アボット,心房細動に対するパルスフィールドアブレーション治療システム「Volt™ PFA システム」を発売
効率的なエネルギー伝達によって通電回数を低減し,全身麻酔に依存しない柔軟な麻酔管理下での施術を可能に
2026-11-5
- 「Volt™ PFAシステム」は,薬物治療で十分な効果が得られない発作性心房細動(PAF)※[1]および持続性心房細動(PerAF)※[2]のカテーテル治療に使用する新しいパルスフィールドアブレーション(PFA)システムである。
- 海外で実施されたVOLT-AF IDE試験および VOLT CE Mark試験では,Volt を使用した意識下鎮静または深鎮静下での施術は,全身麻酔での施術と比較して,治療室滞在時間は約18%短縮(平均31.9分短縮),手技時間は約14%短縮(平均16分短縮)された[1]。
- VOLT-AF IDE試験および VOLT CE Mark試験では,PAFおよびPersAFの両患者群において,同システムの安全性および有効性において臨床的に意義のある良好な成績が示された。
アボットメディカルジャパン合同会社(以下「アボット」)は,11月1日に「Volt™ PFAシステム」(以下,Volt)が保険収載され,販売開始したことを発表した。
Voltは薬物治療で十分な効果が得られない発作性心房細動(PAF)※[1]および持続性心房細動(PerAF)※[2]に対するパルスフィールドアブレーション(PFA)治療システムである。同システムは効率的なエネルギー伝達によって,全身麻酔に依存しない柔軟な麻酔管理下での使用可能性が報告されている。これにより多様な臨床的ニーズや患者さん個々の状況に対応するための治療選択肢が広がり,さらに,麻酔科医をはじめとする医療人材の確保が課題となる中,医療現場での効率的な運用が期待される。
心房細動は,不整脈の中でも最も有病率の高い疾患である。国内の心房細動有病者数は100万人以上と推計されており,高齢化に伴い,今後さらに増加することが予測されている[2]。国内のカテーテルアブレーション件数は年間10万件を超え[3],その多くを心房細動治療が占めている。心房細動は動悸や息切れの原因となるだけでなく,ない場合と比べて脳梗塞による入院リスクが約5倍,心不全による入院リスクが約18倍高いことが知られており[4],早期診断と適切な治療介入が重要とされている。
PFAは,異常な心拍リズムの原因となる心筋組織の標的部位に高電圧の電気パルスを照射する新しいアブレーション技術である。従来の高周波(熱)や冷凍エネルギーを用いる治療法とは異なる治療メカニズムにより,周辺組織の影響リスクを抑えながら治療を行えるため,心房細動治療における新たな技術として注目されている。
Voltは新たなPFAシステムとして,柔軟な麻酔管理下での使用可能性が示されている。VOLT-AF IDE試験および VOLT CE Mark試験では,意識下鎮静または深鎮静でVoltを使用した施術において,全身麻酔と比較して急性期の肺静脈隔離術(PVI)成功率および主要安全性イベントに有意な差を認めることなく[1], [5] ,術前準備および術後対応を含む治療室滞在時間が約18%短縮(平均31.9分短縮)[1],カテーテル挿入からアブレーション実施,カテーテルの抜去までの手技時間が約14%短縮(平均16分短縮)[1], [5]されたことが示された。
Voltの特長は以下のとおり:
・効率的なエネルギー伝達:Voltは独自の「Balloon-in-Basket」(バルーン内蔵型バスケット)構造により,標的組織へ効率的かつ均一にエネルギーを伝達する。術者は8本のスプライン(アーム)すべてから同時に通電することも,標的組織に接触しているスプラインのみを選択して通電することも可能である。これにより,血液への不要なエネルギー伝達を抑えながら,少ない通電回数[6]で効率的な治療を実現できるよう設計されている。また,臨床試験では臨床的に問題となる溶血(赤血球の破壊)は認められなかった
・リアルタイム可視化による治療状況の把握:アボットの3Dマッピングシステム「EnSite™ X EPシステム」および心腔内エコー(ICE)カテーテル「ViewFlex™ X ICEカテーテルSE」との連携により,心臓の電気活動,心腔構造,Voltの位置情報,リアルタイムの心腔内エコー画像を単一のプラットフォーム上に統合して表示できる。これにより医師が施術中に治療状況をより的確に把握できるよう支援する
8本のスプラインを備えた独自のバルーン内蔵型バスケット設計
また,米国,欧州,カナダ,オーストラリアの約40施設にて392名を対象に実施されたVOLT-AF IDE試験では,PAFおよびPersAFの両患者群において,Voltの安全性および有効性において臨床的に意義のある良好な成績が示された:
- 術後7日以内に発生したデバイスまたは手技関連の重篤有害事象の発生率は1.9%であった[7]
- 臨床的に問題となる溶血や腎障害は報告されなかった[8],[9],[10]
- 12カ月時点での心房細動,心房粗動,心房頻拍の再発抑制率はPAFで81.1%,PersAFで64.4%,再アブレーション率は5.9%であった[11]
- 患者の自己評価によって生活の質(QOL)を測るAFEQT(Atrial Fibrillation Effect on QualiTy-of-life)スコアは,Voltの施術後,PAF患者で63.6から91.4,PersAF患者で64.2から91.4へと有意な改善を示した
Voltは,2025年3月に欧州でCEマークを取得し,同年12月に米国でFDAの承認を取得,現在約90カ国で使用されている。
日本においては,東京医科大学病院(里見 和浩 医師),榊原記念病院(新田 順一 医師),山梨大学医学部付属病院(黒木 健志 医師),大阪医療センター(井上 耕一 医師),大阪けいさつ病院(南口 仁 医師,神田 貴史 医師)にてVoltを使用したPFAがすでに実施された。
東京医科大学病院の副院長,不整脈センター センター長である里見 和浩 主任教授は次のように述べている。「PFAは2024年に日本に本格導入されて以来,心房細動治療に大きな変革をもたらしてきました。今後,ますます求められていくのは,治療の高い有効性と安全性,そして多様な患者背景や施設環境への適応です。そのような中,Voltは次世代のPFAテクノロジーとして,今後の心房細動治療のさらなる発展に重要な役割を果たしていくものと考えています。Voltは通電する電極を選択できる設計やバルーン内蔵型のバスケット設計を採用しており,標的組織へ効率的かつ安定的にエネルギーを送達できるだけでなく,溶血を抑えられることが示されています。こうした特長が,治療成績に妥協することなく,患者さんの負担軽減や安全性の向上につながることを大いに期待しています。」
アボットのエレクトロフィジオロジー(EP)事業のシニアバイスプレジデントのウリ・ヤロン氏は,次のように述べている。「Volt PFAシステムは,良好な安全性プロファイルを有しており,市販後調査を通じた複数のデータソースから得られた実臨床におけるVoltの安全性および有効性に関するデータは,臨床試験結果と一貫しています。現在得られているエビデンスを踏まえると,Voltの安全性プロファイルは,日本の心房細動治療に携わる先生方のニーズに十分応え得るものと考えています。」
また,アボットメディカルジャパン合同会社の代表執行役員社長で,EP事業部長を務めるレイチェル・トレース氏は次のように述べている。「Volt PFAシステムを日本の先生方や患者様にお届けできることを,心より嬉しく思います。独自のバルーン内蔵型バスケット設計を採用したVoltは,不整脈専門医とその患者様にとって価値ある新たな治療選択肢になるものと考えています。Voltは,シンプルな操作性,手技の効率性,安定した治療成果への高まるニーズに応えるべく開発され,先生方がより多くの患者様に安全に治療を行えるよう支援します。さらに,EnSite X EPシステムやViewFlex X ICEカテーテルSEを含むアボットの電気生理学領域の製品ポートフォリオとシームレスに連携することで,精度の高い手技を支援します。当社は,Voltのような革新的な技術の提供を通じて,心房細動の患者様に最善の治療成果をもたらす一助となるよう,今後も努めてまいります。」
※[1] 発症後7日以内に正常な心拍に戻る心房細動
※[2] 7日を超えて持続する心房細動
販売名:Volt PFAカテーテルSE
承認番号:30800BZX00238000
販売名:Current PFAジェネレータ
承認番号:30800BZX00237000
不整脈と心房細動について
心臓は電気信号を発生させ,その信号が心臓全体の筋肉に伝わることで規則的な収縮を繰り返し,全身に血液を送り出している。不整脈は,この電気信号が正常に伝わらないことで心臓のリズムが乱れ,心臓から送り出される血液の量が不足する状態である。重症化すると心不全などを引き起こし,最悪の場合は死に至ることもある。
不整脈は心拍が遅くなる「徐脈性」と早くなる「頻脈性」に大別される。その中で最も多いのが,頻脈性不整脈の「心房細動」である。心房細動は,心房から不規則な電気信号が発生し,心房全体がけいれんしたような状態になる。
心房細動が起こると心臓の機能が低下するとともに,心臓内に血栓(血のかたまり)ができやすくなる。この血栓が脳に運ばれると,心原性脳塞栓症を引き起こす。
VOLT-AF IDE試験について
VOLT-AF IDE試験は,症候性で薬物治療抵抗性の発作性心房細動(PAF)または持続性心房細動(PersAF)患者を対象に,Volt™ PFAシステムの安全性および有効性を評価するために実施された前向き多施設共同単群試験である。米国,欧州,カナダ,オーストラリアの約40施設において392名の患者を対象に実施された。
主要安全性評価項目は,アブレーション施術後7日以内に発生したデバイスまたは手技に関連する重篤有害事象の発生率で,主要有効性評価項目は,12カ月時点における心房細動・心房粗動・心房頻拍の再発が認められず,かつ抗不整脈薬の新規投与または増量を要しない患者の割合であった。
試験の結果,主要安全性評価項目である施術後7日以内の重篤有害事象の発生率は1.9%[7]で,12カ月時点の不整脈再発抑制率はPAFで81.1%,PersAFで64.4%を示した[11]。また,再アブレーション率は5.9%であった[11]。
さらに,意識下鎮静または深鎮静下で施術を受けた患者では,全身麻酔と比較して急性期の肺静脈隔離術(PVI)成功率および主要安全性イベントに有意な差を認めることなく,治療室滞在時間が約18%短縮[1],手技時間が約14%短縮[1],[5]された。
VOLT CE Mark試験について
VOLT CE Mark試験は,心房細動患者を対象にVolt™PFAシステムの安全性,有効性および手技成績を評価するために欧州およびオーストラリアで実施された前向き多施設共同試験である。本試験では,同システムの臨床安全性と成績に加え,意識下鎮静または深鎮静下での施術の実現可能性や手技効率に関する知見が示された。
[1] Lo, M., et al. (2025, April 26). Procedural efficiency, safety and acute effectiveness of conscious and deep sedation workflows with novel balloon-based PFA system [Poster presentation]. Heart Rhythm Society 2025, San Diego, CA.
[2] Ohsawa M et al. J Epidemol. 2005; 15(5): 194-196
[3] The Japanese Catheter Ablation Registry (J‐AB): Annual Report in 2023
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/joa3.70173
[4] Screening-Detected Atrial Fibrillation and Cardiovascular Outcomes in Working-Age Adults(働く世代における健診で発見された心房細動と心血管疾患リスクの関連)
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2025-10/web_2510_Fukuma-43411b8034719a78c4c0321fd2841fa9.pdf
[5] Acute safety and procedural characteristics of conscious and deep sedation to general anesthesia workflows with novel balloon-based PFA system (Oral presentation and abstract by Roland Tilz, EHRA 2025).
[6] Tilz, R.R. (2025, January 17) Acute results demonstrate safety and effectiveness of balloon-based pulsed field ablation system for de novo PVI in PAF and PersAF [Late Breaking Presentation]. AF Symposium 2025, Boston MA, USA.
[7] Late Breaker presentation at APHRS 2025. Safety and Effectiveness of a Novel Balloon-Based PFA System to Treat PAF and PersAF: 6-Month Results of the VOLT-AF IDE Study (Sanders, et al).
[8] Marcon L, Della Rocca DG, Vetta G, et al. Hemolysis Biomarkers After Pulmonary Vein Isolation via a Balloon-In-Basket PFA Catheter. Circulation. Online Version of Record before inclusion in an issue. doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.124.070333.
[9] Overmann JA, Marques M, Lafean C, Pipenhagen C, Moon BL, Verma A. Hemolysis Profile of a Novel Balloon-Filled Basket Pulsed Field Ablation Catheter. Poster presented at: AF Symposium 2025; 2025 Jan 15-17; Boston, MA.
[10] Woods, C., et al. (2025, April 26). Impact of pulsed field ablation using a balloon-in-basket catheter on hemolysis and renal function biomarkers [Poster presentation]. Heart Rhythm Society 2025, San Diego, CA.
[11] Verma, A., et al. (2026, February 5) 12-Month Safety and Effectiveness of a balloon-in-basket PFA system for de novo PVI to treat PAF and PersAF: Results from the VOLT-AF IDE Study [Late Breaking Presentation]. AF Symposium 2026, Boston MA, USA.
●問い合わせ先
アボットメディカルジャパン合同会社
https://www.abbott.co.jp/
