第39回高精度放射線外部照射部会学術大会が開催
2026-3-19
テーマは
「Beyond Precision 高精度放射線治療の次なる展開」
第39回高精度放射線外部照射部会学術大会が2026年3月14日(土),御茶ノ水ソラシティ(東京都千代田区)を会場に開催された。武田篤也氏〔慶應義塾大学医学部放射線科学教室(治療)教授〕が大会長を務め,テーマには「Beyond Precision 高精度放射線治療の次なる展開」が掲げられた。人工知能やビッグデータなどの技術革新によって患者のライフスタイルや価値観に合わせた治療法を選択できる時代に向け,放射線治療の可能性を見つける機会とすることを目的としている。このテーマの下,特別講演3題,シンポジウム4セッション,パネルディスカッション2セッションには,すべて「Beyond」を冠したタイトルがつけられた。
大会長:武田篤也 氏(慶應義塾大学)
開会式に続いて行われたシンポジウム1「Beyond Precision:高精度放射線治療のさらなる展開」では,中村光宏氏(京都大学大学院医学研究科)と武田氏が座長を務め5題の発表があった。
5名が登壇したシンポジウム1「Beyond Precision:高精度放射線治療のさらなる展開」
まず,中村氏が「産学連携WGによるマーカーレス動体追尾VMATの社会実装に向けた取り組みと将来展望」と題して発表した。中村氏は,体内マーカー留置や商用マーカーレス動体追尾照射の課題を指摘した上で,(株)日立ハイテクの「OXRAY」をベースに開発を進めているマーカーレス動体追尾VMATについて解説。将来的にはAIによる腫瘍の位置確認支援技術との融合を見据えていると説明した。
次いで,登壇した木村祐利氏〔アイラト(株)〕は,「AIによる治療計画の再定義―精度のその先へ」をテーマに発表した。同社は放射線治療のAI開発を手がけている。木村氏はAIによるコンツーリングや線量分布の自動生成技術を説明した上で,課題についても言及。ガイドラインの重要性などを指摘した。
続いて,小熊航平氏〔慶應義塾大学医学部放射線科学教室(治療)〕が発表した。「個別化治療の未来は医用画像にある」をテーマにした発表の中で小熊氏は,遺伝子情報に基づく治療線量の個別化が期待されるものの空間・時間情報を得られないという課題を指摘。この課題解決には医用画像が重要な役割を果たすとし,画像情報を基にした治療反応に基づく適応治療(response guided ART)について解説。同大学でのMRIを用いた子宮頸がんの放射線治療における線量最適化に関する研究を取り上げた。
4番目に登壇した若月 優氏(QST病院)は,「重粒子線治療の将来展望」をテーマに発表した。重粒子線治療は,日本が世界をリードしており,適応を拡大しているが,さらなる普及が期待されている。若月氏はこうした現状を踏まえて,炭素・酸素・ヘリウムの特性を生かしたマルチイオン照射,中性子捕捉反応を利用した新治療法「ENCEPT」,さらに量子メスなど,現在開発が進む技術の最前線を紹介した。
最後に,野村基雄氏(京都大学医学部附属病院腫瘍内科)が登壇。「放射線治療と免疫チェックポイント阻害薬の相乗効果:高精度放射線治療が担う新たな役割と今後の展望」をテーマに発表した。野村氏は,食道がんに対するニボルマブと化学放射線療法を組み合わせたNOBELトライアルの成果などを報告。高精度放射線治療と免疫チェックポイント阻害薬による完全奏効率向上の可能性に言及した。
この後,行われたシンポジウム2「Beyond AI:AIと共生する未来を描く」では,茂松直之氏(埼玉メディカルセンター放射線治療科)と
GMOヒューマノイド ロボットG1〔GMO AI&ロボティクス商事(株)〕が座長を務めて,3名が発表した。
まず陣崎雅弘氏〔慶應義塾大学医学部 放射線科学教室(診断)〕が登壇。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」において取り組んだAIホスピタルについて,院内の組織体制や段階的に進めているAI実装,DX施策を解説した。
2人目として発表した橋本正弘氏(厚生労働省医政局研究開発政策課)は,「政府のAI戦略から医療AIに関する具体施策について」と題して,政策動向について紹介。次いで登壇した塩見浩也氏〔(株)RADLab〕は,「Vibe Codingによるソフトウェア開発―AIでどこまでできるか?―」と題して,AI技術を用いた自然言語によるプログラミングで医療用ソフトウエアを開発した経験を報告した。
また,シンポジウム3「Beyond Informed Consent:Shared Decision Makingその先へ」では,大西 洋氏(山梨大学医学部放射線治療学講座)が座長を務めて,3題の発表が行われた。
最初に登壇した大坂和可子氏(慶應義塾大学看護医療学部)は,「海外におけるShared Decision MakingとDecision Aidsのエビデンスと臨床への実装の課題」をテーマに発表した。大坂氏は,インフォームド・コンセントとの課題を説明した上で,シェアド・デシジョン・メイキングによって,より質の高いインフォームド・コンセントが可能になると述べた。
次いで,「がん治療選択における協働意思決定と『お・ち・た・か』―ディシジョンエイドの効果と実践―」をテーマに,中山和弘氏(聖路加国際大学大学院看護学研究科)が発表。意思決定の手順として,選択肢(オプション)・長所・短所・価値観の頭文字をとった「お・ち・た・か」について解説した。
なお,次回第40回高精度放射線外部照射部会学術大会は,2027年5月28日(金),29日(土)の2日間,大阪国際会議場(大阪市北区)を会場に行われる。大会長は松尾幸憲氏(近畿大学医学部放射線医学教室放射線腫瘍学部門主任教授)が務め,「未来へつなぐ高精度放射線治療」がテーマに決まった。また,The 8th FARO Meetingが同時開催となる。
●問い合わせ先
第39回高精度放射線外部照射部会学術大会
運営事務局
株式会社SKアペックスプラン内
TEL 03-3523-3722
E-mail info@skap.jp
