「スマート治療室」のスタンダードモデルが臨床研究開始
〜IoTを活用した手術室内医療機器の接続と手術室外連携を信州大学医学部附属病院で実証〜

2018-7-9

富士フイルムヘルスケア


現状,手術室等の現場では多種多様な医療機器・設備から発生する膨大な情報を医師やスタッフが限られた時間内に判断しつつ治療を行っている。国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED,理事長 末松 誠)は,こうした治療の現場においてIoTを活用して各種医療機器・設備を接続・連携させることで,手術の進行や患者さんの状況などの情報を瞬時に時系列をそろえて整理統合し,医師やスタッフ間で共有できる「スマート治療室」の開発を世界に先駆けて進めている。

本プロジェクトは東京女子医科大学(先端生命医科学研究所 村垣善浩教授,岡本淳特任講師他)が統括し,国内外の産業界で普及しているミドルウエアORiN(Open Resource interface for the Network)をコア技術とした汎用性の高い治療室用インターフェースOPeLiNK®をデンソーが中心となって開発し,日立製作所のオープンMRI等の手術室内医療機器・設備を接続している。2016年に「ベーシックモデル」を広島大学病院,「ハイパーモデル(プロトタイプ )」を東京女子医科大学に設置し,機器のパッケージ化や新規アプリケーション等の開発を進めてきた。

今回,2019年度事業化を目指して,OPeLiNK®を備えた「スタンダードモデル」手術室が信州大学病院(脳神経外科 本郷一博教授,後藤哲哉講師他)の包括先進医療棟内に完成した。各種医療情報を「時系列の治療記録」として収集・提供(表示)し,手術室外の医師・技師等にも共有することにより,治療の効率性や安全性の向上が期待される。これらを検証するための脳腫瘍に関する臨床研究を本月より開始する。スマート治療室の情報は将来的にはビッグデータとしての解析も可能で,保守・管理の面でも,機器操作ミスの防止や機器故障の未然検知,コスト管理(稼働時間の短縮)に大きなメリットをもたらす。

「スタンダードモデル」は2019年度内の事業化を目指しており,スマート治療室の輸出等を通して日本の新たな産業基盤となることが期待される。パッケージとしての手術室の販売は日立製作所等が担当する。また,今年度末に臨床研究可能な「ハイパーモデル」を東京女子医科大学に設置し,ロボットベッド,新規精密誘導治療等の新しい技術を2020年度以降,適宜リリースしていく。本プロジェクトは,治療室の情報インフラとしてオープンな開発環境を提供するOPeLiNK®を活用して,スマート治療室の普及を促進していく。

信州大学のスマート治療室(スタンダードモデル)

 

スマート治療室OPeLiNK概念図

スマート治療室OPeLiNK®概念図

 

各スマート治療室各モデルの位置づけ

モデル   ベーシック   スタンダード   ハイパー
設置場所(年)   広島大学(2016)   信州大学(2017-18)   東京女子医科大学(プロトタイプ:2016 病院:2019)
機能   術中MRIを中心とした国産医療機器を情報統合可能な形にパッケージ化したもの。   臨床利用可能なレベルのOPeLiNK®が導入されたスマート治療室。手術室のほぼ全ての機器がネットワークで接続されている。   左記に加え,新規開発のロボットベッド等のロボット化,情報のAI化を目指し,高密度集束超音波等の新規精密誘導治療の検討を行う。
位置づけ   スタンダードモデル向けにOPeLiNK®ネットワークの研究開発を実施。広島大学では,脳外科以外の整形外科等へも展開中。   2018年7月より脳外科にて臨床研究開始。情報統合による手術の効率性・安全性を実証する。   今年度末に東京女子医大に臨床研究可能な手術室を設置し,2019年度事業化のスタンダードモデルに新たな技術を導入していく。

 

スマート治療室プロジェクト参画企業一覧

大学等   東京女子医科大学,信州大学,広島大学,東北大学,鳥取大学
企業等   (株)デンソー,日本光電工業(株),ミズホ(株),パイオニア(株),キヤノンメディカルシステムズ(株),(株)日立製作所,(株)セントラルユニ,グリーンホスピタルサプライ(株),エア・ウォーター(株),エア・ウォーター防災(株),SOLIZE(株)

 

●技術に関する問い合わせ先
日本医療研究開発機構 産学連携部医療機器研究課
(未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業)
TEL 03-6870-2213 FAX 03-6870-2242
E-mail:miraiiryou@amed.go.jp
http://www.amed.go.jp/

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