フィリップス・ジャパン,画像解析AI技術を活用した脳ドック用プログラム「BrainSuite」を発表
東北大学発のCogSmartと業務提携し,認知症予防で健康寿命の延伸をめざす

2021-4-15

フィリップス・ジャパン

AI(人工知能)


プレス発表会での質疑応答の様子

プレス発表会での質疑応答の様子

(株)フィリップス・ジャパンは2021年4月13日(火),画像解析人工知能(AI)技術を活用した脳ドック用プログラム「BrainSuite」の提供を開始し,同日にプレス発表会を開催した。
BrainSuiteは,フィリップスの放射線画像技術と,東北大学発のスタートアップ企業である(株)CogSmartの脳医学研究をベースに,AI技術を活用して脳の健康レベルを可視化し,認知症予防のためのアドバイスを提供するプログラム。脳ドックのオプションサービスとしての利用を想定しており,対象年齢層は30歳代から70歳代までとなっている。プログラムの流れとしては,事前にオンライン(または来院時や来院後)で問診と認知機能テストを行い,MRI撮像後に脳MR画像をクラウドへアップロードするだけで,現在の認知機能・脳健康状態の評価と生活習慣改善のアドバイスを含めた結果レポートが約3分で提供される。また,受診者が自身の結果や医学解説を確認できる会員Webページも用意されている。

CogSmartは,東北大学加齢医学研究所教授/東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター副センター長の瀧 靖之氏らが2019年に設立したスタートアップ企業で,認知症予防や脳機能の改善・維持のためのソフトウエア医療機器などの開発・販売,データサイエンス事業などを手掛ける。瀧氏は大規模な脳のMR画像のデータベースを構築し,脳の発達や加齢に関する研究に長年取り組み,脳機能・形態に関してフィリップスと共同研究・協業を行ってきた。
今回発表されたBrainSuiteは,東北大学加齢医学研究所で開発した脳MR画像解析AI「Hippodeep」で測定した海馬体積と,東北大学データベースから得られた健常人データセット,FDA承認を受けている認知機能テスト「Cantab」を用いて,認知機能低下のリスクを検出し脳健康レベルを算出する。Hippodeepは,約2万5000例の画像データを基に開発された画像解析AIで,1分弱で安定的に海馬体積の測定が可能である。また,健常人データセットには20歳から80歳までの幅広い年齢層のデータベースが用いられている。生活習慣情報と紐づけた同一被験者の約8年間の縦断データ(約400例)も含まれており,個人の属性・生活習慣が脳にどのような変化をもたらすのかを鋭敏に評価することができる。
結果レポートでは,同世代と比較した脳の健康状態や海馬体積,認知機能や生活習慣の分析結果などとともに,個々人に適した生活習慣改善のアドバイスを提供する。これにより,認知機能の維持・改善,認知症を予防するための行動変容をうながすことをねらいとしている。

発表会では,フィリップス・ジャパン代表取締役社長の堤 浩幸氏,CogSmart代表取締役の瀧氏,フィリップス・ジャパン プレシジョン・ダイアグノシス事業部事業部長の門原 寛氏が登壇した。始めに堤氏が主催挨拶に立ち,フィリップスの取り組みとBrainSuiteのねらいについて述べた。堤氏はBrainSuiteについて,「認知症の早期予防について,これまでは明確なディレクションがほとんどないことが課題となっていた。BrainSuiteでは,解析結果を基にどのようなアクションが必要かを示すことができ,認知症予防の課題を解決することができる」と紹介した。そして,今後もエコシステムパートナーと協働し,デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用することで,安心安全で災害に強い社会の構築に取り組み,健康に人生を全うできる環境の整備に注力していくと述べた。
次いで,瀧氏がBrainSuiteの製品紹介を行った。瀧氏は,長年の脳科学研究の成果を社会に還元することがCogSmartの設立目的だと述べ,そのミッションは,認知症にならない“生涯健康脳”の実現と,認知症発症リスクを下げるために生活習慣から改善していく“0次予防”の達成であると紹介。そして,BrainSuiteの意義を次のように述べた。
「健康寿命と平均寿命には約10年のギャップがあるが,高齢で自立生活が送れなくなる一番の原因は認知症である。認知症では,認知機能低下に先行して海馬に萎縮が生じるが,海馬は生活習慣を改善することで神経新生をうながすことができるとされている。BrainSuiteはその点に着目したプログラムで,個々人のリスク要因を客観化することで,認知症予防のための生活習慣改善への介入が可能になる」
最後に,門原氏が同社のヘルスケアIT戦略について紹介した。フィリップスでは,「統合されたプラットフォームによる医療従事者の負担軽減とチーム医療の実現」「コロナ禍における地域施設間データ連携と遠隔診断の加速」「AI技術を用いたワークフローの最適化と治療方針の早期決定」の3つを柱にヘルスケアITに取り組んでいる。門原氏は,2021年のヘルスケアITのポートフォリオとして,新しい読影PACSビューワ「Philips Vue PACS」や,遠隔画像診断のワークフローを最適化する“ワークフローオーケストレーター”,AIによって検出された病変をリストに反映して優先度を示す「AIトリアージ」について紹介した。

堤 浩幸 氏(代表取締役社長)

堤 浩幸 氏(代表取締役社長)

瀧 靖之 氏(東北大学/ CogSmart代表取締役)

瀧 靖之 氏(東北大学/ CogSmart代表取締役)

   
門原 寛 氏(プレシジョン・ダイアグノシス事業部事業部長)

門原 寛 氏(プレシジョン・ダイアグノシス事業部事業部長)

 

 

現在の認知機能・脳健康状態を同世代と比較評価した結果

現在の認知機能・脳健康状態を同世代と比較評価した結果

 

個々人のリスクに合わせた生活習慣改善のアドバイスを提供

個々人のリスクに合わせた生活習慣改善のアドバイスを提供

 

●問い合わせ先
(株)フィリップス・ジャパン
ブランドコミュニケーション部
TEL 03-3740-5896
www.philips.co.jp/healthcare

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