GEヘルスケア・ジャパンが「GE Healthcare Japan Edison Seminar 2021 Series 1」を開催
——“Intelligently Efficient”をテーマに,基調講演とパネルディスカッションでこれからの医療を考える

2021-10-11

GEヘルスケア・ジャパン


“Intelligently Efficient”をテーマに開催

“Intelligently Efficient”をテーマに開催

GEヘルスケア・ジャパン(株)は2021年10月2日(土),ベルサール八重洲(東京都中央区)において,「GE Healthcare Japan Edison Seminar 2021 Series 1」を開催した。同社にとって毎年恒例のセミナーであるが,昨年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によりWebのみで配信。今回は実地開催に合わせてWeb配信もされるハイブリッド形式で行われた。
同社代表取締役社長兼CEOの多田荘一郎氏は,開会の挨拶として,「プレシジョン・ヘルスの実現に向けた新たな価値の共創」と題しプレゼンテーションを行った。多田氏は,コロナ禍における日本の医療の現状について,全国紙の記事の中から,医療提供体制,医療・働き方,病床ひっ迫,人工呼吸器といったキーワードを抽出し,重要な課題として提示した。その上で,GEはトーマス・エジソン氏が創業して以来,イノベーションの実装により社会の課題を解決してきたと述べた。そして,COVID-19対策のために生み出された製品・サービスとして,コンテナ型簡易CT「CT in Box」や疾病管理ソリューション「コマンドセンター」,オンライン研修・デモンストレーション,顧客向けサービス「OriGEn」を紹介した。多田氏はさらに,精密な診断・治療・観察のための製品・ソリューションにより,一人ひとりに最適化された質の高い医療を効率的に提供するプレシジョン・ヘルスをめざすと述べた。このプレシジョン・ヘルスの実現に向けて,GE Healthcareでは,5月6日にPET製剤を手がけるZionexa社,9月23日には手術支援の超音波画像診断システムを開発するBK medical社を買収した。多田氏はこれらを紹介し,パートナーシップを通じたプレシジョン・ヘルスの実現を強調した。

多田荘一郎 氏(代表取締役社長兼CEO)

多田荘一郎 氏(代表取締役社長兼CEO)

 

多田氏の挨拶に続き,基調講演2題とパネルディスカッションが行われた。基調講演では,まず黒川 清氏(日本医療政策機構代表理事)が登壇。「日本における医療課題とそれを取り巻くリーダーシップへの期待〜COVID-19対策などを振り返って〜」と題して講演した。黒川氏は,世界の変化と日本の立ち位置について,政治や経済における世界のリーダーを紹介したほか,日本のGDPの伸びが1950年代から現在に至る間に鈍化している状況,企業の時価総額ランキング,ベンチャーキャピタルの投資先などを示して日本の存在感がなくなっていると指摘。世界が急速に変化する中で取り残されつつあると述べた。さらに,学術分野でも論文のインパクトファクターが米国,中国などに差を付けられており,研究開発費も低いという課題に言及した。また,米国へ留学して博士号を取得する研究者数も減少しており,日本の大学には次の世代を育成することが求められているとし,学生や若い研究者は海外に雄飛すること,他分野の人材と交流することが大事であると訴えた。この後,黒川氏は,COVID-19によって世界が受けた影響について,各国の米国,英国,中国,日本などにおける死因のデータを示し各国の状況について解説。データから得られた知識をいかに活用するかが大切であると述べた。最後に,黒川氏は,米国の科学者であるAbraham Flexner氏の言葉である“Usefulness of Useless Knowledge”を引用し,研究者は自分の好きなことを研究するために積極的に海外に行くべきであり,大学や企業はそれを支援することが求められるとまとめた。

黒川 清 氏(日本医療政策機構)

黒川 清 氏(日本医療政策機構)

 

次いで,基調講演の2題目として,石井賢二氏(東京都健康長寿医療センター研究所神経画像研究チーム研究部長)が座長を務め,岩坪 威氏(東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻神経病理学分野教授)が,「アルツハイマー病の疾患修飾療法実用化に向けて:分子イメージングとバイオマーカーによる加速」をテーマに講演した。岩坪氏はまず,アルツハイマー病の機序について取り上げ,アミロイドβとタウタンパク質が神経細胞にとどまり,アミロイドβはアルツハイマー病の原因,タウタンパク質の凝集は細胞死の原因となり認知機能の低下に関連すると説明。アミロイドβとタウタンパク質は治療の標的になると述べた。その上で岩坪氏は,治療薬の開発状況について触れ,病理学的にはアルツハイマー病が早期より発症していることから,治療薬の評価にはプレクリニカル期や軽度認知障害(MCI)期でのPETとバイオマーカーによる精密な測定が必要だと解説した。これを踏まえて,岩坪氏は,MCI期や軽度認知症期の認知機能変化を測定する米国のADNI研究,日本のJ-ADNI研究の成果を紹介。アミロイドPETにより,MCI期の2/3にアルツハイマーが認められたという結果を示した。また,岩坪氏は,アルツハイマー病の治療として,抗アミロイドβ抗体療法の解説をした。治療薬の候補として,抗体がアミロイドに結合し貪食・除去を促進するアデュカヌマブやドナネマブ,抗体がアミロイドβに結合しアミロイド凝集を抑制するソラネズマブがあると説明。その臨床試験の結果について,ソラネズマブは顕著な効果を示せなかったこと,アデュカヌマブは2021年6月に米国食品医薬品局(FDA)が迅速承認したこと,ドナネマブは第2相臨床試験で認知機能低下が32%抑制されたことを紹介した。さらに,岩坪氏は,アデュカヌマブの治験が成功した要因として,MCI期の被検者も対象にしたこと,25%程度存在するアルツハイマー病ではない参加者をアミロイドPETによって除外できたことなどを挙げた。このほか,岩坪氏は,より早期のプレクリニカルアルツハイマー病に対する予防治療が今後の目標となるとして,日本医療研究開発機構,東京大学などが進めているアルツハイマー病の予防薬の開発をめざすJ-TRCを紹介した。講演のまとめとして,岩坪氏は今後の展望,課題について,中等度認知症以降に有効な治療法を開発し提供すること,アデュカヌマブにおける医療経済的な課題を克服すること,適正な対象となる患者の診断にはアミロイドPETやバイオマーカーが必須であることを挙げ,認知症の発症を予防する超早期治療の実現が目前に迫っていると期待を示した。

座長:石井賢二 氏(東京都健康長寿医療センター)

座長:石井賢二 氏(東京都健康長寿医療センター)

 

岩坪 威 氏(東京大学)

岩坪 威 氏(東京大学)

 

基調講演に続き,パネルディスカッション「Intelligently Efficient〜より良いケアを,より効率的に」が行われた。パネリストとして,小松本 悟氏(足利赤十字病院名誉院長),富山憲幸氏(大阪大学大学院医学系研究科放射線統合医学講座放射線医学教室教授),増井孝之氏(社会福祉法人聖隷福祉事業団総合病院聖隷浜松病院副院長/PETセンター長/医療情報センター長/放射線科部長),多田氏の4名が登壇。モデレータを松葉香子氏(GEヘルスケア・ジャパン執行役員/アカデミック本部長兼エジソン・ソリューション本部長)が務めた。まず,松葉氏から「ご所属施設における良いケアとは何か? その中での効率性とは? それらを両立しようとするときの課題,課題解決案など」という質問が提示された。これについて小松本氏は,「リーダーシップとガバナンス」をテーマにプレゼンテーションし,リーダーシップは投資した資源よりも大きなものを生み出す生産体をつくること,あらゆる決定と行動において今必要なものと将来必要なものを調和させることだと述べた。そして,リーダーシップの定石として,拠りどころとして組織のドメインをつくること,語り続けること,旗を振り続けることなどを挙げた。また,リーダーに求められる資質として意識,決断力,実行力,迅速性の4つについて説明し,組織を先導するのではなく職員・医師がいるべき時間と空間をつくることが大事だと述べた。富山氏は,日本医学放射線学会副理事長の立場から,同学会の概況を紹介した上で,放射線医学における良いケアの実践,ケアの効率性の両立を実現するためのキーワードとして,“遠隔”と“人工知能”を挙げた。増井氏は,聖隷浜松病院における医療安全の取り組みを紹介し,「報告する文化」「公正な文化」「学習する文化」「柔軟な文化」を醸成することが大事だとして,医療安全管理体制などを解説。さらに,画像診断報告書の見落としを防ぐためのシステムを説明した。次に,松葉氏から2つ目の質問「画像診断領域におけるICT・IoT/AIの活用についての具体的な取り組みは?」が出された。この問いに対して増井氏は,MRI検査において膨大な画像を読影するためには撮像の速さと高画質であることが重要であり,それを可能にする技術としてディープラーニングについて言及。ディープラーニング画像再構成技術を用いた症例画像を提示し,撮像時間の短縮と高画質を両立できていると述べた。一方,富山氏は,放射線医学における人工知能の利用について,画像診断装置への応用と病変の検出・診断(読影)への応用の2点から説明した。さらに,富山氏は,マネージメントの視点から,人工知能は昼夜を問わず短時間で大量の読影することが可能であるものの,キーカスタマー(患者)に対して責任をとることができず,納得も得られないとし,医師に取って代わる存在となるのは難しいと述べた。最後に,増井氏,富山氏,小松本氏から参加者,視聴者に向けたメッセージが送られ,パネルディスカッションは終了した。

小松本 悟 氏(足利赤十字病院)

小松本 悟 氏(足利赤十字病院)

 

富山憲幸 氏(大阪大学)

富山憲幸 氏(大阪大学)

 

増井孝之 氏(聖隷浜松病院)

増井孝之 氏(聖隷浜松病院)

 

モデレータ:松葉香子氏(執行役員/アカデミック本部長兼エジソン・ソリューション本部長)

モデレータ:松葉香子氏(執行役員/アカデミック本部長兼エジソン・ソリューション本部長)

 

良いケアと効率性,デジタル技術の活用について意見が出されたパネルディスカッション

良いケアと効率性,デジタル技術の活用について意見が出されたパネルディスカッション

 

すべてのプログラム終了後には,毛受義雄氏(GEヘルスケア・ジャパン執行役員/イメージング本部長)が挨拶を行い閉会となった。なお,10月8日(金)〜31日(日)には,「GE Healthcare Japan Edison Seminar 2021 Series 2」がWeb形式(オンデマンド配信)で行われ,Series 1もアーカイブ配信される。

毛受義雄 氏(執行役員/イメージング本部長)

毛受義雄 氏(執行役員/イメージング本部長)

 

●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン(株)
コーポレート コミュニケーション
TEL 0120-202-021
www.gehealthcare.co.jp

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