日本消化管CT技術学会が第18回学術集会を開催

2019-6-10

CTコロノグラフィ

大腸CT


学会として新たな一歩

学会として新たな一歩

日本消化管CT技術学会は2019年6月1日(土),札幌文化芸術劇場 hitaru クリエイティブスタジオ(北海道札幌市)において,第18回学術集会を開催した。同学会は,大腸CT検査の検査技術について意見交換し,レベルアップを図ることを目的に,2010年に消化管CT技術研究会として発足。年2回のペースで研究会および学術集会を開催してきた。この間,大腸CT検査は,2011年には炭酸ガス送気装置「プロトCO2L」〔Bracco社,エーディア(株)販売(当時)〕が薬事承認され,翌2012年には大腸CT加算が新設されるなど,普及のための地盤が固められ,国内での検査数も伸びてきた。学会の理事長で,今大会の大会長を務めた平野雄士氏(小樽掖済会病院)は,開会の挨拶において,これまでの研究会の歩みを振り返った上で,今後の学会の活動について,特定非営利活動法人の認可(現在申請中),大腸CT認定技師資格の創設,学会誌の年1回発行をめざすと述べた。

大会長:平野雄士 氏(小樽掖済会病院)

大会長:平野雄士 氏
(小樽掖済会病院)

   

 

学会として新たなスタートとなった今回は,「Let's Think CTC!」がテーマに掲げられた。このテーマの下に,一般演題(1)(2),ランチョンセミナー〔共催:キヤノンメディカルシステムズ(株)〕,シンポジウム〔共催:アミン(株)/伏見製薬(株)〕,PROTOCO2Lセッション〔共催:エーザイ(株)〕が設けられた。なお,司会は吉川秀司氏(大阪医科大学関西BNCT共同医療センター)が務めた。
最初に行われた一般演題(1)では,高林 健氏(斗南病院)と原田耕平氏(札幌医科大学附属病院)が座長を務め,「技術編」として前処置などの検査技術に関する4演題の発表が行われた。このうち,最初に発表した木下琢実氏(倉敷成人病センター)は,「中四国大腸CT研究会における大腸CT実演指導実施の運用報告」と題して,中四国9県の医療機関から60名が参加して行われた実演指導の概要を報告した。また,4番目に発表した神子枝里子氏(亀田総合病院)は,「ユニバーサル逐次近似再構成法の大腸CTに対する基礎検討」と題して発表した。神子氏は,イスラエルのMedic Vision Imaging Solutionsが開発した逐次近似画像再構成ソフトウエアの“SafeCT”〔長瀬産業(株)販売〕を用いた低線量大腸CT検査に向けて行ったファントム実験の結果を報告した。
続く,ランチョンセミナーでは,吉川氏が司会を務め,長澤宏文氏(国立がん研究センター中央病院)が,「消化管領域の超高精細CTについて」と題して講演した。長澤氏は,キヤノンメディカルシステムズの超高精細CT「Aquilion Precision」に搭載されたSHR,HR,NRの各撮影モードの画質などを解説した上で,消化器領域における症例画像を供覧した。さらに,ディープラーニングを用いた画像再構成技術“AiCE”や,造影効果を増強できる“SURESubtraction”に有用性について説明した。

技術講演座長:長澤宏文 氏(国立がん研究センター中央病院)

長澤宏文 氏
(国立がん研究センター中央病院)

   

 

次に行われた一般演題(2)は,「臨床編」として3演題の発表が行われた。座長は,坂本 崇氏(済生会熊本病院),津元崇弘氏(網走厚生病院)が務めた。岩月建麿氏(イーメディカル東京遠隔画像診断センター/松田病院)が「1次解析において判断に苦慮した1例」,山﨑通尋氏(山下病院)が「虚血性大腸炎を併発した全周性2型腫瘍の1例」,大家佑介氏(小樽掖済会病院)が「コロンフォートCTCにて指摘したStage I大腸がんの1例」をテーマに,それぞれ症例画像を提示した。
この後,平野氏と鈴木雅裕氏(イーメディカル東京遠隔画像診断センター)が司会を務め,シンポジウム「前処置を再考し,理解しよう!」が行われた。まず,今野雅彦氏(山形県立中央病院)が,2018年11月に行われた第7回首都圏消化器画像技術研究会内の第1回CTC技術協議会において紹介された,全国14施設から収集した大腸CT検査の前処置法のプロトコールを,症例画像とともに解説した。次いで,若王子みのり氏(千葉大学医学部附属病院)が「前処置 腸管洗浄剤〜看護師の立場から〜」と題して,大腸内視鏡検査と大腸CT検査における腸管洗浄剤の位置づけや特徴などを概説した。3番目には,安田貴明氏(長崎県上五島病院)がガストログラフインの特徴とそれを用いたタギングのポイントを説明した。4番目には,秋田裕介氏(亀田総合病院)がバリウム製剤を用いたタギングについて自施設の経験を踏まえて紹介した。この発表後には,アンサーパッドを用いた参加者のアンケートが行われた。アンケートでは,タギングに使用している造影剤などの質問が設けられ,その回答を基に討論した。

アンサーパッドを使ったシンポジウム

アンサーパッドを使ったシンポジウム

 

 

続いて,PROTOCO2Lセッションが行われた。まず,山本修司氏(国立がん研究センター中央病院検診センター)が司会を務め,松田勝彦氏(済生会熊本病院)が「大腸CTにおける一次チェックの重要性」をテーマに講演した。松田氏は,精度向上と医師の負担軽減のために,診療放射線技師による一次チェックが期待されていると述べた上で,技師の読影精度についてこれまでの国内外の研究結果を報告した。さらに,大腸CTの読影トレーニング方法を解説したほか,自施設での運用を紹介した。このほか,日本放射線技術学会の「大腸CTにおける読影補助の標準化の検討」調査研究班の活動について報告した。

松田勝彦 氏(済生会熊本病院)

松田勝彦 氏
(済生会熊本病院)

   

 

2番目の講演では,山﨑氏が司会を務め,「ニッポンのCTC」をテーマに,笹井信也氏(笠岡第一病院)が登壇した。笹井氏は,大腸CTについてのEuropean Society of Gastrointestinal and Abdominal Radiology(ESGAR)のガイドラインを説明したたほか,被ばくや検査の適応などを解説した。また,大腸CTの普及のために制作した前処置などのノウハウをまとめた電子書籍『おしえテル』を紹介した。

笹井信也 氏(笠岡第一病院)

笹井信也 氏
(笠岡第一病院)

   

 

すべてのプログラム終了後には,坂本氏が,「第1回大腸CT技術セミナー」が2020年1月25日(土)に,エルガーラホール中ホール(福岡県福岡市)において開催されるとアナウンスした。さらに,次回大会長の吉川氏が,第19回学術集会を2020年6月13日(土)に大阪府内での開催すると告知した。
大腸CT検査のさらなる普及に向けては,標準化がカギとされている。標準化に向け,日本消化管CT技術学会の果たすべき役割も大きくなるだけに,今後学会としてさらに発展していくことが期待される。

次回大会長:吉川秀司 氏(大阪医科大学関西BNCT共同医療センター)

次回大会長:吉川秀司 氏
(大阪医科大学関西BNCT共同医療センター)

   

 

●機器展示

キヤノンメディカルシステムズ株式会社
アミン株式会社
エーザイ株式会社
長瀬産業株式会社
伏見製薬株式会社
株式会社杏林システマック
堀井薬品工業株式会社

7社が出展した機器展示

7社が出展した機器展示

 

●問い合わせ先
日本消化管CT技術学会
http://www.gict-tec.com

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