ITEM2026 キヤノンメディカルシステムズ ブースレポート
国産初のフォトンカウンティングCT「Ultimion」など最新ソリューションとAIの活用で臨床・運用・経営の課題解決をめざす
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2026-4-27
キヤノンメディカルシステムズブース
キヤノンメディカルシステムズは,「Meaningful innovation. Made possible.」をテーマに掲げ,展示会場内最大となる1300m2のブースを出展した。ブース中央には「Abierto」にブランドを統合したヘルスケアITのエリアを置き,それを取り巻くようにCTやMRI,X線装置,超音波装置などを配置。ヘルスケアITがハブとなって各モダリティをつなぎ,さらにAIソリューションブランド「Altivity」の下に結集したAI技術を活用することで,医療の質の向上,オペレーションの最適化,経営改善を加速させるというコンセプトを表現した。
ITEM初日にはアンベールイベントを行い,国産初のフォトンカウンティングCT「Ultimion」が発表され,新たに代表取締役社長に就任した堀 雄彦氏が挨拶に立った。4月1日よりキヤノンメディカルシステムズの日本国内の販売,修理および保守を除くすべての事業をキヤノンが承継しており,両社の一体化により高収益と高成長の実現をめざしていく。堀社長は,キヤノンとのシナジーを高めながら画像診断事業を推進していくと述べ,「これまでと同様に医療現場に最も近い立場から,製品,サービスの価値を国内の顧客に確実に届ける役割を果たしていく」と,これまで築き上げてきたユーザーとのパートナーシップを礎に医療に貢献していくとの抱負を語った。
また,瀧口登志夫代表取締役会長(キヤノン副社長執行役員メディカルグループ管掌)が記者の囲み取材に対応した。その中で瀧口会長は,国産初のフォトンカウンティングCTの上市について触れ,「これまで培ってきたCTの要素技術を究極の形で組み込んだUltimionでは,物質弁別が可能な“五次元目”と言えるデータを提供できるようになった。製品化により,そのデータがどのような臨床的意義を持つかの研究が加速することを期待している」と述べた。
展示ではUltimionや3T MRIのフラッグシップモデル「Vantage Centurian / Precious Edition」,ADCTと組み合わせたアンギオCT,画像診断装置のデータ管理ソリューション「FlexSync」など新製品を中心に,臨床・運用・経営の課題を解決する最新ソリューションを披露した。
堀 雄彦代表取締役社長が挨拶
瀧口登志夫 代表取締役会長と「Ultimion」
●CT:国産初のフォトンカウンティングCT「Ultimion」を発表
●ヘルスケアIT:国内向け製品を「Abierto」ブランドに統合し,「Abierto Vision」にはUltimionのスペクトラル解析を可能にする機能が登場
●MRI:MRIの課題を克服する3Tフラッグシップモデル「Vantage Centurian / Precious Edition」をアピール
●X線:アンギオCTや骨密度測定オプションなど,医療現場のニーズに応える製品・機能を紹介
●サービス:院内モダリティの一元管理で業務負担を軽減する「FlexSync」
●超音波:「SMI Angio mode」により微細・低流速な血流をより明瞭に描出
●Sustainable Solutions:製品のライフサイクルを通じて環境負荷の低減をめざす取り組みを紹介
●CT:国産初のフォトンカウンティングCT「Ultimion」を発表
遂に国産初のフォトンカウンティングCT「Ultimion」が発表され,ITEMでその姿がお披露目された。Ultimionという名称は,究極を意味する「ultimate」と,これまでのブランド名「Aquilion」でなじみの深い「-ion」の接尾語を組み合わせもので,長年のCT開発で培ってきた要素技術をふんだんに組み込んだ,まさに究極のCT装置だ。特長の一つが,キヤノン傘下で半導体検出器モジュールの開発・製造において世界トップクラスの技術を有するレドレン・テクノロジーズ社の結晶製造/加工技術を生かした,テルル化亜鉛カドミウム(CZT)を用いたフォトンカウンティング検出器「PhotonClarity」である。CZTの特性として,亜鉛(Zn)添加による高原子番号・高密度による高いX線検出効率,そして高抵抗率と適切なバンドギャップによる電気的安定性があり,低ノイズ,低線量撮影に貢献する。PhotonClarity検出器は,0.2 mm×192列の撮影スライス幅(Z軸方向カバレッジ:約4cm),最短スキャン時間は0.24秒で,4 binのエネルギー弁別収集が可能となっている。Ultimionのために新たに開発されたX線管球は,X線制御技術「CoolNovus Micro」により最小0.4×0.5 mmの小焦点を実現しており,大幅に空間分解能を向上させた。
また,Aquilionなどの開発で培ってきた技術も融合し,画像再構成ではDeep Learning Reconstruction(DLR)の「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」を通常画像,高分解能画像,スペクトラル画像に適用できる。さらに,自動化技術「INSTINX」の採用や大容量データ転送技術,医用画像解析3Dワークステーション「Abierto Vision」との連携などにより,効率的な検査ワークフローを実現する。ハードウエアとしては,開口径800 mmのワイドボアガントリを有し,チラーレスの空冷方式を採用,標準的電源容量で稼働することから,従来CTの検査室に柔軟に設置することができる。
3月よりUltimionを用いた臨床研究を国立がん研究センター東病院,国立がん研究センター先端医療開発センターと共同で開始しており,ブースではファントム画像による物理特性評価画像や臨床画像も展示された。腹部や下肢動脈,高BMI症例での胆管ステント,嗅神経芽細胞腫などの症例画像を紹介し,高分解能,低ノイズの画像取得が可能なことを紹介した。
国産初のフォトンカウンティングCT「Ultimion」
フォトンカウンティング検出器「PhotonClarity」を展示
高精細CT「Aquilion Precision」(上)と比べても高いZ軸解像度特性を有するUltimion(下)
遊離腓骨弁移植術前のCTAによる腓骨動脈の走行確認では,腓骨動脈だけでなく足底動脈末梢まで描出
また,昨年のITEM 2025で会場の話題をさらったマルチポジションCT「Aquilion Rise」も展示された。可動式の片持ちガントリにより1台で臥位・立位・座位の撮影が可能で,従来の臥位撮影では画像化できなかった病態を明らかにすることができ,健康寿命延伸をめざす社会に新たな価値を提供する。臥位撮影では従来通り寝台が動作して撮影するが,立位・座位撮影ではガントリ側が動作することから,赤外線センサーを用いた自動停止機構も備え安全性を担保している。また,立位・座位撮影時にはガントリが上がった状態で患者が入ってポジショニングを行うため,ガントリがチルトすることでスムーズな導線と速やかなアクセス性を確保し,自動化技術INSTINXも活用することで,検査スループットの向上も追究されている。
ガントリチルト機構を備えたマルチポジションCT「Aquilion Rise」
立位では重力負荷により下肢静脈が拡張する様子を観察でき,末梢静脈の可視化も可能
●ヘルスケアIT:国内向け製品を「Abierto」ブランドに統合し,「Abierto Vision」にはUltimionのスペクトラル解析を可能にする機能が登場
ヘルスケアITエリアでは,国内向けのヘルスケアIT製品を「Abierto」ブランドに統合したことを大きくアピールした。これまで「Rapideye」ブランドで展開してきたPACSやRIS,RIS RTもAbiertoのブランド名を冠した名称に変更される。診療や業務の高度化・複雑化が進む中,情報をつなぎ,診療業務プロセス全体を支援することで,医療現場の課題解決をめざす。
ブースでは,医用画像解析3Dワークステーション「Abierto Vision」や読影支援ソリューション「Abierto Reading Support Solution(Abierto RSS)」,医療情報統合ビューア「Abierto Cockpit」,「Abierto PACS」など多様なAbiertoシリーズのラインアップが展示された。このうち,AIを活用した自動化技術や多彩な解析アプリケーションで画像解析ワークフローを支援するAbierto Visionは,Ultimionの発売に合わせて「Spectral Viewer」が新たにリリースされた。Spectral Viewerは,基準物質データから仮想単色X線画像やヨードマップを作成し,1画面で撮影画像とあわせて参照することができるもので,診療放射線技師がワークステーションとして,また放射線科医が読影ビューワとして活用できる。過去画像との比較やVR画像に加え,ヨードマップ,任意keV画像などのスペクトラル画像を一覧でき,より多くの情報を閲覧しながらの効率的な読影を支援する。Abierto Vision の特長である直感的な操作性がSpectral Viewerにも生かされており,keV変更はスロープの傾きをグラフで確認しながらスライダーバーで容易に調整が可能である。調整結果の画像がリアルタイムに表示されることから,読影に適した任意のkeV画像を医師自身で得ることができる。
「Abierto」ブランドへの統合をアピール
Ultimionの発売に合わせてリリースされた「Abierto Vision」の「Spectral Viewer」
●MRI:MRIの課題を克服する3Tフラッグシップモデル「Vantage Centurian / Precious Edition」をアピール
MRIエリアでは,新製品の3Tフラッグシップモデル「Vantage Centurian / Precious Edition」と,1.5Tの「Vantage Fortian」が展示された。3月に発売された新製品のVantage Centurian / Precious Editionは,ハードウエアとソフトウエアをブラッシュアップし,高精細と撮像時間のトレードオフ,体動の影響,DWI特有のノイズといった従来のMRIの課題の克服に挑戦した最新MRIだ。ソフトウェアは「Ver.12」にバージョンアップし,多彩なAIソリューションに対応可能で,ハードウエア面では高い磁場均一性を実現した自社開発のマグネットを搭載している。超解像画像再構成技術「Precise IQ Engine (PIQE)」の適用が3Dシーケンスや2D CSシーケンスへと拡大し,さまざまなケースで高SNR・高分解能な画像を取得できるようになった。また,「Breath Resistant Dynamic」は,DLRの活用により自然呼吸下で高精細な腹部ダイナミック画像を撮像できる。息止めが困難な患者でもアーチファクトを抑制した画像を取得できることに加え,動脈相を自動抽出可能で検査担当者の負担を軽減する。同じくDLRを活用した「Complex Signal Average DWI」は,MRIの大きな課題の一つであったDWI特有のノイズを低減し,コントラスト向上を実現している。位相補正画像を用いた加算やADC計測精度の改善により,背景ノイズを抑制し,より真値に近い値を計測でき,高b値や薄いスライスの画像でも,従来よりも大幅な画質改善を可能にする。
3Tフラッグシップモデル「Vantage Centurian / Precious Edition」
ソフトウエア「Ver.12」ではPIQEが3Dシーケンスにも適用拡大
DWI特有のノイズを低減する「Complex Signal Average DWI」
●X線:アンギオCTや骨密度測定オプションなど,医療現場のニーズに応える製品・機能を紹介
X線システムでは,アンギオCTやX線TV,一般撮影装置などを展示し,新機能を中心にアピールした。
アンギオCTでは,血管撮影装置「Alphenix Sky+」とADCT「Aquilion ONE」を組み合わせたタイプが展示され,来場者が操作性を体験した。Alphenix Sky+は,天井走行式ダブルスライドCアームにより幅広い可動域を確保したアンギオ装置で,ITEM 2025では90cmの大開口80列マルチスライスCT「Aquilion Exceed LB」との組み合わせを発表していたが,今回は最新ADCTと組み合わせ,ラインアップを拡充した形だ。CTは超解像画像再構成技術PIQEやAiCE,体動補正技術「CLEAR Motion」を使用可能で,「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」と同等の高い画像性能を有している。頭部や心臓をカバーできる160 mmの広範囲,最速0.24秒の高速撮影,DLRを活用した画像再構成による高分解能・高精細を,血管系・非血管系インターベンションや,救急診療で用いることができるメリットをアピールした。
血管撮影装置「Alphenix Sky+」とADCT「Aquilion ONE」を組み合わが追加されたアンギオCT
また,一般X線撮影システムでは,「Radrex i5 / Flex Edition」に骨密度測定オプションが登場したことをアナウンスした。Radrex i5 / Flex Editionは受診者・操作者にとってやさしい検査をめざして開発され2025年に発売,撮影シーンや撮影部位を選ばずにX線撮影時間の制御が可能な「Built-in AEC Assistance(BiAA)」や光学カメラを活用したAIソリューション「Camera Assist」などを搭載し,患者のケアに集中する操作者を支援して安全な検査と質の高い画像の提供を支援する。今回新たに提供される骨密度測定オプションは,フラットパネルディテクタ「CXDI-421C Wireless」と,骨密度測定ソフトウエア「Swift DEXA」を組み合わせて使用する。高・低エネルギーで撮影したデータから,DXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)で腰椎・大腿骨の骨塩定量を行い,レポートが出力される。解析にはAI技術が用いられており,骨領域の推定抽出や椎体の境界線の推定が自動で行われ,骨梁域や解析ROIを確認,必要に応じて微修正するだけで容易に解析結果を得られる。レポートは院内保存用や患者説明用が用意されている。骨密度測定の専用装置の導入が難しい施設でも,一般撮影装置と兼用できることで,高齢化によりニーズの高まる骨密度測定検査を提供することができる。
一般X線撮影システム「Radrex i5 / Flex Edition」
骨密度測定オプションではAIにより骨領域や椎体の境界線の推定を自動化
●サービス:院内モダリティの一元管理で業務負担を軽減する「FlexSync」
放射線部門においてはモダリティ管理も重要な業務であるが,多種多数の装置,多岐にわたる情報の管理は現場の負担となっている。そこで,新サービスとして画像診断装置のデータ管理ソリューション「FlexSync」を5月から提供開始することをアナウンスした。FlexSyncでは,保守回線のネットワークに接続された院内のCTやMRI,アンギオ,超音波装置など,キヤノン社製画像診断装置の稼働状況や点検状況を“装置カルテ”のようにクラウド上で一元管理することができる。機能としては,1)装置台帳管理・セキュリティパッチ管理・稼働状況を一画面で把握できる「装置情報の一元管理」,2)未対応パッチや脆弱性,装置停止リスクを確認できる「装置セキュリティリスクの可視化」,3)装置の稼働率や使用状況をグラフ化する「稼働状況の見える化」の3つが提供される。近年,医療機関へのサイバー攻撃のリスクが高まっており,セキュリティリスクへの対応がいっそう求められているが,セキュリティパッチのバージョンや適用履歴を装置横断で一覧化できることで,管理の負担を軽減する。また,稼働状況の見える化では各装置の通電時間や,CTであれば管球使用スライス数,超音波であればプローブの使用時間や感度,MRIであれば各コイルの使用状況や検査室の温度湿度など,装置管理のポイントとなる細かなデータまでグラフやリストで表示され,装置の有効活用や保守計画の検討材料として活用できる。保守契約の価値を向上させ,業務の効率化や病院経営に資するソリューションとしてアピールした。
画像診断装置のデータ管理ソリューション「FlexSync」の3つの機能
装置の通電時間をヒートマップで表示し適切な運用検討を支援
装置ごとの管理情報やセキュリティパッチの状況を一元管理
●超音波:「SMI Angio mode」により微細・低流速な血流をより明瞭に描出
超音波画像診断装置は,プレミアムハイエンドの「Aplio i800 / Prism Edition」,コンパクトタイプ性の高い「Aplio beyond」や「Aplio go」,携帯型超音波診断装置(ハンドヘルドエコー)「Aplio air」を展示し,さまざまな医療シーンに適した超音波検査を提供できることを紹介した。
ハイエンド装置として進化を続けるAplio i800 / Prism Editionでは,微小血管・低流速の血流を可視化する独自技術Superb Micro-vascular Imaging(SMI)に,新たに「SMI Angio mode」が追加された。血流信号の特徴量を解析しブルーミングを低減する信号処理技術により,血流パターンの視認性を向上した画像をリアルタイムに描出可能になり,より微細な血流像が明瞭に表現されるようになった。
Aplio airは,病棟や救急現場,在宅医療やスポーツ医療などのPOCUS(point-of-care ultrasound)を支援するキヤノン初のハンディタイプ超音波診断装置で,さまざまなシーンでの導入が進んでいる。約200gと軽量でポケットにも入るデュアルプローブは,両端にコンベックスとリニアのプローブを備える。専用アプリをインストールしたスマートフォン(iPhone,Android)やタブレット端末とワイヤレス(Wi-Fi)で接続して使用する。Bモード,カラードプラ,パワードプラに対応し,血流計測や自動膀胱計測機能,Auto-IMT機能など多彩な機能を利用できる。
プレミアムハイエンドの「Aplio i800 / Prism Edition」
微細・低流速血流をより明瞭に描出する「SMI Angio mode」
POCUSを支援するハンドヘルドエコー「Aplio air」
●Sustainable Solutions:製品のライフサイクルを通じて環境負荷の低減をめざす取り組みを紹介
キヤノングループでは,社会課題の解決に取り組むCSR活動としてさまざまな活動を展開している。その一つが環境課題への挑戦で,グループ全体では「Minimum Energy 360」をスローガンに,小さな資源の投入から大きなベネフィットを生み出すという考え方で取り組みを進めている。放射線科領域はGreen Radiologyへの関心が高まっているが,キヤノンでは製品・ソリューション・サービスを通じて,さまざまな角度からサステナビリティの取り組みを推進しており,ブースではその概要を映像やスライドで紹介した。医療事業分野においては,製品のライフサイクルを通じて環境負荷の低減に寄与する製品・サービスの提供を方針の一つに掲げており,CO2削減計画の推進や,製品の開発,製造,輸送,使用,再生・再利用・リサイクルの各段階においてさまざまな施策を実施している。製品開発ではエコデザインを重視しており,例えば,MRIのECOモードは寝台を下げると自動的にスタンバイ状態となり消費電力を低減,システム運用コストを最小化する。また,超音波装置ではエネルギー効率に優れた設計によりエネルギー消費を低減し,装置そのものを軽量化することで使用する資材を減らし,輸送コストやエネルギー消費の低減につなげている。安定稼働が最適な患者ケアと持続可能な医療提供を支えるという観点から,ユーザーに寄り添うサービス体制と保守契約を提供するといったサービス面も含め,環境負荷低減をめざした多様な取り組みを紹介した。
「Minimum Energy 360」をスローガンに環境課題解決をめざす
環境負荷低減の取り組みを進める那須工場の様子などを紹介
●お問い合わせ先
社名:キヤノンメディカルシステムズ株式会社
住所:栃木県大田原市下石上1385番地
TEL:0287-26-5100
URL:https://jp.medical.canon
