電子母子健康手帳標準化委員会が設立される

2014-1-27


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2014年1月24日,公益社団法人日本産婦人科医会などが中心となり,「電子母子健康手帳標準化委員会」が設立された。同日,品川フロントビル(東京都港区)において設立記者会見が行われ,日本産婦人科医会ほか,一般財団法人医療情報システム開発センター,インテル(株),日本マイクロソフト(株),(株)ミトラから,関係者が出席。設立趣旨や活動内容などが発表された。

電子母子健康手帳は,妊産婦や乳幼児を持つ保護者が所有する母子健康手帳を電子化して,災害などにより手帳を紛失した場合でも,情報を管理できるというもの。現在,電子化は複数の企業・団体が進めているものの,記録内容やデータ形式が統一されておらず,例えば妊娠中に住んでいた自治体の電子手帳が,出産後にほかの地域に転居した際に利用できなくなるという可能性がある。また,データを統合して医療の質向上や医療政策に生かすといったことも難しくなる。そこで,電子母子健康手帳標準化委員会では,内閣官房や厚生労働省の賛同を得て,(1)新生児,乳児,学童期の管理に必要な身長・体重などの各種パラメータ記載,(2)感染症・ワクチン接種情報のIT化,(3)罹患・新生児聴覚検査・発達などに関する記録,の3つについて標準的な記載法を策定していく。

記者会見では,恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター所長の中林正雄氏が委員会の設立趣旨を説明。さらに,委員長を務める香川大学瀬戸内圏研究センター特任教授の原 量宏氏が,電子母子健康手帳について解説した。原氏は,日母標準フォーマットなどのデータ形式や経済産業の実証事業として2006年に取り組んだ周産期電子カルテネットワークについて解説した上で,電子母子健康手帳と予防接種管理システム,電子カルテシステムを連携させた感染症予防の仕組みなどを紹介した。次いで,原氏が概要説明で取り上げた岩手県における周産期医療情報システム「いーはとーぶ」について,岩手県立大船渡病院副院長の小笠原敏浩氏が岩手県から中継で講演。東日本大震災において,いーはとーぶの電子母子健康手帳を用いて被災した妊産婦の診療を行った経験を紹介した。

原 量宏 氏(香川大学)

原 量宏 氏
(香川大学)

中林正雄 氏(総合母子保健センター)

中林正雄 氏
(総合母子保健センター)

 

続いて,早稲田大学総合研究機構研究院教授の福岡秀興氏が母子健康手帳を電子化する意義について講演した。福岡氏は,手帳を電子化すれば,データを収集し解析することによって,生活習慣病が胎児期に発症する学説を検証することができるなど,周産期・小児医療におけるビッグデータ活用にも有用であるとの考えを示した。また,次に登壇した国立成育医療研究センター成育政策科学研究部部長の森 臨太郎氏が,発展途上国での電子母子健康手帳の可能性について発表した。森氏は,モンゴルにおける紙の母子健康手帳の実証実験の成果を説明。その上で,通信インフラの普及により,手帳を電子化することで周産期・小児医療の質が向上すると述べた。

福岡秀興 氏(早稲田大学)

福岡秀興 氏
(早稲田大学)

森 臨太郎 氏(国立成育医療研究センター)

森 臨太郎 氏
(国立成育医療研究センター)

 

この後,委員会に参加する企業の代表として,日本マイクロソフト執行役パブリックセクター統括本部長の織田浩義氏,インテル法人営業推進部本部本部長の川原優子氏が挨拶。さらに,質疑応答を挟んで,標準化の実証を行う亀田総合病院が使用するミトラの電子母子健康手帳のアプリケーション「Mamaのーと」のデモンストレーションが設けられた。

織田浩義 氏(日本マイクロソフト)

織田浩義 氏
(日本マイクロソフト)

川原優子 氏(インテル)

川原優子 氏
(インテル)

 

電子母子健康手帳標準化委員会では,この実証実験に取り組みながら,標準化に向けた活動を展開していくこととしている。

 

●問い合わせ先
公益社団法人日本産婦人科医会
事務局
TEL 03-3269-4739


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