ローコードとAI活用で課題解決に貢献するノウハウが集結した「Claris カンファレンス 2025」が開催

2025-11-18

クラリス(FIleMaker)

ヘルスケアIT


登場から40年を迎えたClaris FileMakerプラットフォーム

登場から40年を迎えた
Claris FileMakerプラットフォーム

ローコード開発プラットフォーム「Claris FileMaker」,ワークフロー自動化サービス「Claris Connect」,Webアプリ作成ツール「Claris Studio」のユーザーが参加し,最新情報や作成ノウハウ,活用事例を共有する「Claris カンファレンス 2025」が,2025年11月5日(水)〜7日(金)の3日間,虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)で開催された。システム開発のテクニックやFileMakerの最新バージョンの情報を紹介するテクニカルセッション,さまざまな業種,業界の成功事例を紹介するセッション,構築のノウハウを学ぶワークショップなど多彩なプログラムが用意された。イベントのオープニングを飾るキーノートセッションでは,2025年3月にCEOに就任したClaris International Inc.のライアン・マッキャン氏が登壇し,FileMakerなどの最新情報や今後のソリューション展開を紹介した。マッキャン氏はFileMakerが登場から40年を迎えることを紹介し,「FileMakerは常に最先端の技術を取り入れ,それを現場を変革する実用的な形に変えて提供することで,課題解決に取り組む人たちを支援してきた。日本は,精密さや技術を究める情熱によって素晴らしい文化を築いているが,それはClarisがめざす精神と共通している部分だ」と述べ,日本における革新的な事例としてTXP Medicalの救急医療情報システムを紹介した。また,Clarisプロダクトマネージャーのロニー・リオス氏や日本のスタッフが登壇し,サーババックアップ機能やデバイス認証などの開発ロードマップの一部を披露した。

ライアン・マッキャン 氏(Claris International Inc. CEO)

ライアン・マッキャン 氏
(Claris International Inc. CEO)

 

7日には医療・ヘルスケアに関連する事例を取り上げるメディカルセッションがランチョンを含めて6講演行われた。
M-1「Claris FileMakerが支えたCOVID-19パンデミック現場〜電子カルテへのODBC接続による患者情報取得と応用〜」では,中国労災病院の小西央郎氏がコロナ禍でのFileMakerの活用事例を報告した。小西氏は,院内感染対策に電子カルテシステムとデータ連携したFileMakerのカスタムAppを構築してきた(2018年2019年 )。その経験が2020年から始まったCOVID-19パンデミック(コロナ禍)で,発熱外来の受付や発生届などの帳票作成,トリアージ外来でのCT検査のWebビューワ,HERSYSへのデータ転記システム,蓄積したデータによる臨床研究などとして活用された。小西氏は,「コロナ禍では流行の時期や株によって重症度が異なり,求められる医療が変化した。それに対して,その都度システムをスクラップアンドビルドして迅速に対応することが必要で,FileMakerには助けられた」と述べた。

小西央郎 氏(中国労災病院)

小西央郎 氏(中国労災病院)

 

M-2「医療DX『内製開発で陥りがちな罠』─現場主導で息の長いカスタムAppを作るには?」では,深澤真吾氏(松波メディカルソリューション)が,400を超えるカスタムAppが登録されているFileMakerベースの医療情報システムの構築と運用の経験から,そのノウハウや考え方を講演した。岐阜県の松波総合病院は,iPhone800台を導入し,FileMakerプラットフォームで構築され基幹の電子カルテシステムと連動して稼働する「Clinical Supporting System(CSS)」が運用されている。深澤氏は,同院のDX事例として,iPhoneの活用状況やコミュニケーションプラットフォーム「Dr2GO」の運用,生成AIによる文書作成支援,FileMakerによるオンライン勤怠管理やコールバック(外線発信管理)などの取り組みを紹介した。その上でFileMakerの内製システムを持続的に運用・管理するためには,効率化の先にある真の目的を見極め,個人ではなくチームで当たる重要性を挙げた。

深澤真吾 氏(松波メディカルソリューション)

深澤真吾 氏(松波メディカルソリューション)

 

M-3では,「10年経っても現役〜医療・介護情報連携システム『北まるnet』に学ぶ、持続可能なシステム構築と運用〜」について,田頭剛弦氏(北星記念病院)が講演した。北まるnetは,北海道北見市で構築,運用されている医療と介護の情報共有システムである(インナビネットの事例記事 )。FileMakerによる病院間連携プラットフォームであるDASCH Proで構築されており,2011年に病院と介護施設などの情報共有システムとしてスタートし,Webでの介護認定審査会や救急医療情報Pad,電子お薬手帳などの機能を追加していった。当初の登録者数(患者)は100名程度だったが,機能の追加やスマートフォンへの対応,入力方法の多様化などで現在は4000名を超えている。田頭氏は,10年以上システムを継続できた理由として,必要なシステムを形にして提供して利用を無理強いしないことで,そのためには変更や中止に踏み切れる無理のない導入・運用コストであることが重要で,FileMakerベースのDASCH Proを採用したことがプラス要因だったと振り返った。

田頭剛弦 氏(北星記念病院)

田頭剛弦 氏(北星記念病院)

 

M-4「感染管理認定看護師の妻のために! “SSIサーベイランス”の業務改善に挑戦」と題して,西塔丈彦氏(ソウトフォース代表)が講演した。数学教師である西塔氏は,1000床クラスの大病院で感染管理認定看護師として勤務する妻が表計算ソフトで行っていた「手術部位感染(SSI)サーベイランス」の管理業務を,FileMakerのカスタムAppで構築した。西塔氏は妻の扱う表計算ソフトのシートが複雑で巨大化していることを見かねて,表計算は表計算であり台帳ではなく,FileMakerであればデータベース化と業務支援が可能であると構築に着手。医療の門外漢であり,直接現場を見ることができないというハードルの中,日本環境感染学会のマニュアルや厚生労働省の判定基準などを学び,試行錯誤で構築した経過を紹介した。

西塔丈彦 氏(ソウトフォース)

西塔丈彦 氏(ソウトフォース)

 

メディカルセッションの最後のM-5では,「FHIR・診療報酬・医療DX──迫られる病院経営のデジタル変革と実践ソリューション」について,2025年からTXP Medicalに加わった秋山幸久氏(元・株式会社エムシス代表取締役)が講演した。秋山氏は,「医療DX令和ビジョン2030」として進められている全国医療情報プラットフォームの全体像,医療DXの推進に関する工程表を示しながら,電子処方箋管理サービス,電子カルテ情報共有サービス,標準型電子カルテ,診療報酬DXの共通算定モジュールなどについて進捗状況を含めて現状を概説した。電子処方箋管理サービスは,薬局を中心に全体の普及率は36%,電子カルテ情報(3文書6情報)の共有サービスについても仕様の変更などで工程表から大きく遅れているのが現状だ。秋山氏は,FileMakerプラットフォームの電子カルテ「ANNYYS(エニーズ)」での実装やHL7 FHIRへの対応なども含めて,電子処方箋や情報共有サービスとの連携のポイントを紹介した。

秋山幸久 氏(TXP Medical)

秋山幸久 氏(TXP Medical)

 

また,ランチョンセッションでは,TXP Medicalの提供による「なぜ救急隊DXが救急医療の質を上げるのか?~医療データで命を救う自治体DX~」が行われ,同社医療DX事業部部長の大西 裕氏が講演した。大西氏は,同社の救急医療情報共有システム「NSER Mobile」について,山形市と共同で取り組み日本DX大賞2025の地域DX部門大賞を受賞した事例を中心に紹介した。NSER Mobileは,OCR,生成AI,音声入力などを活用して,救急隊の入力負荷を軽減し,医療機関とのリアルタイムの情報共有によって救急医療の効率化と質の向上を両立する。大西氏は,地域の救急搬送システムの構築では,システム導入と同時に市民の理解促進のための広報活動などで信頼関係を構築していくことが重要だと延べた。

大西 裕 氏(TXP Medical)

大西 裕 氏(TXP Medical)

 

展示エリアではスポンサー企業がブースを出展した。出展社は次の通り。(株)寿商会,(株)イエスウィキャン,(株)ジェネコム,(株)テクニカル・ユニオン,(株)サポータス/サポータス・システム・ソリューションズ,Vonage Japan(同),スターティアレイズ(株),サイバートラスト(株),(株)Too,(株)ジュッポーワークス,パットシステムソリューションズ(有),(株)DBPowers,CASwell Inc. / (株)CASO,(株)バルーンヘルプ,(株)国際協力データサービス,(株)アイ・アンド・シー,(株)ウィズダム,(株)アットデル。トレーニング相談として(株)イエスウィキャン,サポータス / サポータス・システム・ソリューションズ,トップオフィスシステム(株),(株)U-NEXUSが出展した。

パートナー企業がClaris製品と連携するソリューションやパッケージ製品などを展示

パートナー企業がClaris製品と連携するソリューションやパッケージ製品などを展示

 

カスタムAppをiPadで紹介

カスタムAppをiPadで紹介

 

システム開発・導入の相談を受け付ける恒例のClaris Barも開店

システム開発・導入の相談を受け付ける恒例のClaris Barも開店

クラリス(FIleMaker)

ヘルスケアIT


TOP