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2022年11月号

がん放射線治療の今を知る!~最前線の現場から No.3

東京慈恵会医科大学附属病院の事例(2) 「Radixact」による治療の実際

青木  学(東京慈恵会医科大学放射線治療部)藤井  武(東京慈恵会医科大学附属病院放射線部)

当院の概要とRadixact導入

東京慈恵会医科大学附属病院は,140年前より東京都港区西新橋に拠点を置く特定機能病院である。近くには新橋や虎ノ門,丸の内など多数のオフィス街があり,港区の昼間人口は90万人と日本で最も多い地域である。また,当院の近隣には高度医療を担う医療施設が多数存在しており,それらの施設とも連携しながら高度医療を提供している。
2020年に外来棟が約50年ぶりにリニューアルされ,これを機に放射線治療機器も更新された。この際に新たに「Radixact」(アキュレイ社製)が導入され,現在まで順調に治療患者数を増やし,40名/日の治療を行っている。当院には40ほどの外来診療部門があり,1日の外来患者数は2800~2900名,入院病棟は1000床を有し,すべての悪性腫瘍を扱っている。当院は頭頸部悪性腫瘍および泌尿器悪性腫瘍の症例数がとりわけ多く,進行した症例や再発例などを中心に複雑な放射線治療を行う機会も多い。当院では,合計3台のリニアックを有しており,Radixact 1台,「iX」(バリアン社製)2台(1台は6軸補正可能),計画用CT 1台,画像誘導放射線治療(IGRT)システム「ExacTrac」(ブレインラボ社製)1台,「Flexitron HDR」(エレクタ社製)1台(同室CT)という構成になっている。治療計画装置は,「Precision」(アキュレイ社製)のほかに「Eclipse」(バリアン社製)が用いられている。Radixactで治療する主な症例は,脳,脊髄,耳下腺や消化管など,さまざまなリスク臓器との間に急峻な線量勾配が特に必要とされる脳腫瘍,頭頸部腫瘍,膵臓がん,椎体の定位照射などが中心である。本稿では,近年増加傾向にある膵臓がんに対するRadixactの治療経験について報告する。

膵臓がんに対するRadixactの使用経験

近年増加傾向にある膵臓がんにおいて放射線治療が適応となる病態は,腹腔動脈や上腸間膜動脈,門脈への浸潤のため切除不能な局所進行がんのほか,切除可能性が残る切除不能境界型膵臓がん,および根治手術後の再発症例などがある。
当院でこれまで施行していた三次元原体照射(3D-CRT)では,膵臓を取り囲むように接する胃および十二指腸などの線量制約のため,50Gy程度の線量を均一に投与して終了せざるを得ない場合が多かった。一方で,MD Andersonがんセンターの報告から,膵臓がんでは生物学的等価線量(BED)>70Gyを満たすことで治療成績の改善が期待できることから,現在では60Gy(1.8~2.0Gy/fx)以上を投与することを目標としている。近年,強度変調放射線治療(IMRT)技術の導入によって比較的安全に治療できるようになってきたものの,膵臓周囲の正常組織の複雑な形状に対して急峻な線量勾配を作成する必要から,当院では現在,膵臓がんに対するIMRTはすべてRadixactで行っている。特に術後再発症例では,再発腫瘍および正常組織の形状が複雑で近接していることが多いことから,より高線量(BED>70Gy)を投与しながらも急峻な線量勾配を実現できるRadixactの利点を生かしている。また,当院ではより強力な抗がん剤であるFOLFIRINOXまたはgemcitabine(GEM)+nab-paclitaxel(nab-PTX)を用いた化学療法と併用して放射線治療を行う線量増加PhaseⅠ/Ⅱ臨床試験を開始している。50.4Gy/28回の安全性が確認され次第,54Gy/30回に線量増加が行われる予定である。図1に,当院におけるプロトコールを提示する。
図2には局所進行膵臓がん症例の線量分布図および線量体積ヒストグラム(DVH),図3には膵臓がん術後局所再発症例の線量分布図およびDVHを提示する。ほとんどの症例で腫瘍の中心部である肉眼的腫瘍体積(GTV)に60Gyを確保できているとともに,GTVの前方に位置する胃の後壁への線量は50Gy程度まで下げることが可能となっている。最近開始した体幹部定位放射線治療(SBRT)では,IMRT以上にシャープな線量勾配が要求されることから,Radixactの特徴がさらに生かされるものと考える。

図1 当院の局所進行膵臓がんに対する術前化学放射線療法:PhaseⅠ/Ⅱ臨床試験のプロトコール

図1 当院の局所進行膵臓がんに対する術前化学放射線療法:PhaseⅠ/Ⅱ臨床試験のプロトコール

 

図2 局所進行膵臓がんの症例  a:線量分布図 b:DVH

図2 局所進行膵臓がんの症例  a:線量分布図 b:DVH

 

図3 膵臓がん術後局所再発症例 a:線量分布図 b:DVH

図3 膵臓がん術後局所再発症例 a:線量分布図 b:DVH

 

当院のIMRTの設定

IMRTでは,上腹部が大きく変動するのを抑える目的で上腹部の固定具を作成し,また,患者は治療開始前の3~4時間は少量の飲水のみで食事を控えることを原則としている。治療計画画像は,ダイナミック造影CTとPET/CT画像をフュージョンさせて輪郭の作成を行っている。MRIも参考にしているが,病理学的な輪郭より3〜4mm過小評価すると報告されていることも念頭に入れて輪郭を作成している。毎回の治療はCBCTを用いたIGRTを行い,位置精度を高めている。
当院におけるIMRTの設定は以下のとおりである。
・GTV=膵臓腫瘍,転移リンパ節,腹腔動脈,SMA,病変が膵頭部の場合には門脈を含める。
・臨床的標的体積(CTV)=GTV+10mmとし,予防的リンパ節は含めない。
・計画標的体積(PTV)=CTVに全周性に5mm,頭尾方向には5〜15mmのマージンを付与
・消化管の計画リスク臓器体積(PRV)=消化管粘膜+3~5mmのマージンを付与。PTVが消化管のPRVに重なる場合には,消化管のPRVを優先してPTVの修正を行う。
・high dose area(高線量領域)=GTVの95%に60Gyを処方,D1<107%
・intermediate dose area(中線量領域)=PTVの95%に54Gyを処方,D1<107%
リスク臓器(OAR)の線量制約は,おおむね以下のとおりである。
・十二指腸外壁:D1≦54Gy(1.8~2.0Gy/fx)
・胃の外壁:D1≦54Gy(1.8~2.0Gy/fx),V50<5cc
・肝:mean<28Gy,D80≦20Gy,V45<30cc
・脊髄:D1<50Gy
・両側腎:V20<30%,D80≦15Gy

治療計画のゴールは,GTV,PTVの95%に目標の処方線量を投与し,最大線量は処方線量の120%を越えないこととしている。しかし,IMRTおよびSBRTのいずれにおいても,最近は高線量領域や中線量領域,場合によっては低線量領域などを設定して治療することも多い。計画どおりのPTVを作成できる場合は処方線量を60Gyに設定しているが,PRVによってPTVの輪郭が削られてしまうような場合は,GTVの内側に60Gyの高線量領域の設定を行うケースもある。また,GTVが消化管の粘膜ときわめて近接している症例では,1.8Gy/fxを用いている。

おわりに

近年増加傾向にある膵臓がんの放射線治療において,Radixactは線量分布の最適化に有用であった。

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