オリンパス,福島県・国際的先端医療機器開発実証事業費補助金を受けロボット技術を用いた2つの治療支援機器を開発

2015-6-3

オリンパス


消化器内視鏡治療支援システム(左:全体、右:内視鏡先端部)消化器内視鏡治療支援システム(全体)

消化器内視鏡治療支援システム(全体)

オリンパス(株)は,福島県の「国際的先端医療機器開発実証事業費補助金」の支援を受け,「多関節軟性手術支援ロボティックシステム」の開発を行い,2つの試作機(非臨床用)を完成させた。

がんなどの治療においては,口や肛門から消化器内視鏡を挿入して病変部を切り取る治療や,腹部に開けた数ヶ所の穴から腹腔鏡と専用器具を挿入して行う手術がある。これらの治療は,開腹しないため術後の痛み軽減や早期回復などの効果が期待でき,広く採用されるようになってきている。この患者さんの負担が少ない低侵襲治療のさらなる普及・発展に向けて新たな機器の開発が求められている。

本開発では,2012年度から2014年度まで福島県から震災復興を目的とした支援を受け,「消化器内視鏡治療支援システム」と,「電動多自由度腹腔鏡」の試作を行った。

今後は,福島県内に立地する同社の医療機器製造拠点を活用し,試作した治療支援機器の製品化を目指し,福島県の復興とさらなる低侵襲治療の普及・発展に貢献していく。

なお,本成果は,2015年6月3日に行われる医療関連産業集積プロジェクト研究開発補助金成果報告会(主催:福島県)で発表される。

※ 「国際的先端医療機器開発実証事業費補助金」とは,東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故からの福島県の復興を大きな目的とし,福島県の医療福祉機器関連産業の集積をさらに促進し,雇用の確保を目指すために,開発困難な先端医療機器(手術支援ロボット等)についての研究開発ならびに実証試験に取り組む事業者を福島県が支援する制度。同社は,福島県からこの補助を受け,本開発を推進してきた。研究の一部は東京大学大学院工学系研究科 佐久間一郎教授に委託した。

●開発成果の詳細

試作機1:消化器内視鏡治療支援システム
先端に複数の関節を持つ2本の多関節処置具を消化器内視鏡に組み合わせ,この多関節処置具を自在に操作できるようにした治療支援システム
本システムは,消化器内視鏡と,処置操作を行う多関節処置具,これらを内部に導入するためのオーバーチューブ,多関節処置具を操作するためのコンソール(操作台)から構成される。このシステムではコンソールに設けたモニターで内視鏡画像を見ながら,入力装置を操作することで複数の関節を動かすことができる。
このシステムは,例えば,大腸などの消化管内からがんなどの病変部を切り取る処置のひとつである内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD※1)への適用が期待される。この治療では現在,医師は内視鏡の先端から出ている処置具を内視鏡ごと動かして病変部を切り取っていく。今回の試作機では,医師は消化器内視鏡で捉えた画像をモニターで見ながら,2本の多関節処置具を同時に自在に操作できるため,ESDの処置操作が容易に実施できるようになることが期待される。さらに,消化管内から行う治療のさらなる普及・発展に貢献できる可能性がある。

※1 「ESD」はEndoscopic Submucosal Dissectionの略で,消化管の粘膜層にとどまる早期がんなどの病変の治療のために,粘膜下層を切開・剥離する手技のこと。

消化器内視鏡治療支援システム(内視鏡先端部)

消化器内視鏡治療支援システム(内視鏡先端部)

 

試作機2:電動多自由度腹腔鏡
電動制御により,医師が見たい部位を視野内に捉え続ける機能を搭載した腹腔鏡
腹腔鏡手術では,一般的に,処置操作をする医師が見たい部位を,腹腔鏡操作をする別の医師が予測して映像を捉える必要がある。そのため医師間の極めて高度な連携を必要とする。
電動多自由度腹腔鏡は,先端部分に設けた湾曲構造を電動制御することにより,対象部位を捉え続けることができる(ロックオン機能)。この機能を用いることで,術者が見たい場所を頻繁に調整する手間を省き,医師間の連携をサポートする。これにより医師のストレスの軽減及び手術の効率化に貢献することが期待できる。

電動多自由度腹腔鏡

電動多自由度腹腔鏡

 

なお,今回完成した2つの試作機は,いずれも研究開発段階の非臨床用。医薬品医療機器等法未承認品のため,販売,授与できない。

 

●問い合わせ先
オリンパス(株)
広報・IR部
TEL 03-3340-2135
http://www.olympus.co.jp/

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