「MR維新─知の噴火が未来を描く─」をテーマに,第54回日本磁気共鳴医学会大会(JSMRM2026)が開催
2026-10-29
大会テーマは「MR維新─知の噴火が未来を描く─」
第54回日本磁気共鳴医学会大会(JSMRM2026)が,2026年10月16日(金)〜18日(日)の3日間,城山ホテル鹿児島(鹿児島県鹿児島市)で開催された〔オンデマンド配信は,2026年11月16日(月)〜2027年1月29日(金)正午〕。大会長は吉浦 敬氏(鹿児島大学)が務め,テーマには「MR維新─知の噴火が未来を描く─」が掲げられた。16日の開会式で挨拶した吉浦氏は,英語で海外からの参加者を歓迎し,現在および将来の共同研究につながることを期待した。続いて,遠方からの参加者に謝意を述べ,予想をはるかに上回る演題の応募があったことを報告した。
大会長:吉浦 敬 氏(鹿児島大学)
主なプログラムとして,大会企画が4セッション,特別講演が2題,ハイライト講演が2題,シンポジウムが27セッションのほか,ASMRM Symposium Sessionなどが用意された。特に,医療分野でのAIの実装が広がり,日常診療での活用が進んでいることを踏まえ,AIに関するセッションも多く設けられた。
AI関連のセッションでは,開会式に続き第1会場で,シンポジウム1「Radiomics・AIの臨床実装における課題と注意点 / 伝統と革新のMR維新─Radiomicsから生成AIへ,データ科学と画像工学が織りなす『知』の共創─」が行われた。立花泰彦氏(量子科学技術研究開発機構)と隈丸加奈子氏(順天堂大学)が座長を務め,5名が発表した。このうち最初に登壇した立花氏は,「アルゴリズムはできた。さて,どう使う?」と題し,PACSに改変を加えずに画像の取得から解析,結果の書き戻しまでを自動化するミドルウエアを紹介し,処理時間の大幅な短縮を報告した。また,多施設展開では未承認プログラムを用いる際の制度的適合性が壁になるとして,事例やテンプレートを学会単位で共有する臨床評価フレームワークを提言した。寺田康彦氏(筑波大学)は,「DL画像再構成の成り立ちとリスク」をテーマに,ディープラーニング(DL)画像再構成についてノイズ低減,高速再構成,超解像の3つに分類して原理を解説した。4人目として登壇した中浦 猛氏(熊本大学)は,「近年の生成AIの進歩と臨床実装の可能性および課題」と題し,大規模言語モデル(LLM)の進歩を概説。構造化MRIレポートを用いた脳腫瘍鑑別の研究での課題を報告し,AIは「使えるかどうか」ではなく「どう使うか」が重要だとした。最後に登壇した平原大助氏(帝京平成大学)は,「MRIにおけるAIは何を学び,何を書き換えるのか?─Radiomics・深層学習の評価設計─」をテーマに,スライス単位のデータ分割によるデータリークなどの注意点を解説。生成AIによる結果の報告に誤りが生じる例を示し,敵対的な監査を組み込んだ検証の仕組みや,専門家による確認の重要性を強調した。
3日間の大会ではAIに関するセッションを数多く用意(写真はシンポジウム1「Radiomics・AIの臨床実装における課題と注意点 / 伝統と革新のMR維新─Radiomicsから生成AIへ,データ科学と画像工学が織りなす『知』の共創─」の総合討論)
同じく16日には,第1会場でシンポジウム7「AIによるフィルムリーディング」が行われた。山本 憲氏(順天堂大学)と小林和馬氏(国立がん研究センター研究所)が座長を務め,院内ですぐに使えるオンプレミスのAI画像診断支援システムの構築をめざして3チームが参加した。各チームは,ネットワークに接続しない共通のワークステーション上で動作するモデルを開発。日本医学放射線学会の協力を得て,放射線診断専門医試験の過去問題で性能を比較した。山岸陽助氏(東京大学)らの東京大学チームは,過去問題を用いた選好最適化(DPO)によるモデルの調整と,複数回の回答の多数決を組み合わせた。伊藤倫太郎氏(名古屋大学)らの名古屋大学チームは,複数の最新モデルを検証し,推論機能を用いたシンプルな構成を採用した。綿谷朋大氏(滋賀医科大学)らの滋賀医科大学チームは,検索拡張生成(RAG)に加え,日本語,英語,中国語で回答させるセルフコンシステンシーとマルチエージェント討論を組み合わせた。81問の正答率は,滋賀医科大学チームが84.0%,東京大学チームが81.5%,名古屋大学チームが79.0%となった。3チームが同系統のモデルを用いたこともあり,得意・不得意な問題は共通する傾向が見られた。後半では,未学習の高難度症例やMR専門技術者認定試験の問題を用いてリアルタイムの読影検証が行われた。
2日目にも第1会場でAI関連のセッションが設けられた。大会企画3「AIが現場にやって来た:日本と世界での活用と教育」では,渡邉嘉之氏(滋賀医科大学)と有村秀孝氏(九州大学)が座長を務め,国内外からの5名が発表した。まず前出の伊藤氏が,「画像診断AIの導入から検証へ:日本の現場での経験と今後の教育」と題して講演。薬機法承認ずみの脳動脈瘤検出AIを自施設の442例で検証したところ,ソフトウエア単独の感度は77%で,施設が変わると性能は低下しうるとして,継続的な検証が必要だと述べた。また,AIの誤った提示に引きずられる自動化バイアスへの注意を促し,最終的には人が確認する仕組みの重要性に言及した。続く佐保辰典氏(小倉記念病院)は,「AIが現場にやって来た:日本の診療放射線技師における教育と臨床実装の現在地と将来展望」をテーマに講演。AIの使用可否はモデルの性能だけでなく,確かめやすさと誤った場合の代償で判断すべきだとし,AIがどこで使えなくなるかを判断できる技師をめざすべきだと指摘。診療放射線技師の養成教育では,AIの教育内容が各養成校に任されている現状を課題に挙げた。
2日目の第1会場では,シンポジウム20「MRIの基礎を教えてくれるチャットボットを作ろう」も行われた。前出の山本氏が座長を務めたハンズオン形式のセッションで,参加者は「Codex」(OpenAI社)を用い,MRIの操作マニュアル,造影検査の冊子を学習させて,チャットボットを作成した。
また,既存のマクロ環ガドリニウム造影剤と比較してガドリニウム用量を60%低減したガドクアトランが2026年5月に販売され注目されている。こうした背景も踏まえて,初日16日には第1会場で大会企画1「新世代MRI造影剤」が設けられた。大会長の吉浦氏と森 墾氏(自治医科大学)が座長を務め,海外からの講演者を含め4名が登壇した。2番目に発表した工藤與亮氏(北海道大学)は,「新世代MRI造影剤ガドクアトラン:4量体高緩和度マクロ環型製剤による低用量化」をテーマに発表した。工藤氏は,ガドクアトランについて,ガドリニウム量を低減しても既存製剤と同等の有効性が示されたと報告した。次いで登壇した田岡俊昭氏(名古屋大学)は,「高緩和能造影剤ガドーピクレノールの特徴と臨床的有用性」と題し,薬機法承認に向けて準備が進められているガドーピクレノールについて解説を行った。田岡氏は,ガドーピクレノールの国内第III相臨床試験の結果について,0.05mmol/kgで既存製剤の0.1mmol/kgと同等の造影効果が得られたことなどを紹介した。最後に登壇した対馬義人氏(群馬大学)は,「新たなガドリニウム造影剤導入にあたって知っておきたいこと」をテーマに,腎性全身性線維症(NSF),沈着,急性副作用,環境への排出,原料供給の5つの課題を取り上げた。
ガドクアトランの販売開始などにより関心を集めた大会企画1「新世代MRI造影剤」
このほかのプログラムでは,最終日18日の第2会場において,シンポジウム24「MRIの安全性情報:どう伝えればいいの?第2弾」が設けられた。座長は,黒田 輝氏(東海大学)と片岡正子氏(京都大学医学部附属病院)が務めた。最初に登壇した土`井 司氏(高清会高井病院)は,「安全啓発活動のゴール」と題し,安全性試験未実施の機器の検査可否を現場が判断せざるを得ない課題を指摘した。2人目に発表した高橋順士氏(虎の門病院分院)は,「MRIの安全性情報:どう伝えればいいの?第2弾─看護師らとのMR安全性情報の共有─」をテーマに,看護師らへの調査で約半数がMRIを放射線検査と誤認していたことなどを報告。岡田裕樹氏(ハイメディック京大病院)は,「総合検診施設におけるMRI安全確認の現状と課題:全国12拠点へのアンケート調査から」と題し,スタッフの77%が確認時に判断に迷った経験があると述べた。松井 豊氏(医薬品医療機器総合機構)は,「MR安全性に関する情報提供について(PMDAの立場から)」をテーマに,添付文書における記載の現状と課題を解説した。
また,閉会式前に行われたシンポジウム27「意外と知られていないMRIの撮像技術と将来展望」では,竹森大智氏(大阪公立大学医学部附属病院)と坂田健太郎氏(東京大学医学部附属病院)が座長を務めて,頭部,腹部,整形の各領域における撮像技術が取り上げられた。垂脇博之氏(大阪大学医学部附属病院)は,「頭部MRI領域における最新技術と次なる一手」と題し,SWIに超解像処理を適用することで,多発性硬化症に特異的な中心静脈徴候が明瞭に描出されることなどを紹介した。立川圭彦氏(唐津赤十字病院)は,「腹部MRI―意外と知られていない撮像技術と将来展望―」をテーマに,T2 prepを併用した3D MRCPの撮像条件の考え方や,幼児における腎動脈の撮像の経験を報告した。畠山遼兵氏(市立函館病院)は,「整形領域MRI―意外と知られていない撮像技術と将来展望―」と題し,患者の痛みに配慮したポジショニングやDL画像再構成による高速化,骨を描出するMR bone imagingの活用について解説した。
シンポジウム27の後には,大会長賞表彰と閉会式が行われた。大会長賞表彰では,大会長の吉浦氏から臨床系,臨床系/技術,基礎系の3部門で最優秀大会長賞と大会長賞が授与されたほか,6名に優秀ポスター大会長賞が贈られた。また,閉会式では,次回第55回大会(JSMRM2027)の大会長を務める堀 正明氏(東邦大学医療センター大森病院)が挨拶に立った。次回は2027年9月10日(金)〜12日(日)に幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催され,テーマには「We Love MRI」が掲げられる。堀氏は,MRIの魅力や可能性を改めて感じてもらえる大会にしたいと述べた。最後に吉浦氏が挨拶し,テーマのとおり多くの発表と活発な議論が行われたとして参加者に謝意を示し,大会期間中は桜島もいつもより多めに噴火していたと,盛況だった3日間を振り返り,挨拶を締めくくった。
大会長の吉浦氏が臨床系,臨床系/技術,基礎系の3部門とポスター発表の受賞者を表彰
第55回大会大会長:堀 正明 氏(東邦大学医療センター大森病院)
