島津製作所とNEDOが乳房専用PET装置「Elmammo(エルマンモ)」の記者会見を開催

2014-9-5

島津製作所

核医学


乳房専用PET装置「Elmammo」

乳房専用PET装置「Elmammo」

(株)島津製作所と独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2014年9月4日(木),大同生命霞が関ビル・NEDO分室(東京都千代田区)において,産官学連携のNEDOプロジェクトとして共同開発した乳房専用PET装置「Elmammo(エルマンモ)」についての記者会見を行った。Elmammoは,薬事承認を8月19日(火)に取得し,9月4日(木)より発売を開始した。
NEDOプロジェクトでは,臨床機としては世界初の乳房を挟まないタイプの試みとして開発がスタートし,Elmammoはこのプロトタイプを製品化した。直径185mmの検出器ホールに乳房を入れるだけで検査できるため,マンモグラフィや従来の乳房専用PET装置のように被検者が痛みを感じることなく検査ができる。また,検出器が乳房に近接配置されることに加え,臨床用PET装置として世界最小(2014年9月現在)の1.44mm×1.44mmの検出素子のシンチレータを採用することで,全身用PET/CT装置と比較して約2倍(1.5mm以下)の空間分解能と約10倍の検出感度を実現した。保険適用には全身用PET/CTとの同日検査が条件となっているが,検査時間が両側で15分と短いため,全身用PETに用いる放射性薬剤の減衰時間内に検査を行うことができ,乳房用のPET検査の有無により患者の拘束時間が変わることはない。定価は4億円(税別)で,年間10台以上の販売をめざす。

4人の登壇者とElmammo

4人の登壇者とElmammo

 

記者会見では,はじめに,NEDOバイオテクノロジー・医療技術部長の山崎知巳氏が乳房専用PET装置の開発における背景や経緯について説明した。山崎氏は,今回発表したElmammoはNEDOが取り組んできたがん対策プロジェクトの成果の1つであり,患者の痛みに対する負担軽減や検出精度の高さにより,微小な乳がんの早期発見に効果が期待されるとし,薬剤治療の効果予測にも用いることができるのではないかと述べた。

次に,京都大学大学院医学研究科放射線医学講座(画像診断学・核医学)の中本裕士氏が,実際の臨床で得られた画像を供覧し,画質の基礎検討について説明した。同プロジェクトが先端医療開発特区(スーパー特区)の課題に採択されたことにより,京都大学では2009年より実際の臨床で乳房専用PET装置を使用している。中本氏は,全身用PET装置と比較した際の画質や精度の高さを評価するとともに,術前化学療法の早期の治療効果判定にも応用できると期待を示した。

山崎知巳 氏(NEDO)

山崎知巳 氏
(NEDO)

中本裕士 氏(京都大学大学院医学研究科)

中本裕士 氏
(京都大学大学院
医学研究科)

 

 

続いて,島津製作所医用機器事業部長の鈴木 悟氏が,Elmammoの展望,保険適用について述べた。鈴木氏は,すでに乳房用PETは2014年4月の診療報酬改定により「乳房用ポジトロン断層撮影」という名称で,全身PET/CTと同日の検査で保険適用がされていると説明した。さらに,将来的にはElmammoが診断・治療に単独利用できるようにしていきたいと述べた。今後は国内で販売して評価を得た上で,海外展開をめざしたいと展望を語った。

最後に,島津製作所医用機器事業部技術部副部長の井上芳浩氏より,Elmammoについての技術的な解説が行われた。井上氏は,Elmammoがマンモグラフィや全身用PETと比較して,低侵襲であることや三次元機能画像を得られること,高感度・高解像度であるなどの特長を挙げ,今後は乳房画像診断分野における地位を確立し,化学療法の効果判定などへの単独利用や,治療薬・検査薬の開発に寄与することで乳がんの早期診断・治療に貢献したいとの考えを示した。

鈴木 悟 氏(島津製作所)

鈴木 悟 氏
(島津製作所)

井上芳浩 氏(島津製作所)

井上芳浩 氏
(島津製作所)

 

 

●問い合わせ先
(株)島津製作所
医用機器事業部 グローバルマーケティング部 販売促進グループ
TEL 075-823-1271
http://www.med.shimadzu.co.jp/

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