ITEM2023 バイエル薬品 ブースレポート 
“Be the solution Provider”をテーマにAIプラットフォーム・ソフトウェアやインジェクタの最新ソリューションを提案


2023-5-1


バイエル薬品ブース

バイエル薬品ブース

バイエル薬品は,“Be the solution Provider”をテーマに掲げ,AIプラットフォーム・ソフトウェアやインジェクタなど,医療現場の効率化と生産性向上につながるソリューションを展示した。ブースは,大きく2つに分けて構成。AIプラットフォーム・ソフトウエア,被ばく線量管理システムを紹介する“Digital Solutions”と,造影剤自動注入装置(インジェクタ)をメインにした“Radiology Solutions”で,来場者に課題解決のための製品・技術をアピールした。

特に近年強化しているAIプラットフォーム・ソフトウェアについては,ITEM 2023直前に矢継ぎ早にリリースを出している。4月10日にはGd-EOB-DTPA(EOB・プリモビスト)造影MRIの診断を支援するソフトウェア「Cal.Liver.Lesion」,13日には画像診断支援AIプラットフォーム「Calanticデジタルソリューション」を発表した。Digital Solutionsのエリアでは,これらに加えて,以前から展開している胸部CT画像のAIソフトウェア「Plus.Lung.Nodule」(プラスマン社),2014年の発売以降,高評価を得ている線量管理システム「Radimetrics」のデモンストレーションを行った。

一方,Radiology Solutionsでは,新製品として,デュアルシリンジを採用した循環器血管撮影用インジェクタ「Arcatena」を展示。また,24時間連続使用が可能な専用デイセットにより造影剤の装填作業の効率化と廃棄を削減するCT用インジェクタ「Centargo」などを紹介していた。

●クラウドでAIソフトウェアによる解析を提供するCalanticデジタルソリューション

ITEM 2023に合わせる形で発表したCalanticデジタルソリューションは,米国Blackford Analysis社の技術をベースに,目的・用途に応じてAIソフトウェアで解析を行うためのクラウド型のプラットフォーム。多数の企業のAIソフトウェアを,プラットフォーム上でまとめて提供する。使用するAIソフトウェアの追加も容易に行える。ユーザーは,専用の「Calanticビューア」から解析結果を参照する。多数のAIソフトウェアをCalanticビューアで確認できるため,個々の専用ビューワを起動することなく,効率的な読影が可能となる。また,あらかじめ条件を設定しておくことで,撮影後にクラウドのプラットフォームへデータが自動で送信されて解析処理が行われるようになり,省力化を図れる。

Calanticデジタルソリューションのワークフローは次のとおりである。まず,CTやMRIなどの画像診断装置で撮影した画像がPACSに保管され,そこからCalanticエッジサーバを介して,解析したいデータがCalanticクラウドプラットフォームに送信される。プラットフォーム上のAIソフトウェアでの解析が行われ,結果はCalanticエッジサーバを経由して,Calanticビューアで確認後,PACSに保管される。これにより,日常診療で大量に発生する画像を効率的に読影することが可能となり,読影医の生産性を向上し,働き方改革にも寄与する。ITEM 2023の時点で,Calanticデジタルソリューションで利用可能なアプリケーションは未定で,今後ラインアップを増やしていくことにしている。

AIソフトウェアのプラットフォームとして提供される「Calanticデジタルソリューション」

AIソフトウェアのプラットフォームとして提供される「Calanticデジタルソリューション」

 

AIソフトウェアの解析結果を参照するための「Calanticビューア」

AIソフトウェアの解析結果を参照するための「Calanticビューア」

 

●腹部造影MRIで肝臓領域の信号値の異なる範囲をカラーマップ表示するCal.Liver.LesionなどAIソフトウェアを紹介

Calanticデジタルソリューションはクラウドベースであるが,一方でバイエル薬品ではAI技術を用いたオンプレミス型のソフトウェアを提供している。4月10日に発表したCal.Liver.Lesionは,EOB・プリモビスト造影MRIの画像から肝臓領域で信号値の異なる範囲をカラーマップで表示して読影を支援する。ワークフローは,MRIの撮像データがPACSに送信されるのと並行してCal.Liver.Lesionに送られ,解析処理が実行される。結果はPACSに送信,保管され,読影の際には,PACSビューアでMR画像と解析結果を表示させる。MRIによる肝がんの診断では,造影前から造影中の経時的な変化を撮像するため,読影医は大量の画像を読影することになり時間を要していた。そこで,Cal.Liver.Lesionでは,信号値の異なる範囲を0.0〜1.0で表し,0.5以上の値の箇所をカラー(0.5:青〜1.0:赤)でわかりやすく表示。効率的かつ精度の高い読影に寄与する。Cal.Liver.Lesionは,バイエル薬品が革新的なデジタル技術を持つ企業を支援する「G4A Tokyo Dealmaker2019」において,助成プログラムに採択されたHACARUS社と共同開発された。HACARUS社は,神戸大学大学院医学研究科放射線診断学分野が共同研究契約を締結し,開発に取り組んだ。

肝臓領域における造影MRIの読影を支援するAIソフトウェア「Cal.Liver.Lesion」

肝臓領域における造影MRIの読影を支援するAIソフトウェア「Cal.Liver.Lesion」

 

「Cal.Liver.Lesion」は信号値の異なる範囲をカラーマップで表示

「Cal.Liver.Lesion」は信号値の異なる範囲をカラーマップで表示

 

Plus.Lung.Noduleもオンプレミス型のAIソフトウェアである。胸部CT画像から2〜30mmの円形,紡錘形,辺縁不正なCT値上昇領域を関心領域としてマーキング。結節影などの視認性を高める。すりガラス影など不明瞭な結節も検出するほか,非造影CTでリンパ節の視認性が不十分な場合も関心領域を示す。長径,短径,平均径,面積,体積,結節を三次元楕円体近似した際の主軸3軸の長さを自動計測できるほか,過去画像と今回画像にある結節の同定も可能である。また,造影・非造影,肺野条件・縦隔条件のいずれにも適用可能である。データ解析のフローとしては,PACSの画像を解析用PCに送ると,結果がPACSに保管される。ユーザーは,普段使用しているPACSビューアで解析結果を参照できる。今回のITEMでは,新たに追加機能として,「Plus.CXR」を紹介した。Plus.CXRは,胸部単純X線画像からX線吸収値の高い範囲を関心領域としてマーキングする。また,心肥大などの診断基準となる心胸郭比(cardio-thoracic ratio:CTR)も計測を行える。Plus.CXRはPlus.Lung.Noduleの解析用PCに追加導入できるだけでなく,単独の解析用PCにインストールして使用することも可能だ。

CT値が上昇した箇所を関心領域としてマーキングする「Plus.Lung.Nodule」

CT値が上昇した箇所を関心領域としてマーキングする「Plus.Lung.Nodule」

 

「Plus.Lung.Nodule」には「Plus.CXR」(左)を追加可能

「Plus.Lung.Nodule」には「Plus.CXR」(左)を追加可能

 

●インジェクタと連携し造影検査にも対応するRadimetrics

線量管理システムのRadimetricsは,CTなどの画像診断装置から線量情報を取得し,統合管理する。被検者ごとの累積線量や検査ごとの照射線量などを管理・記録できるほか,バイエル薬品のインジェクタとの連携による「造影検査管理機能」を搭載。注入条件や開始・終了時間,操作者,最大注入圧・流量などのデータをインジェクタから取得する。また,照射範囲などを変更した場合の線量シミュレーションも可能である。線量データは,PACSやRIS,電子カルテとも連携し,施設全体での円滑な情報共有を支援する。
以前からモンテカルロシミュレーションを用いたCTの実効線量の算出が可能であったが,最新バージョンでは換算係数による血管撮影装置,X線TVシステム,一般撮影装置,乳房撮影装置の実効線量を出せるようになった。

「Radimetrics」は「造影検査管理機能」を搭載し,“Total Dose Management”が可能

「Radimetrics」は「造影検査管理機能」を搭載し,“Total Dose Management”が可能

 

2014年の発売以降,進化を続ける「Radimetrics」

2014年の発売以降,進化を続ける「Radimetrics」

 

●デュアルシリンジ採用のArcatenaや経済性・効率性に優れるCentargoなどのインジェクタラインアップを披露

Radiology Solutionsのエリアでは,画像診断装置別に豊富なインジェクタのラインアップが展示された。その中でもブースの前面で展示されたのが,循環器血管撮影用インジェクタのArcatenaである。2022年のITEMでも紹介され,2023年から販売が開始された新製品で,循環器血管撮影用のインジェクタとしては国内初のデュアルシリンジを採用している。造影剤と生理食塩液の同時注入が可能で,独自設計の「Spiral Flow Tube」により造影剤と生理食塩液を効率的に混和して,造影剤量の低減も図れる。操作はタッチパネルで行うほか,Bluetooth接続の専用コントローラで60段階の速度制御により注入量を微調整することが可能で,ワイヤレス化して術者の操作に自由度を持たせ,取り回しに優れているのも特長だ。さらに,独自構造により専用シリンジやチューブの着脱も容易で,セットアップ作業の効率化も図れる。大学病院をはじめとしたハイボリュームセンターでの使用を想定しているという。

循環器血管撮影用インジェクタの新製品「Arcatena」

循環器血管撮影用インジェクタの新製品「Arcatena」

 

循環器血管撮影用としては国内初のデュアルシリンジを採用

循環器血管撮影用としては国内初のデュアルシリンジを採用

 

取り回しの良い「Arcatena」のワイヤレスコントローラ

取り回しの良い「Arcatena」のワイヤレスコントローラ

 

CT用インジェクタで関心を集めたのが,24時間連続使用が可能なCentargoだ。専用のデイセットを装着し,取り替え用のスパイクを併用することで,造影剤や生理食塩水を補充して24時間連続で使える。これにより,造影剤の廃棄を減らし消耗品の削減も図れ,装着作業などの負担軽減にもつながる。本体上部にあるボトルホルダーには,造影剤ボトル2本,生理食塩液バッグを装填でき,ラインを介してデイセットに送られる。このラインには,2か所にエア混入を検知するセンサ(インレットエアセンサとアウトレットセンサ)があり,安全に注入を行うことが可能だ。また,被検者へのラインは装着と脱着を簡単に行え,気泡を自動除去する。操作は,本体のタッチパネルを用いて被検者の横で確認しながら行えるほか,操作室の「コントロールルームユニット」でもできる。プロトコールの設定・登録,注入データの自動保存の機能もあり,またRadimetricsとの連携も可能。質の高い造影検査の安全・確実な実施に寄与する。

CT用インジェクタ「Centargo」のスキャンルームユニット(左)とコントロールルームユニット(右)

CT用インジェクタ「Centargo」のスキャンルームユニット(左)とコントロールルームユニット(右)

 

専用のデイセットにより24時間連続使用が可能

専用のデイセットにより24時間連続使用が可能

 

被検者へのラインの装着と脱着は片手で行え,ライトのカラーによってエラーがないかを直感的に把握可能

被検者へのラインの装着と脱着は片手で行え,ライトのカラーによってエラーがないかを直感的に把握可能

 

●お問い合わせ先
社名:バイエル薬品株式会社
住所:〒530-0001大阪市北区梅田2-4-9 ブリーゼタワー
Mail:BYL-RAD-CS@bayer.com
URL:https://radiology.bayer.jp/


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