第6回慢性期リハビリテーション学会が開催

2019-2-18

介護


テーマは「地域づくりはリハビリテーション・マインドを持って」

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「地域づくりはリハビリテーション・マインドを持って」

第6回慢性期リハビリテーション学会が2019年2月15日(金),16日(土)の2日間,ウェスタ川越(埼玉県川越市)で開催された。企画は慢性期リハビリテーション協会,主催は日本慢性期医療協会。斉藤正身氏(霞ヶ関南病院理事長)が学会長を務め,テーマには「地域づくりはリハビリテーション・マインドを持って」が掲げられた。超高齢社会が進んだことで,急性期医療から慢性期医療へとニーズが移行している。慢性疾患や認知症,フレイルの高齢者が増加する中,慢性期リハビリテーションは,国が推進する健康寿命の延伸を実現するためにも重要である。このような状況の中,6回目となった今回の学会では,演題数が286題を数え,参加者は約800名に上った。

学会2日目の16日には,田中 滋氏(埼玉県立大学理事長/慶應義塾大学名誉教授)による特別講演「地域包括ケアシステムの深化と地域リハビリテーション〜事業経営の観点から〜」が行われた。田中氏は,高齢者などの「社会的包摂からの疎外」を防ぐことが大事だとして,人類の歴史において人々がどのように経済社会からの疎外に対して取り組んできたかを解説した。そして,超高齢社会における多職種協働に言及し,介護保険施設などの機能を組み合わせて,すべての高齢者にリハビリテーションを提供することの重要性を説明した。さらに,田中氏は,地域包括ケアにおける生産性の向上や,今後の「地域共生社会・多世代共生社会」のあり方を述べ,講演を締めくくった。

学会長:斉藤正身 氏(霞ヶ関南病院)

学会長:斉藤正身 氏
(霞ヶ関南病院)

田中 滋 氏(埼玉県立大学/慶應義塾大学)

田中 滋 氏
(埼玉県立大学/慶應義塾大学)

 

 

また,2日目は2題の教育講演が設けられた。教育講演1では,次回の学会長を務める江澤和彦氏(日本医師会常任理事/倉敷スイートホスピタル理事長)が「医療・介護連携とリハビリテーション」をテーマに講演した。江澤氏は,介護人材の不足などの課題などを指摘し,2025年に向けた地域包括ケアシステムの方向性を示した。また,国が進める科学的介護を取り上げ,介護保険総合データベース,通所・訪問リハビリテーションデータベース「VISIT」,介入・状態などのデータベース「CHASE」について解説した。さらに,江澤氏は,2018年度に創設された介護医療院について説明した上で,「尊厳を保障」するケアの実現に言及した。教育講演2では,「在宅リハビリテーションの現状と課題〜通所リハビリテーション・訪問リハビリテーションの立場から〜」をテーマに,通所リハビリテーションについて岡野英樹氏(全国デイ・ケア協会理事),訪問リハビリテーションについて宮田昌司氏(日本訪問リハビリテーション協会会長)が講演した。岡野氏は,リハビリテーションの行うための動機づけなどを事例を交えて解説したほか,通所リハビリテーションの普遍的機能について説明した。一方,宮田氏は,訪問リハビリテーションの役割や機能を取り上げた上で,多職種との連携を円滑に行うための考え方を示した。

江澤和彦 氏(日本医師会/倉敷スイートホスピタル)

江澤和彦 氏(日本医師会/倉敷スイートホスピタル)

岡野英樹 氏(全国デイ・ケア協会)

岡野英樹 氏
(全国デイ・ケア協会)

宮田昌司 氏(日本訪問リハビリテーション協会)

宮田昌司 氏
(日本訪問リハビリテーション協会)

 

同じく2日目には,シンポジウム2「慢性期リハに求められるセラピスト像〜若手セラピストへのメッセージ〜」が行われた。このシンポジウムでは,シンポジストとして半田一登氏(日本理学療法士協会会長),中村春基氏(日本作業療法士協会会長),深浦順一氏(日本言語聴覚士協会会長),シンポジスト兼座長として浜村明徳氏(小倉リハビリテーション病院名誉院長)が登壇した。

2日目のランチョンセミナーは3セッションが設けられた。このうち,(株)ワイズマンとの共催によるランチョンセミナー3では,久野智彦氏(すすかけヘルスケアホスピタル病院長)が「慢性期で実践するチーム医療—少ないリソースを最大限に活かすために—」をテーマに講演した。久野氏は,チーム医療を行うための組織づくりについて説明したほか,電子カルテシステムなどのICTを導入したことで,業務の効率化や記録作業の時間短縮が図られ,働き方改革を実践できたことなどを報告した。

ICT導入によりチーム医療での働き方改革の実践が報告されたワイズマンのランチョンセミナー

ICT導入によりチーム医療での働き方改革の実践が報告されたワイズマンのランチョンセミナー

 

このほか,第1会場ホワイエでは企業展示も行われた。(株)早稲田大学エルダリーヘルス事業団は,腰に装着するウェアラブル型の歩行能力評価ツール「AYUMI EYE」を展示した。歩幅,速度など歩行能力を数値化し,マップやグラフで表示する。また,パラマウントベッド(株)は,リハビリテーション用の足底圧センサー「Waltwin」のデモンストレーションを行った。インソール型のセンサーを靴に挿入し,ふくらはぎに中継ボックスをベルトで装着。歩行時に足のどの部分に圧がかかっているかをリアルタイムに測定し,タブレット上にデータを表示する。本田技研工業(株)は,歩行訓練器「Honda歩行アシスト」の展示。参加者が装着体験できるようにした。今回の学会では,初日15日に一般演題において「義肢・装具・ロボテック機器」が3セッション設けられ,このうち10題がHonda歩行アシストによるリハビリテーションの発表であった。Honda歩行アシストはリハビリテーション病院での導入が多いが,最近では介護施設でのニーズが高まっているという。

歩行データを見える化早稲田大学エルダリーヘルス事業団のAYUMI EYE

歩行データを見える化早稲田大学エルダリーヘルス事業団のAYUMI EYE

 

パラマウントベッドのリハビリテーション用の足底圧センサーWaltwin

パラマウントベッドのリハビリテーション用の足底圧センサーWaltwin

 

一般演題で多くの発表があった本田技研工業のHonda歩行アシスト

一般演題で多くの発表があった本田技研工業のHonda歩行アシスト

 

なお,次回第7回慢性期リハビリテーション学会は,江澤氏が学会長を務め,2020年2月27日(金),28日(土)の2日間,岡山コンベンションセンター,岡山県医師会館(岡山県岡山市)で開催される。テーマには,「尊厳の保障——誰もが誇りを持って暮らせるまちづくり」が掲げられた。

 

●問い合わせ先
日本慢性期医療協会
慢性期リハビリテーション協会
TEL 03-3355-3120
http://www.gakkai.co.jp/manseikiriha6/index.html

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