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Aquilion PRIME × 藤田保健衛生大学病院CTのパイオニアが認めた高速・高画質・ハイスループットの80列CT「Aquilion PRIME」—ハイスペックマルチスライスCTの実力

2011-8-1

Aquilion PRIMEとスタッフ

Aquilion PRIMEとスタッフ

藤田保健衛生大学病院 は,1980年代から長年にわたって,ヘリカルスキャンやArea Detector CT「Aquilion ONE」の共同開発を東芝社と行うなど,CTのパイオニアとして,歴史に名を残してきた。その同院が2010年12月に導入したのが,80列(160スライス)のマルチスライスCT「Aquilion PRIME」である。東芝社のマルチスライスCTの最高峰として,Aquilion ONEの技術を惜しみなく投入したこの装置は,高速撮影や画像再構成の高速処理により検査効率を向上させているほか,被ばく低減を図りつつ高画質の画像を臨床の場に提供している。Aquilion PRIMEに搭載された最新技術が検査,診断にどのようなメリットをもたらしているのか,安野泰史教授をはじめスタッフに取材した。

■CTの歴史にその名を刻んできた藤田保健衛生大学病院

安野泰史 教授

安野泰史 教授

愛知県豊明市にある藤田保健衛生大学病院は,一般病床1464床,精神病床30床の計1494床の病床数を誇る国内最大級の病院である。名古屋保健衛生大学(当時)の附属病院として1973年に開院した同院は,特定機能病院のほか,災害拠点病院,がん診療連携拠点病院の指定を受けるなど,高度医療を提供する医療機関として重責を担っている。
その中でも放射線科は,わが国の放射線医療の歴史の中で,輝かしい足跡を残してきた。1975年の国産初のCT導入に始まり,東芝との共同開発を進め,90年には世界初のヘリカルCTを生み出した。その後現在に至るまで,ヘリカルスキャンはCTのスタンダードとなっている。
以降,同院と東芝社は,多列化するCTの共同開発を進め,2007年にはこれまでのCTの常識を超える320列の面検出器を搭載した「Aquilion ONE」を世に送り出した。
同大学医療科学部放射線学科の安野泰史教授は,「われわれは,常に臨床の側から,被検者にとって負担が少なく,かつ臨床上有用な情報を得られる装置の開発に取り組んできました。使いやすさを追究し,問題点を洗い出しながら,東芝社と一緒にCTをつくり上げてきたのです」と,これまでの歴史を振り返る。このように長年にわたりパイオニアとして,CTの技術進歩に貢献してきた同院に,2010年12月から新たに80列マルチスライスCTのAquilion PRIMEが稼働し始めた。

■Aquilion ONEの技術を受け継いだ最高峰のマルチスライスCT

日本国内で2010年12月に発表されたAquilion PRIMEは,東芝社のマルチスライスCTとしては最上位機種に位置づけられる。80列の高速ヘリカルスキャンと160スライスのコンベンショナルスキャンでの撮影が可能だ。また,秒間2572viewsの高密度サンプリングを確保。また,再構成に改良を加えており,ヘリカルスキャンでは64列以上のCTに対応した再構成技術であるV-TCOTを採用している。コンベンショナルスキャンでは,ダブルスライステクノロジーにより,0.5mm×160スライスの倍密度再構成を行い,体軸方向の分解能が向上した。併せて,Aquilion ONEに搭載された再構成アルゴリズムであるconeXactにより,コーンビームアーチファクトを抑えた高画質画像を提供する。
一方で,被ばくへの対応にも抜かりはない。逐次近似法を応用した被ばく低減技術である“AIDR”(Adaptive Iterative Dose Reduction)を搭載。ほかにも,管電流の増減や撮影間隔のパラメータの変更をモニタリングしながら行える“Time Sequence“や,総被ばく線量を演算・表示し,ガイドラインと対比させて条件を設定できる“Dose Guard”を搭載している。
Aquilion PRIMEは,その外観もハイスペック装置にふさわしい設計となっている。同機は,ガントリの開口径を780mmと従来のAquilionシリーズから60mm拡大。被検者の負担を軽減し,撮影体位の柔軟性が高まったほか,IVRなどでの術者のアクセス性も向上している。さらに,ガントリ上部には,大型の液晶を採用した,情報コミュニケーションモニタの“i-Station“が配置されている。
さらに,Aquilion PRIMEはワークフローの改善にも貢献する。高速スキャンと並行して50f/sの速度で画像再構成が行うことができ,検査のスループットが大幅に向上する。加えて,SureXtension(ディスプレイコンソール・リモートシステム)を使用することにより,CT室以外の場所で画像解析を行うといった構成も可能で,施設ごとの運用やニーズに応じ柔軟な設計ができる。
このように,Aquilion PRIMEは,Aquilion ONEの技術を継承しつつ,マルチスライスCTの最上位機種としての性能を実現させた装置を言える。それについて安野教授は,次のように説明する。
「Aquilion ONEはボリュームスキャナという概念で開発された,従来のCTとは異なる位置づけの装置であり,あらゆるスペック,機能が飛び抜けていています。対してAquilionシリーズのマルチスライスCTは,段階を踏みながら64列まで技術を積み重ねて進化してきました。Aquilion PRIMEは,Aquilion ONEの技術が生かされるとともに,マルチスライスCTとして64列の延長にある装置だと言えます。それだけに両者の長所を併せ持つ,高い次元でのパフォーマンスとコストのバランスをとったCTだと思います」

ガントリ上部に配置されたi-Station

ガントリ上部に配置されたi-Station
小児や外国人のほか,耳の不自由な被検者の検査でも非常に有効だという。

Dose Guardのインターフェイス

Dose Guardのインターフェイス
スキャン計画中,検査での総被ばく線量を計算・指標表示する。また,ICRPやそのほかのガイドラインの数値が表示されるため,被ばく線量をより意識した計画が立案可能である。

 

■スループットの向上と高画質を両立するAquilion PRIME

藤田保健衛生大学病院のCTのラインナップは,現在Aquilion PRIMEのほか,Aquilion ONEが1台,Aquilion 64が1台,治療計画用に4列のAsteion Super4が1台となっている。このほか,救急部門でもAquilion CXが稼働している。このうちAquilion ONEでは,主に頭部,心臓,小児,ダイナミック造影CTの撮影を行っており,Aquilion PRIMEとAquilion 64は,それ以外の検査を多く行っている。Aquilion PRIMEの1日の撮影件数は20~30件程度で,特に腹部領域では術前の精査や術後のフォローアップに積極的に用いているという。

●高速撮影と再構成が生むメリット

三田祥寛 助教

三田祥寛 助教

Aquilion PRIMEを導入したことで,一番実感することは,撮影時間の短縮が挙げられると,同大学医学部放射線医学教室の三田祥寛助教は話す。
「われわれの施設では,検査着の着替えなどをCT室内で行ってしまうため,トータルの検査時間は64列CTと比べて大きな違いはありません。しかし,撮影時間そのものは20%程度短くなっています。これは被検者の息止め時間や体動のことを考えるとメリットです」
これを受けて,安野教授は,「息止め時間が短くなることのメリットに加え,撮影時間が短縮することは少ない心拍数での撮影になるので,画質の安定化につながります。ですから,心臓や小児の検査,あるいは救急での撮影にも威力を発揮すると考えています」と述べている。

井田義宏 係長

井田義宏 係長

また,撮影を行う診療放射線技師からも,撮影時間の短縮化は評価されている。放射線部の井田義宏係長は,「腹部領域(肝臓)の撮影の際,息止めを5,6回していただかなくてはならないケースがあります。被検者にとって負担になりますが,これは64列CTに比べても1回につき2秒程度撮影時間が短くなるので,その負担を軽減できるようになりました」と述べている。加えて,高速な画像再構成や,スキャン中にデータの再構成を並行して行い,すぐにコンソールのモニタ上に画像が表示されるので,解析処理などの作業も待ち時間なく行えるようになっている。
このように,64列CTよりも短時間での撮影が可能となったことで,被検者の負担が軽減されるだけでなく,検査後の画像処理も含めた検査全体の効率化が図れることにより,医師や診療放射線技師の負担も減らせることは,Aquilion PRIMEのアドバンテージだと言える。

●64列CTから向上した画質

再構成技術であるV-TCOTや,高い空間分解能を実現するダブルスライステクノロジーにより,Aquilion PRIMEでは画質の点でも,これまでのマルチスライスCTから進化している。三田助教は,V-TCOTの効果について,従来の装置と比較し,画質の均一性が増してアーチファクトが減ったことを評価しており,「腹部領域ならば,肝臓や肋骨の下,裏側のノイズとアーチファクトが解消されています」と説明する。
Aquilion PRIMEの画質については,井田係長も64列に比べ格段に向上したと評価している。「Aquilion PRIMEでは,長年マルチスライスCTを開発してきた東芝社の技術が熟成されたように思います。アーチファクトの減少や,view数が増えたことによって中心部と周辺部の画質の差がなくなり,均一性が良くなりました。例えば,整形領域での肩の撮影など,寝台の中心に位置決めできない症例でも,高画質画像を得ることができます」と述べている。

●さらに一歩進化した被ばく低減技術AIDR

片岡由美 技師

片岡由美 技師

CTの被ばく低減は,放射線医療における大きなテーマとなっている。また今は,被ばくに対する国民全体の関心も高まっている。それだけに同院でも,通常のスクリーニング検査ではすべてにAIDRを使用している。放射線部の片岡由美技師は,「AIDRは,確実に被ばく低減に寄与しています。まだまだ改良の余地があると思いますが,今後の進歩を見極めつつ,積極的に使用しています」と述べている。井田係長も「われわれの施設では,さらなる画質向上のため,AIDR時に画像フィルターを掛けていますが,新しいAIDRでは,被ばく線量を増やすことなく画質を良くすることができており,これまでのAIDRの30%程度の被ばく低減ができていると思います」と付け加える。
診断に必要な高画質を維持しつつ,大幅な被ばく低減を実現できているAIDRの進化については,放射線科医からの評価も高い。三田助教は,「Aquilion PRIMEのAIDRは,画質もナチュラルで受け入れやすいものとなっています」と感想を述べている。さらに,三田助教は,VolumeECと組み合わせることで線量がコントロールできるようになり,被ばくを低減できていることは,大きなメリットであるとも評価している。
本来なら,逐次近似法を応用するAIDRは,三次元情報からノイズを選択的に抽出して繰り返し除去し,オリジナルデータと組み合わせた画像を作り出すため,コンピュータに大きな負担がかかることになる。そのためスループットの低下が心配されるが,Aquilion PRIMEではその問題も解消されている。安野教授は,「逐次近似処理を応用したAIDRはコンピュータの処理能力が重要で,従来の64列CTではスペック上時間がかかってしまいます。しかし,Aquilion PRIMEは,Aquilion ONEの技術が継承されており,高度な画像処理を行えるよう設計されているので,臨床でも十分活用できています」と,単なる64列からのステップアップではない,Aquilion PRIMEの高い処理能力を実現するハードウエアの進化について言及している。

●操作者と被検者にやさしい設計

ハードウエアの進化としては,ガントリの開口径が従来機種よりも60mm広がったことも重要な要素であるが,これについても臨床上でのメリットが生まれている。三田助教は,IVRでのアクセス性の良さを説明する。
「開口径が780mmに広がったことで,CTガイド下での生検でも穿刺がしやすくなりました。被検者の体位も側臥位での撮影ができるようになり,大きなメリットだと感じています。また,ガントリの前面と背面のデザインを変え,背面側のガントリ長を長くすることで,Aquilion ONEでは検査ができなかった閉所恐怖症の方の撮影ができるなど,被検者にとっても負担の少ない装置だと言えます」
また,通常の検査においても,開口径が広いことで被検者のポジショニングが容易になった。片岡技師は,「高齢者などで上肢の挙上が困難な方の場合,従来の装置では途中まで挙上してもらうと,ガントリに触れてしまうので,結局下ろしたままで撮影を行っていました。それが無理をしない程度の腕上げで撮影できるようになりました」と述べている。ポジショニングがしやすいということは,被検者の負担を軽減することはもちろん,診療放射線技師の作業負担も減らし,検査効率の向上にもつながる。
このほか,i-Stationも小児や外国人の被検者からの評判が良いという。「小児の場合,とても好評で,中には見とれてしまう子もいます」と片岡技師は話す。井田係長も「5か国語に対応しているので,モニタを見せて,アイコンタクトを送るだけで,笑顔になってくださる外国人の方が多いです」と述べている。

●オールマイティに使いたい施設に適した装置

これまでの使用経験を通して,三田助教は,「画像再構成の速度が速くスループットが良いので,外来の検査が多く,たくさんの検査をこなしたい施設に向いていると思います」とAquilion PRIMEが適している施設について述べている。また,井田係長は,「オールマイティにあらゆる検査に使いたいという施設に特に適しています。また,スループットが高いという点では,救急でも非常に有用です。救急では器具を装着されているようなケースがありますが,そのような場合でもガントリが広いことから対応しやすいのではないでしょうか」と話している。

■症例1 CT透視(側臥位)

 

■症例2 胸腹部(ハイピッチ撮影)

 

■症例3 整形領域

 

■装置の性能を最大限に発揮するためにさらに共同開発を進めていく

すでに臨床稼働を始めて半年が過ぎたAquilion PRIMEであるが,そのメリットが臨床の場にもたらされるとともに,今後の技術開発の方向性も見えてきている。安野教授は,「目的の臓器によって寝台の速度を可変するバリアブルヘリカルピッチスキャンシステムは,もっとユーザーの操作の自由度があればよいと思います」と述べている。また,検査を担当する井田係長は,「現在,CTにとって一番の課題は被ばく低減です。被ばくの問題がクリアされれば,術前シミュレーションや治療計画などさらに適用が広がるので,AIDRの技術進歩をますます追究してほしいです」と話す。これを受けて片岡技師も,「現状のAIDRは,若干再構成の時間がかかっているので,より処理速度が上がるとよいと思います」と,被ばく低減技術のさらなる進化に期待を寄せている。
このような課題も含め,安野教授は,Aquilion PRIMEについて,まだまだ隠れた性能を発揮する可能性を持った装置だという。藤田保健衛生大学病院では,これからもさらなる技術革新に向けて,東芝社と共同開発を進めていく。

(2011年6月7日取材)

藤田保健衛生大学病院

藤田保健衛生大学病院
住所:〒470-1192 愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1-98
TEL:0562-93-2111
病床数:1494床
診療科目:内科,精神科,神経内科,循環器科,小児科,外科,整形外科,形成外科,脳神経外科,呼吸器外科,心臓血管外科,皮膚科,泌尿器科,産科,婦人科,眼科,耳鼻咽喉科,リハビリテーション科,放射線科,歯科,矯正歯科, 小児歯科,麻酔科
http://www.fujita-hu.ac.jp/HOSPITAL1/