日本メドラッドとバイエル薬品が「Radimetrics講演会」を開催

2017-1-20


Radimetricsユーザーなどが多数参加

Radimetricsユーザーなどが多数参加

日本メドラッド(株)とバイエル薬品(株)は2016年12月17日(土),ANAクラウンプラザ熊本ニュースカイ(熊本県熊本市)において,「Radimetrics講演会」を診療放射線技師に向けて開催した。日本メドラッドのX線線量情報一元管理システムである「Radimetrics」のユーザーや導入を検討している施設を対象としたもので,初めての試みとなる。医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME)が2015年6月に公表した「最新の国内実態調査結果に基づく診断参考レベルの設定(Japan DRLs 2015)」において,CT(成人CT,小児CT),一般撮影,マンモグラフィ,口内法X線撮影,IVR,核医学の計7項目の線量指標が示され,社会的にも話題になった。医療機関でも,医療被ばくの正当化と最適化を図るために,放射線検査の線量管理の重要性が増しており,そのためのシステムのニーズが高まっている。今回の講演会は,このような状況を受けて開催されたもので,鹿児島市立病院,熊本大学医学部附属病院,熊本地域医療センター,福岡大学病院,新別府病院といった九州地域のRadimetricsユーザー施設が中心となり,教育講演,特別講演などのプログラムが設けられた。

開会に当たって,隈 浩司氏(鹿児島市立病院放射線技術科)が登壇し,線量管理の関する知識を学び,明日からの診療に役立ててほしいと挨拶した。この挨拶に続き,情報提供として,上村しづ香氏(ラジオロジー事業部インフォマティクスブランドマネジャー)がRadimetricsの技術的特長について解説した。日本国内では2014年に発売されたRadimetricsは,CTや一般撮影,血管造影,透視撮影,マンモグラフィといった放射線検査におけるX線線量のデータを一元管理するネットワーク型のシステム。検査装置やPACS内のDICOM RDSRデータを取り込み,CTDIvol,DLP,SSDEなどの各種線量指標を算出することができる。また,患者が複数回の検査を受けている場合は,累積線量を表示することも可能である。データの詳細な分析も容易で,施設の運用に合わせてカスタマイズできる“ダッシュボード機能”により,装置やプロトコール,検査担当者といったフィルターを設けて線量情報を統計処理し,分析を行える。さらに,CTの撮影条件設定における線量のシミュレーション機能を搭載しているほか,電子カルテシステムやRISといった他システムもシームレスに連携する。

隈 浩司 氏(鹿児島市立病院)

隈 浩司 氏
(鹿児島市立病院)

上村しづ香 氏(ラジオロジー事業部)

上村しづ香 氏
(ラジオロジー事業部)

 

 

上村氏の説明に続き,山下裕輔氏(熊本地域医療センター放射線科)が座長を務め,教育講演が行われた。「CT検査の診断参考レベルと被ばくのリスクを考える」をテーマに,Japan DRLs 2015策定におけるワーキンググループのメンバーを務めた竹井泰孝氏(浜松医科大学医学部附属病院放射線部)が講演した。竹井氏は,医療放射線被ばくの最適化のねらいについて,「医療の目的に見合うよう患者線量を管理する」ことであるとし,ALARA(As Low As Readily Achievable)の原則を取り上げた。その上で,日本におけるCT検査について,年間約2700万件が施行され,うち小児検査は約7万8000件,その約7割が頭部撮影であるとの実態を説明した。さらに竹井氏は,「我が国の小児CTで患児がうける線量の実態調査」の結果についても説明した。この調査では,諸外国と比較し,頭部ではCTDIvolとDLPが高めで,胸部・腹部CTのCTDIvolは同等,もしくはやや低く,DLPは高めであると述べた。また,検査のプロトコールについては,低管電圧,逐次近似応用再構成法の適用は少なく,年齢群ごとのmAsの中央値が低く,ローテーションタイムは若干長めであるとの結果を示した。また,竹井氏は,放射線の発がんリスクについて触れ,相対リスクと過剰相対リスクの定義,LNT仮説の考え方を述べた。そして,小児のCT検査においては,生物学的影響が生涯にわたって影響することを考慮する必要があることなどを説明した。

座長:山下裕輔 氏(熊本地域医療センター)

座長:山下裕輔 氏
(熊本地域医療センター)

竹井泰孝 氏(浜松医科大学附属病院)

竹井泰孝 氏
(浜松医科大学附属病院)

 

 

次いで,特別講演が行われた。吉武貴康氏(国家公務員共済組合連合会新別府病院放射線科)が座長を務め,上野登喜生氏(福岡大学病院放射線部)が講演者として登壇。「CTの線量管理について」と題して講演した。上野氏は,線量情報を取り扱う目的,医療現場における放射線防護体系の順守と撮影プロトコールの決定を挙げた。そして,放射線の確率的影響と確定的影響を取り上げ,「ICRP Publication 103」での医療被ばくに関する防護体系などについて解説を加えた。さらに,上野氏は,線量評価に関して,確率的影響への評価にはDRL,確定的影響への評価には臓器線量を用いると説明。確率的影響への評価については,DICOM RDSRなどの情報を収集してデータベース化することが容易になってきたと述べた。その上で,DICOM RDSRのデータ構造や活用するための要件についても解説を行った。このほか上野氏は,線量情報管理システムの構成を紹介し,得られたデータを,Japan DRLs 2015と比較して自施設の基準線量を策定し,それを毎年見直していくことの重要性を説明した。

座長:吉武貴康 氏(新別府病院)

座長:吉武貴康 氏
(新別府病院)

上野登喜生 氏(福岡大学病院)

上野登喜生 氏
(福岡大学病院)

 

 

この後,ユーザーディスカッションが行われ,Radimetrics導入において,施設内でコンセンサスを得るためのコスト面も含めたメリットの考え方や,得られた情報の各診療科へのフィードバックといったことについて,会場からの質問も交え,意見が交換された。また,RDSRに非対応の装置やシステムへの対応など運用でのポイントについても話し合われた。最後に栃原秀一氏(熊本大学医学部附属病院医療技術部)が閉会の挨拶を行い,講演会は終了した。

栃原 秀一 氏(熊本大学医学部附属病院)

栃原 秀一 氏
(熊本大学医学部附属病院)

   

 

なお,Radimetricsを販売していた日本メドラッドは,2017年1月1日にバイエル薬品と事業統合する。今後,Radimetricsはバイエル薬品が販売を行っていく。

Radimetricsの運用などをテーマにしたユーザーディスカッション

Radimetricsの運用などをテーマにした
ユーザーディスカッション

 

Radimetricsの技術的特長

Radimetricsの技術的特長

 

カスタマイズ可能なダッシュボード機構

カスタマイズ可能なダッシュボード機構

 

CT検査の線量シミュレーションツールを搭載

CT検査の線量シミュレーションツールを搭載

 

●問い合わせ先
バイエル薬品株式会社
ラジオロジー事業部
TEL 06-6133-6250(代表)
FAX 06-6344-2192
www.bayer.jp


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