,大規模病院におけるがん治療向け『TXPレジメン特定プログラム』を開発
医師開発のAIアルゴリズムでがん治療と予後の実態を自動解析,臨床研究・医療の質と生産性の向上へ
2025-11-25
TXP Medical(株)(以下TXP Medical)は,2025年11月25日,様々な悪性腫瘍に対応する『TXPレジメン特定プログラム』を開発,提供を開始した。本プログラムは,医師の知見とAI技術をかけ合わせ,各医療機関が保有する大規模な治療・予後データをレジメン(※)単位で自動解析するもの。これにより,施設間および疾患間の治療成績や副作用傾向を可視化し,がん分野における臨床研究と医療の質向上を促進する。
・レジメン特定プログラム
https://medical-dataservice.txpmedical.jp/#about
■背景
がん治療は,化学療法・手術療法・放射線治療などといった多様な手段から構成される。このうち化学療法は,複数の抗がん剤を組み合わせた治療計画書「レジメン」をもとに実施されるものである。そのため,生存・寛解率や安全性・忍容性などの治療成績評価も単剤でのものに加えて,レジメンごとに行われる必要がある。
しかし,日本で広く利用されている医療ビッグデータの多くは,個々の薬剤の使用歴は取得できる一方で,その組み合わせがどのレジメンに該当するのか,さらに,一次治療・二次治療・三次治療といった治療ラインのどこで行われたのかという情報までは容易に判別できないのがほとんどであった。
その背景には,レジメンが疾患や医療機関ごとの治療方針によって多様化しているうえ,投与量・投与間隔・併用薬といった要素が細かく変動し,単純なパターン認識では分類できないことがある。さらに,一次治療・二次治療・三次治療といった治療ラインも,病勢や副作用,併用療法など複数の要因で変化するため,既存のデータベースだけでは正確に特定することが困難。こうした要因が重なり,レジメン解析は専門性の高い複雑な作業となっている。
LLM(大規模言語モデル)や機械学習は医療ビッグデータ解析への目覚ましい進歩が期待される一方で,それらだけでレジメン解析を自動的に行うことは現状困難であり,医師の専門知と医療データ解析に特化したアルゴリズムの両方が不可欠という現実があった。こうした事情から,レジメン単位で治療実態を精緻に把握することは臨床研究・医療の質向上において極めて重要でありながら,医療機関・研究者にとってハードルとなってきた。
■『TXPレジメン特定プログラム』について
こうした状況を改善するべく,TXP Medicalでは,医師と開発チームの協働によりすべての悪性腫瘍を対象とした,汎用的なレジメン特定プログラムを構築した。本プログラムは,診療データに記録された薬剤実施歴と,医学論文やガイドラインから得られる疾患別の治療パターンを照合することで,患者ごとのレジメンや治療ラインを自動判定し,手術や放射線治療との前後関係を含めて時系列で治療経路を可視化する独自のAIアルゴリズムを搭載している。
TXPレジメン特定プログラムにより,従来困難であった各患者におけるレジメン単位での治療方法とその変遷の把握,治療成績の比較が容易となる。また医師の研究業務負担の大幅軽減を通してがん治療の質向上に大きく寄与することが期待されている。
<TXP Medical レジメン特定プログラムの特長>
(1) 医療機関ごとの薬剤記録を患者単位で高精度に整理
(2) 論文やガイドライン情報に基づき各薬剤がどのレジメンに該当するのか同定
(3) 外科手術・放射線治療などの他治療との時系列関係を含む,治療経路全体を可視化
次なる取り組みとして,カルテテキストデータと本プログラムを組み合わせ,病期(ステージ),遺伝子検査結果,副作用・合併症など,入院・外来を横断した詳細データベースの整備を行っている。がん治療現場での個別化された治療(パーソナライズド・メディシン)の実態が容易に解析できるデータ基盤とすることで,がん治療の発展に貢献できると確信している。
TXP Medicalでは,今回紹介した『レジメン特定プログラム』の他にも多数のソリューションを提供することで臨床・研究現場の負担軽減と医療データの利活用の促進に取り組んでいる。これらを通じて,日本の医療の進歩と最適化,そして個々の患者様がより良い医療サービスを享受できる仕組みの構築に取り組んでいく。
※レジメン…がん薬物療法における抗がん剤,輸液,支持療法などを組み合わせた時系列的な治療計画のこと。抗がん剤の種類,投与量,投与スケジュール,治療期間などが詳細に記載された計画書であり,安全かつ効果的な治療の提供を目的として,医師や薬剤師が患者の状況に応じて作成する。基本的なレジメンはがん種や治療法ごとに決められており,治療効果や副作用を踏まえて調整される。これにより,がんの薬物療法の標準化と医療の安全確保が図られている。
<監修医師コメント>
・柴田 潤一郎 氏( 医師 / エンジニア / TXP Medical(株) Clinical Data Science Lead )
DPCやレセプトデータは,疾患や治療によらず標準的なデータ構造を持つ強みがある反面,臨床現場で医師が捉えている「レジメン」の構造や,それと手術・放射線治療との関係性を可視化するには大きな課題がありました。私は現役の医師かつエンジニアとして,この標準化されたDPCデータから,複雑な抗がん剤治療レジメンを自動特定するシステムの開発に取り組んできました。本システムの活用が,より臨床現場の実態に即した臨床研究・調査の促進につながることを期待しています。今後は,自然言語処理(NLP)や生成AIの技術も駆使し,カルテのフリーテキスト情報から遺伝子変異,病理所見,正確なステージ情報などを構造化・統合します。これにより,患者層別の治療実態を可視化し,真の個別化医療の実現に貢献したいと考えています。
●問い合わせ先
TXP Medical(株)
https://txpmedical.jp/
