富士フイルム,医療安全のさらなる向上と医療監査業務の効率化を実現「患者対応監査支援AI機能」新発売
統合診療プラットフォーム「CITA Clinical Finder」の新機能として提供開始
2026-4-9
富士フイルム(株)は,病院でのCT検査後の患者対応が適切に行われているかを確認する医療監査業務をAI技術でサポートする「患者対応監査支援AI機能」を富士フイルムメディカル(株)を通じて,4月9日より提供開始する。
本機能は,CT検査後に作成される「読影レポート」や診療録(カルテ)を解析し,監査対象候補の検出や患者対応の妥当性の検証および進捗管理など監査業務に必要な情報を自動で選別して提示し,監査業務の効率化を支援するもので,同社の統合診療支援プラットフォーム「CITA Clinical Finder」のオプションとして提供する。
同社は,2026年4月17日~19日にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催される「2026国際医用画像総合展(ITEM2026)」に本機能を展示する。
統合診療支援プラットフォーム「CITA Clinical Finder」について
電子カルテ上の各種情報や,放射線・内視鏡・生理検査・病理検査などの各部門システムに保存されている検査画像やレポート,診療文書など,院内の多様な情報を統合管理できる診療支援システム。患者ごとに情報を統合し,診療シーンに応じて必要な情報を閲覧できる機能や,複数患者の診療情報を一覧表示して,入院患者の状況などを一度に視認できる機能,各種検査レポートの見落としを防ぐ既読管理機能などを搭載し,診療業務の効率化や医療安全の向上を支援。地域の中核病院を中心に約500の医療施設に導入されている。
本AI機能が取り組む課題
病院ではCT検査をはじめ日々多くの検査が実施されている。放射線科医は患者の画像を観察し,病変の有無など画像から読み取れる所見などを主治医や院内の医師に報告するために読影レポートを作成する。また,一部施設では放射線科医は重要所見を含むレポートに目印となる「フラグ」を付けて主治医に注意を促す。主治医はレポートを確認の上,患者への説明や追加検査のオーダー,ほか診療科への情報共有や相談など必要な患者対応を行う。
近年,検査数の増加や医師不足による一人当たりの業務量の増加などを背景に,レポートの見落としによる医療事故が発生しており,多くの病院ではその対策として,レポートが主治医によって確実に読まれたことをシステム上で確認・管理するレポート既読管理システムを導入している。しかし,「主治医がレポートを読む際に,偶発所見(検査中に偶然見つかった,主治医が想定していない所見)を見落とす」「業務の合間にレポートを読んだが,その後の患者対応が漏れる」など,従来の運用だけでは解決できない課題が明らかになっている*1。一部施設では医療安全担当部門が,重要所見ありのフラグがついたレポートを監査し,患者対応が適切に行われたかを確認している(患者対応監査)。しかし,重要フラグがついていないレポートは監査対象外のため,ごく稀に患者対応監査の対象となり得るレポートを取りこぼしてしまうという課題がある。また,患者対応監査では,監査担当者が患者対応の確認が必要な所見を洗い出し,検査実施後に作成された診療録を目視で確認する必要があり,人手不足の中で対応が難しいという課題もある。
*1 厚生労働省 平成30年度地域医療基盤開発推進研究事業「医療安全に資する病院情報システムの機能を普及させるための施策に関する研究」より
現状の患者対応監査業務における課題
本AI機能の特長
今回提供を開始する「患者対応監査支援AI」は,患者対応が適切に行われているかの確認を支援する機能。同社の統合診療支援プラットフォーム「CITA Clinical Finder」のオプションとして,提供する。本機能は,AI技術を活用し,全患者のCT検査レポートの一覧から所見の悪性度や偶発性を踏まえて,重要所見が含まれる可能性の高いレポートを自動的に抽出するとともに,患者説明や追加検査のオーダーなどの患者対応が適切に行われているかを判定。医療監査部門向けに対象レポートと患者対応状況をリストアップ表示(下記図1)する。さらに,患者ごとの画面では,患者対応が適切に行われているかを判定する根拠とした診療録の内容をハイライトして表示する(下記図2)。多くの診療録の中から,対応の妥当性の検証や進捗確認などに必要な情報を選別し,自動表示することで,監査業務の効率化を支援する。
図1 患者一覧画面
図2 患者個別の監査画面イメージ(診療録)
同社は,「患者対応監査支援AI」について,国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科教授の武田理宏氏,特任助教の杉本賢人氏らとの共同研究における成果をもとに,読影レポートに書かれた所見を分析し,緊急性や重要度の高いレポートを抽出する技術およびその後適切な患者対応が行われているかを判定する技術を開発した。さらに,同病院の監査業務において採用されている患者対応の正当性を判定する基準とワークフローを元に,「患者対応監査支援AI」の判定ロジックと直感的なユーザーインターフェースを設計した。
大阪大学医学部附属病院のデータを用いて精度検証を行った結果,レポートを構造化し悪性度を判定する技術は,人が悪性所見を含むと判断したレポートに対して,95%以上の精度で悪性と判定した。
同社は本機能の提供を通じて,医療機関での医療監査の実施および効率化に寄与し,医療安全の向上に貢献する。
大阪大学大学院医学系研究科 情報統合医学講座 医療情報学 教授
大阪大学医学部附属病院 医療情報部 部長 武田 理宏 氏のコメント
患者対応監査は多くの知識やテクニックが求められ,すべての医療機関で気軽に行えるようなものではありません。そうした中で,患者対応漏れによる医療事故を1件でも減らしたいというモチベーションを富士フイルムと共有し,幅広い医療機関で活用できる患者対応監査支援AIの共同研究を行いました。このようなAI技術の研究開発が進むことで,すでに患者対応監査を実施している医療機関では,医療安全のさらなる向上と監査業務担当者の業務負荷軽減が期待できると思います。そして,患者対応監査を実施していない医療機関では,特に医療安全においてより大きな効果が期待できると考えています。
●問い合わせ先
富士フイルム(株)
メディカルシステム事業部
TEL 03-6271-3561
