順天堂大学が世界初の3次元オンライン診療システム「Holomedicine」を開発

2020-10-6

ヘルスケアIT


Holomedicineのデモンストレーション

Holomedicineのデモンストレーション

順天堂大学大学院医学研究科神経学の服部信孝教授,大山彦光准教授、関本智子非常勤助教らの研究グループは,世界初の3次元オンライン診療システム「Holomedicine」を開発した。このシステムは,複合現実(XR)に対応したヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」,ジェスチャや音声認識での操作が可能な「Kinect v2」(共にマイクロソフト社製)を用いて,遠隔地の患者に対して診療を行う。複合現実の技術を用いることで,医師と患者が診察室や患者宅など同一環境にいる感覚で診療を行うことが可能となる。

複合現実のためのヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」

複合現実のためのヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」

患者の動きをセンシングする「Kinect v2」

患者の動きをセンシングする「Kinect v2」

 

研究では,パーキンソン病患者100名に対し,Holomedicineによる3次元オンライン診療と従来の対面診療における運動症状について,国際標準ツールであるUPDRS-IIIのスコアで比較した。その結果,両者に強い相関があり,システムに高い信頼性が得られた。このことから,Holomedicineは,対面診療の代替となる可能性が示唆された。

順天堂大学医学部附属順天堂医院の脳神経内科では,2017年からパーキンソン病患者に対して,iPadを用いたビデオ通話によるオンライン診療を行ってきた。しかし,2次元の映像では,姿勢など奥行きの情報が不足し,運動症状の観察が十分できなかった。そこで,Holomedicineでは,複合現実の技術を用いることで,立体的に運動症状を観察できるようにした。現在,同院神経内科では,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で,パーキンソン病患者の外来での受診控えが生じている。一方,電話等再診を含めたオンライン診療の受診者は増加傾向にある。3次元オンライン診療システムが実用化されれば,COVID-19などの感染症のリスクを抑えながら,質の高い診療を受けられるようになると期待される。ただし,実用化に向けては,高速なデータ通信が行える5Gネットワークの構築といったインフラ整備がカギとなる。

2020年10月5日(月)には,3次元オンライン診療システム開発についての記者会見が順天堂大学(東京都文京区)で開かれ,服部教授,大山准教授、関本非常勤助教のほか,日本マイクロソフト(株)の千葉慎二氏が出席した。記者会見で挨拶した服部教授は,3次元オンライン診療システムのデータを集積することで,将来的にはディープラーニングなどの人工知能(AI)技術を用いた神経変性疾患の診断補助アルゴリズムの開発も可能になると期待を示した。また,大山准教授は,5GやAIなどの技術を組み合わせることで,ポストコロナを見据えた未来のオンライン診療の実現につながるとアピールした。このほか,当日は,Holomedicineのデモンストレーションも行われた。

服部信孝 教授

服部信孝 教授

大山彦光 准教授

大山彦光 准教授

   
関本智子 非常勤助教

関本智子 非常勤助教

 

 

●問い合わせ先
順天堂大学大学院医学研究科神経学
准教授・大山彦光
TEL 03-3813-3111
http://www.juntendo-neurology.com

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