“MR unlimited; Towards 100”をテーマに第50回日本磁気共鳴医学会大会(JSMRM 2022)が開催

2022-9-14

MRI


100回に向けて“MR unlimited; Towards 100”がテーマ

100回に向けて“MR unlimited; Towards 100”がテーマ

第50回日本磁気共鳴医学会大会(JSMRM 2022)が2022年9月9日(金)〜11日(日)の3日間の日程で,名古屋国際会議場(愛知県名古屋市)とライブ/オンデマンド配信によるハイブリッド方式で開催された。第50回という節目を迎えた今回,長縄慎二氏(名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻高次医用科学講座量子医学分野)が大会長を務めた。さらに,副大会長として,竹原康雄氏(名古屋大学大学院医学系研究科新規低侵襲画像診断法基盤開発研究寄附講座)と田岡俊昭氏(名古屋大学大学院医学系研究科革新的生体可視化技術開発産学協同研究講座)が脇を固めた。テーマには,“MR unlimited; Towards 100”が掲げられた。初日9日の開会式では,長縄大会長が今回のテーマについて,私たちはMRIの無限のポテンシャルを十分に引き出せておらず,100%生かせるようにしたいとの思いを込めたと述べた。それとともに,100回大会をめざすという意味も込められているという。

名古屋国際会議場

名古屋国際会議場

 

大会長:長縄慎二 氏(名古屋大学)

大会長:長縄慎二 氏(名古屋大学)

 

節目の大会として,今回は随所に新しい試みが取り入れられた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が続いているが,今後も感染症や台風などの自然災害の影響を抑えて開催できるように,ハイブリッド方式のメリットを生かしたプログラムになっている。その一つが,教育講演をオンデマンド化して事前配信を行い,会期中に会場内で質疑応答を行えるようにした「Meet the teacher」だ。また,複数人が3分間の発表を連続して行い,その後に総合討論を行う「PowerPitch」,講演をオンデマンド配信する「Premium Lecture on Demand」,研究者同士のマッチングを行う「シーズニーズマッチングセッション」が設けられた。

さらに,第50回記念大会特別企画として,講演,シンポジウム,パネルディスカッションを用意。このほか,特別講演が3題,シンポジウムが21題などで構成された。なお,期間中の10日,11日には,田岡氏が大会長を務めるISMRM JPC 2022も開かれた。

第50回記念大会特別企画は長縄大会長が企画した。企画の意図について長縄大会長は,日本の研究力が落ちていると言われており,この課題を解決する指針となるようなプログラムとして設けたと説明した。その一つ第50回記念大会特別講演として,9日10時から第1会場において,青木茂樹氏(順天堂大学大学院医学系研究科放射線診断学)が,「脳MRIの歩み:領域横断的『横糸』として」をテーマに講演した。座長は長縄大会長が務めた。青木氏は,まず大会が開始された1981年から現在までのMRIの歩みを振り返った。1980年代に,多断面の画像を被ばくすることなく撮像できるという利点を生かし,脳神経外科での腫瘍の診断に用いられたMRIは,ガドリニウム造影剤による造影MRIが可能になり適応が拡大。小児科や神経内科領域でも用いられるようになった。さらに,90年代になると,DWIによって脳卒中診療が進歩した。その後,脳MRIはfMRIやDTIなどによって発展し,対象となる領域を広げていった。こうした歴史を解説した上で青木氏は,現在順天堂大学で進めているdMRIやCESTなどの撮像法・解析法の研究について概要を紹介した。さらに,MRIにおける人工知能(AI)の活用についても取り上げ,放射線科医はAIを使いこなすことが重要だと強調した。

青木茂樹 氏(順天堂大学)(写真左)と長縄大会長

青木茂樹 氏(順天堂大学)(写真左)と長縄大会長

 

9日14時35分からは,同じく第1会場で第50回記念特別シンポジウム「日本発をどう作り育てるか」が行われた。原田雅史氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部放射線医学分野)と長縄大会長が座長を務めて5名が発表した。最初に登壇した高原太郎氏(東海大学工学部医工学科)は,「日本発のなにかを創出するために,MRI撮像と診断の両者にチャレンジしよう」をテーマに,DWIBS法の開発から普及,保険適用に至る経緯を説明した。高原氏は,自身の活動を振り返った上で人材育成の重要性に言及して,本学会が常設実習教育を行い撮像ができる医師,診断ができる技師を育成し,日本発の研究につながるようにしてほしいを述べた。続いて竹原氏が,「草の根のイノベーション」と題して,自身が開発に取り組んだMRCPについて,その経緯と成果を発表した。また,3人目に登壇した工藤與亮氏(北海道大学大学院医学研究院画像診断学教室/北海道大学病院医療AI研究開発センター)は,「O-17標識水(PSO17)を用いた水動態イメージング」をテーマに発表した。工藤氏は,日本発のMRI造影剤の開発を進めている。その概要を解説した上で,大学や企業との連携のスキームを示した。そして,“日本発”を作り,育てるには,人まね・後追いをしない,プロダクトレビューの研究はしないといったことが重要だと述べた。次いで,佐々木真理氏(岩手医科大学医歯薬総合研究所超高磁場MRI診断・病態研究部門)が,「脳画像を用いた多施設臨床研究の現状と課題」をテーマに,オンラインで発表を行った。佐々木氏は,脳画像を用いる多施設臨床研究の特徴は“多様性”であると説明。さらに,多施設臨床研究を円滑に行うための脳画像のクラウド情報システム「MICCS」について紹介した。5番目に発表した宮崎美津恵氏(カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部放射線科)は,「非造影MRAの開発」と題して,開発の歴史や下肢非造影MRAにおけるFBI法とその撮像技術を解説した。さらに,非造影MRAの開発において医療機関や大学,研究者とのどのようなコラボレーションがあったかを紹介。また,研究者の待遇について米国との違いを示し,研究者が働きやすい環境を築くことの重要性を指摘した。最後に,田岡氏が「拡散画像によるGlymphaticシステムの評価」をテーマに発表した。田岡氏は,脳内における間質液の評価が可能なDTI-ALPS法の開発の経緯を説明したほか,ROIの設定やb値の選択についても紹介した。

大会2日目の10日13時30分からは第1会場で,第50回記念パネルディスカッション「白熱討論 MR unlimited towards 100; いま我々がすべきこと」が行われた。座長は山田 惠氏(京都府立医科大学医学部放射線診断治療学講座)と黒田 輝氏(東海大学情報理工学部情報科学科)が務めた。まず,小畠隆行氏(量子科学技術研究開発機構量子医科学研究所)が,「MRI研究のらせん状の発展とブレークスルー」と題して発表した。小畠氏は,MRIの研究は,過去注目された技術が技術革新によってらせんのように再び注目されるようになるとした上で,医学系出身者が理工学と臨床医学の架け橋となる役目を果たすことが期待されると言及。求められる人材の条件として,楽しく研究できること,相互尊重の環境を作ることを挙げた。続いて登壇した竹原氏は,「MRIを用いた予防・予知医学」と題して発表した。竹原氏は,流れの異常から血流病変を予知するFSI解析,MRCPによる早期膵がん診断について説明し,世界でもMRIの台数が多い日本の事情を踏まえ,膵がんスクリーニングへのMRIの活用が有効だと提案した。3番目に登壇した尾藤良孝氏〔富士フイルムヘルスケア(株)〕は,「MR医学の境界」をテーマに発表した。尾藤氏は,企業として,医師や技師,基礎医学,工学といった多岐にわたる専門領域との境界での研究開発を活性化させることが重要だとして,QSMなどにおける企業としての取り組みを解説した。次いで,関根鉄朗氏(日本医科大学武蔵小杉病院放射線科)が登壇し,「MRIから100%学び,100%活かすために-言語化とcommunication-」と題して,先端技術を活用するための対話やコミュニケーションの重要性について言及した。5番目に登壇した飯間麻美氏(京都大学医学部附属病院先端医療研究開発機構・放射線診断科)は,「MRIは臨床医と患者の夢にどう応えられるか」をテーマに,臨床医に対するMRIへの期待などのヒアリング結果を紹介。臨床医や患者のニーズに応えるためには,診療科同士や異分野,産官学,企業間の連携が重要であり,その仕組みや環境を構築することが求められると述べた。最後に登壇した藤田翔平氏(東京大学大学院医学系研究科生体物理医学専攻/順天堂大学医学部放射線診断学講座)は,「これからの学際研究・異分野融合研究のあり方:若手研究者の立場から」と題して発表した。藤田氏は,COVID-19のパンデミックの中で,オンラインミーティングツールを活用した海外の研究者との共同研究の経験を紹介し,情報共有がスムーズになるなどの利点を挙げ,研究開発の新たな可能性を示した。

研究や臨床のこれからについて意見を交わした第50回記念パネルディスカッション

研究や臨床のこれからについて意見を交わした第50回記念パネルディスカッション

 

最終日の11日には閉会式が行われた。閉会式では,大会長賞の発表が行われた。臨床/疾患部門では原 祥子氏(東京医科歯科大学脳神経外科)の「もやもや病にGlymphatic system機能不全は存在するか?-DTI-ALPS indexによる評価-」,臨床/技術部門では藤田氏の「MR fingerprintingと複素数ニューラルネットワークによる非侵襲アミロイドイメージング」,基礎部門では新田展大氏(量子科学技術研究開発機構量子医科学研究所)の「17O-MRIによる胎児マウスの水動体測定の試み」が最優秀賞を受賞した。なお,次回第51回日本磁気共鳴医学会大会は,2023年9月22日(金)~24日(日)の3日間,軽井沢プリンスホテルウエスト(長野県北佐久郡軽井沢町)で開かれる。大会長は阿部 修氏(東京大学大学院医学系研究科生体物理医学専攻放射線医学講座)が務め,テーマには,「MRIの神髄を極める」が掲げられた。

大会長賞の表彰式〔臨床/技術部門最優秀賞:藤田翔平氏(順天堂大学)(写真左)〕

大会長賞の表彰式〔臨床/技術部門最優秀賞:藤田翔平氏(順天堂大学)(写真左)〕

 

第51回大会長:阿部 修 氏(東京大学)

第51回大会長:阿部 修 氏(東京大学)

 

教育講演をリニューアルした「Meet the teacher」

教育講演をリニューアルした「Meet the teacher」

 

質疑応答を活発に行える「PowerPitch」

質疑応答を活発に行える「PowerPitch」

 

15社が出展した機器展示

15社が出展した機器展示

 

●問い合わせ先
第50回日本磁気共鳴医学会大会
運営事務局
株式会社コンベンションリンケージ内
TEL 052-262-5070
E-mail jsmrm50@c-linkage.co.jp
URL https://www.c-linkage.co.jp/jsmrm50/

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