FileMaker カンファレンス 2017 
“つくるのもつなぐのも自由自在”なFileMakerの事例が集結
〜J-SUMMITS共催のメディカルトラックを開催〜

2017-10-26

クラリス(FIleMaker)

ヘルスケアIT


メインホールでのオープニングセッションの様子

メインホールでのオープニングセッションの様子

FileMaker カンファレンス 2017が2017年10月23日(月)〜25日(水)の3日間,パシフィコ横浜会議センター(神奈川県横浜市)で開催された。FileMakerでカスタムApp(アプリケーション)を開発・活用するためのヒントや事例などが集まる総合イベントとして毎年開催されている。
初日の23日にはオープニング セッションが行われ,ファイルメーカー(株)のビル・エプリング(Bill Epling)社長が日本におけるFileMaker利用の現状について製品の特長や市場拡大への取り組みなどを含めてプレゼンテーションした。FileMakerプラットフォームは15の言語に対応し世界中で100万以上のユーザーが利用しており,2017年8月にはiOSのFileMaker Goが300万ダウンロードを記録した。日本は世界の4分の1を占める大きな市場であり,エプリング社長は「日本のユーザーからの声は大きなウエイトで製品の方向性を決める力になる」と述べた。続いてFileMaker社プロダクトマネージャーのロバート・ホルジー(Robert Holsey)氏がこれからのFileMakerの開発ロードマップや次バージョンの機能など未来を先取りしたトピックを講演した。
最後に今回のカンファレンスのスポンサーが紹介され,PLATINUMスポンサーとして(株)イエスウィキャン,(株)ジェネコム,Dropbox Japan(株),SBクラウド(株)の4社が紹介され,スキャナとFileMakerの連携,SB Cloudの概要説明,FileMakerとDropboxとの連携などをデモを交えて紹介した。

ビル・エプリング 氏(ファイルメーカー)

ビル・エプリング 氏
(ファイルメーカー)

ロバート・ホルジー 氏(FileMaker,Inc.)

ロバート・ホルジー 氏
(FileMaker,Inc.)

 

 

23日の午後には,日本ユーザーメード医療IT研究会(J-SUMMITS)との共催でメディカル トラックが行われた。開会の挨拶としてJ-SUMMITS代表の吉田茂氏(医療法人葵鐘会副理事長)が登壇し,「“ユーザーメード”は研究会発足時に独自に作った和製英語。英語では“End-User Computing”だが,ユーザーはトップにあるべきと考えてユーザーメードとした。J-SUMMITS発足から9年が経過したが,ユーザーメードの単語は考え方と併せて世界に広がりつつあると実感している」とコメントした。

メディカルトラックの会場の様子

メディカルトラックの会場の様子

吉田 茂 氏(J-SUMMITS代表)

吉田 茂 氏
(J-SUMMITS代表)

 

メディカルトラックでは,FileMakerを活用した医療や介護の業務を支援するシステム構築の6つの事例の発表があった。
メディカルトラック-3(M-3)「医療情報の二次利用・FileMaker プラットフォームで管理する院内感染対策」では,中国労災病院感染対策室の小西央郎氏がFileMakerを利用し感染症対策加算算定の要件クリアをサポートするカスタムAppの運用を紹介した。算定の施設基準をクリアするためには,医師や看護師からなる感染対策チームを設け,院内のラウンドやサーベイランス,合同カンファレンスの開催,外部の公的サーベイランスへの参加などが必要となる。中国労災病院では,電子カルテに入力された情報(患者基本情報や感染症関連データ)をFileMakerに取り込み,見やすく必要な形に加工して提供することで,この活動をサポートしている。講演では“職員のワクチン接種管理”“アウトブレイク管理”“抗菌薬の適正使用”のためのシステムの概要を説明した。同院では,諸事情からFileMaker Serverが設置できず,電子カルテシステムからテキストファイルで必要なデータを書き出し,それをFileMaker側に取り込んで情報の二次利用を行っている。小西氏は「感染対策の業務は多岐にわたり,さまざまな情報が必要であり,また提出が必要な書類も多い。それらを手作業で行うのは効率が悪いということでFileMakerでのシステム化を進めた」と述べた。

小西央郎 氏(中国労災病院)

小西央郎 氏
(中国労災病院)

   

 

M-4では,「FileMaker Go を活用した健康診断データの集計・管理」について,聖マリアンナ医科大学教学部学務課の福井博史氏と(株)ともクリエーションズの渡邊桃伯子氏がプレゼンテーションを行った。医学部学生の定期健康診断の業務をFileMakerのカスタムAppでシステム化し,健診時の入力作業の効率化とデータを利用した正確な管理と迅速な結果返送を可能にした。同大学の健康診断では,700人前後の学生に対し血液検査や内科検診など10種類以上の検査を行う。従来は紙ベースで学生ごとに検査結果を用紙に記入し,最終的に用紙を集め学務課でExcelに入力,集計・分析を行っていた。これをFileMaker GoとiPadでデータの入力を行い,FileMaker Serverに情報を集約し集計や分析を行い,帳簿作成や結果返送を行うシステムを構築したことで,3か月かかっていた結果返送がすぐに出せるようになったこと,前回の結果を参照した内科検診,ペーパーレス化が可能になったことなどを紹介した。

福井博史 氏(聖マリアンナ医科大学)

福井博史 氏
(聖マリアンナ医科大学)

渡邊桃伯子 氏(ともクリエーションズ)

渡邊桃伯子 氏
(ともクリエーションズ)

 

 

M-6は,独立行政法人国立病院機構大阪医療センター医療情報部の岡垣篤彦氏が,「甚大災害を想定したユーザーメード災害対策システム」を講演した。岡垣氏は,FileMakerで開発を行っている救急・災害医療用のソフトウエアとして,“ER経過表”“電子災害掲示板”“災害診療録”“DMAT Navigator”についてシステムの概要と導入効果をプレゼンテーションした。ER経過表は,日常の救命救急診療で使用するシステムで,処置記録の入力システムをFileMakerで作成。項目の選択や数値の入力をするだけで素早く簡単に記録ができる。電子災害掲示板は,発災時の災害拠点病院内での情報伝達,共有を行うためのシステムで,各部門がタイムラインに必要な情報を発信する(Twitter方式)ことで容易に情報共有を可能にする。災害診療録は,日本救急医学会が2015年に制定した災害時の標準診療録をFileMakerで電子化したもので,シェーマなども利用できる。また,DMAT Navigatorは,南海トラフ巨大地震や首都直下地震に向けて災害が発生した際にDMATがどこに行けばよいかという情報を震度や津波高などのデータと病院の情報を組み合わせて提供するシステムである。岡垣氏はこれらのシステムを紹介した上で,FileMakerで構築するメリットとして,開発の容易さ,スピード,現場の変化に柔軟に対応できることを挙げた。

岡垣篤彦 氏(大阪医療センター)

岡垣篤彦 氏
(大阪医療センター)

   

 

最後のセッション(M-7)は,「院内開発依頼をオンラインで受付。年間 200 件の開発案件で約 750 万円のコスト削減」を松波総合病院病院長の松波和寿氏とシステム開発部の山北慎吾氏が講演した。最初に松波氏が“松波総合病院におけるFileMakerプラットフォームの活用”について,病院概要などFileMakerで開発した診療支援システムであるCSS(Clinical Support System)のバックグラウンドを説明した。続いて山北氏が,同院の病院情報システムの管理や開発部門であるシステム開発部の体制と,FileMakerによる開発依頼や工数管理のシステムやBalanced Score Card(BSC)を用いた開発案件の管理と評価の仕組みを紹介。また,FileMakerと連携可能なBIツールである「Tableau」について,地域の人口規模や医療機関の情報と厚生労働省のDPCデータ,同院のFileMakerや電子カルテシステム(Oracle)のデータベースを利用した分析結果についても紹介した。

松波和寿 氏(松波総合病院)

松波和寿 氏
(松波総合病院)

山北慎吾 氏(松波総合病院)

山北慎吾 氏
(松波総合病院)

 

 

最後に,J-SUMMITS副代表の松波氏が再び登壇し閉会の挨拶を述べた。松波氏は,全世界のFileMakerライセンスのうち25%が日本,その中で医療業界の割合が22%,大学病院の97%でFileMakerが使用されているなどのデータを紹介し,さらに日本では少子化が進むが医療や介護のニーズは拡大するとの今後の見通しを述べ,地域包括ケアシステムの構築で患者情報の共有や活用のためのソリューションの提供が求められる中で,「FileMakerでは効率的に情報共有が可能なソリューションを提供できる。医療・介護の世界は成長分野であり大きなビジネスチャンスだ」とメッセージを送った。

FileMakerの医療分野での開発はビジネスチャンスとエールを贈る松波氏

FileMakerの医療分野での開発はビジネスチャンスとエールを贈る松波氏

 

 

ショウケース(展示)会場では,FBAをはじめとするスポンサー企業による製品展示のほか,製品やサービスをプレゼンテーションするミニステージが行われた。また,ファイルメーカー社のブースではFileMakerに関するよろず相談を受け付けるFileMaker Bar,FileMakerプラットフォームのカスタムAppをiPadで操作できる体験コーナーなどが設けられた。医療関連では,(株)DBPowersの地域連携システム「DASCH Pro Ⅱ」,イエスウィキャンが歯科見積システムの「OWL VIEW」などを出展した。

ショウケース会場の様子

ショウケース会場の様子

32社がFileMaker関連のソリューションを展示

32社がFileMaker関連のソリューションを展示

   
毎年恒例のFileMaker Bar

毎年恒例のFileMaker Bar

 

 

●問い合わせ先
(株)コンベンションリンケージ内
FileMaker カンファレンス 2017 事務局
TEL 03-3263-8695

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