関西医科大学と島津製作所,がん光免疫療法の臨床研究の開始に伴い記者発表会を開催

2025-4-16

島津製作所


関西医科大学と島津製作所ががん光免疫療法に関する臨床研究を開始

関西医科大学と島津製作所が
がん光免疫療法に関する臨床研究を開始

関西医科大学と島津製作所は,2025年4月1日から2027年9月30日の2年半にわたり,がん光免疫療法に関する臨床研究を行うことを2025年4月15日(火)に発表した。画像診断および尿・血中の生体マーカーを用いて,光免疫療法における術前・術中・術後の治療経過をモニタリングするもので,このような臨床研究は世界初となる(同社調べ)。これに伴い同日,同大学加多乃講堂(大阪府枚方市)での現地開催およびオンラインにて,本臨床研究に関する記者発表会が開催された。

はじめに,同大学理事長の山下敏夫氏が挨拶に立ち,同大学附属光免疫医学研究所の設立の経緯などについて概説した。世界でオンリーワンかつナンバーワンとなる最先端医学研究所を設立したいという構想の下,光免疫療法の可能性に着目。本法を開発した米国国立衛生研究所(NIH)の小林久隆氏を研究所長として招聘し,2022年に同研究所を設立したと述べた。また,光免疫療法は,ごく近い将来,真の意味での第5番目のがん治療法になることへの期待を示した。
次に,同大学学長の木梨達雄氏は,研究所のミッションとして,光免疫療法が優れた治療法であることを証明し次世代の光免疫療法を創生することと,附属病院とともに新たな臨床的な枠組みの中で研究所を活用することを二本柱としているとし,その推進のための支援を行っていると述べた。また,開設から3年間の成果として,新しい光感受性物質を開発し特許申請中であることや,より効率の良い光免疫療法の研究が進行中であることを挙げた。
同大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座主任教授の八木正夫氏は,はじめに頭頸部がんの死亡率の高さや治療の困難さについて述べ,そのような中で光免疫療法は今後,大きな役割を果たしていくとの考えを示した。また,本臨床研究の概要として,近赤外光イメージングシステムを用いて治療前後の蛍光強度を見ることで,光免疫療法の治療精度が向上するとの考えの下,研究を行っていると述べた。
続いて,光免疫療法に関する本臨床研究の主旨説明が行われた。(株)島津製作所スタートアップインキュベーションセンター長の小林 裕氏は,共同研究に至る経緯や,研究の概要を紹介した。同社の近赤外光イメージングシステム「LuminousQuester NI」を用いて術前・術後の薬剤の集積状況や,治療中の蛍光の減衰量をモニターするほか,液体クロマトグラフを用いて患者の尿や血液を術前・術後に分析し,治療の指標となるマーカーを探索することを検討していると述べた。
同大学附属光免疫医学研究所所長・NIH〔米国国立がん研究所(NCI)〕の小林久隆氏は,医学的な観点から本研究の意義を述べた。光免疫療法に用いる薬剤であるIR700は,光を当てると特殊な光を発するという特性を有し,画像化することができるため,頭頸部がんの転移病変の検出や見落とし防止に役立つ技術に発展させていけるとの可能性を示唆した。また,IR700は,光を照射すると物質が変化し蛍光が減衰する。この減衰量をモニターすることで,治療効果判定や治療の完遂の確認,残存腫瘍の消失の確認が可能になれば,最終的にはワンボタンでのオートマチック治療が可能になるとの期待を示した。さらに,術前・術後の尿や血液中に排出されるIR700の分解物を同定し分析することで,治療の進展のモニターや治療効果判定も期待できるとしたほか,血液や尿から免疫の活性化を示す物質の検出も可能になれば,免疫の活性化を確認する診断法も創生できると述べた。

 

●問い合わせ先
(株)島津製作所
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