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ECHELON OVAL × 医療法人愛誠会 昭南病院積極的な地域医療を展開する病院が選んだ“オープンMRIよりオープン”なワイドボアMRI—WIT(Workflow Integrated Technology)コイルやRADARなど,検査のワークフローを考慮した最新の技術,アプリケーションで最適な診断を支援

2013-2-1

ワイドボアを搭載した1.5T MRIの最上位機種「ECHELON OVAL」の第1号機が稼働。朝戸幹雄 院長(中央)と放射線科スタッフ

ワイドボアを搭載した1.5T MRIの最上位機種
「ECHELON OVAL」の第1号機が稼働。
朝戸幹雄 院長(中央)と放射線科スタッフ

愛誠会昭南病院は,鹿児島県大隅半島の北部,曽於市大隅町にある病床数154床の民間病院である。同院では,2006年に就任した朝戸幹雄院長のもと病院運営の改革を実行し,その経営改善の実績と診療の質の向上に対する継続的な取り組みが高く評価され,2010年にはJHQCクオリティクラスA認証を鹿児島県で初めて取得した。 2012年9月には,日立メディコの楕円形状のワイドボアが特徴の1.5T MRI「ECHELON OVAL」の世界第1号機と,64列マルチスライスCT「SCENARIA 」を導入。病院改革に取り組み,地域に根ざした病院運営を進める昭南病院でのCT,MRIの運用を,OVALを中心に朝戸院長と診療放射線科の熊谷繁夫技師長に取材した。

 

■院内の意識改革と医療連携強化で病院経営を改善

昭南病院は,内科,循環器内科,神経内科,消化器内科,消化器外科,泌尿器科,放射線科などを標榜し,常勤医師13名,1日平均の外来患者数は220~240人となっている。朝戸院長が副院長から院長に就任した2006年当時は,経営的にも厳しい状況で,医療を取り巻く経済環境も悪化しつつあり,院内の雰囲気も停滞していたという。朝戸院長は,スタッフの意識の変革や病棟の在院日数の削減,給与体系の見直しなどを敢行し,経営の改善と同時に院内の活気を取り戻すことに成功した。その実績から,2010年には継続的な経営の質の向上を実践する医療機関に対して認証を行う「日本版医療MB賞」のクオリティクラスA認証を,鹿児島県で初めて取得している。朝戸院長は,病院経営に対するポリシーについて,次のように語る。
「特別なことをしたわけではなく,医師を含めたスタッフ全員が本来持っている力を引き出せるような動機づけと環境を作っただけです。経営状況などもオープンにして,議論を尽くし,みんなが同じ方向を向いて進むことができる組織をめざしました。特に医師には,診療だけでなく経営も考えて働くという意識を持ってもらうと同時に,現場での権限は委譲して働きやすい環境を構築しています。常に,この病院の役割とはなにかを考えて,地域の患者にとって最善となる医療を提供することを最優先にしています」
昭南病院がある大隅半島北部の曽於市は,北に都城市(宮崎県),南に鹿屋市などが隣接する。曽於市の人口は約4万人,都城,鹿屋,志布志などを含めた医療圏の人口が約10万人だが,同院はこれらの中心に位置し,交通の便も良いことから,医療連携を積極的に行っていることも特徴だ。都城市には,国立病院機構 都城病院,藤元早鈴病院など,心臓血管外科や循環器の専門病院があり,鹿屋市には大隅鹿屋病院など,心臓開胸手術をはじめとする高度な医療に対応する医療機関がある。朝戸院長は,大隅鹿屋病院で週1回,大動脈のステントグラフト留置術などのIVRを行っている。
「地域での医療連携を実現するには,病院間の強い関係を作ることが必要です。私が先方に出向いて直接IVRをサポートすることで,こちらからの紹介患者は快く受け入れてもらえます。反対に当院に紹介依頼があった時には,絶対に断りません。当院の役割は,循環器や脳神経領域の先端の治療を提供することではなく,ここで的確な診断を行い,しかるべき施設に紹介する,また,術後のフォローアップをしっかりと行うことです。そのためにも,CTやMRIといった画像診断機器は,必要不可欠と考え整備しています」

左右74cm×縦65cmの楕円形状のワイドボア。膝を折った状態でも横向きで入ることができる。

左右74cm×縦65cmの楕円形状のワイドボア。膝を折った状態でも横向きで入ることができる。

WIT Mobile Tableは本体から着脱しストレッチャーとして利用可能

WIT Mobile Tableは本体から着脱しストレッチャーとして利用可能

   
寝台の両脇のアームボードは手台や落下防止柵となる。

寝台の両脇のアームボードは手台や落下防止柵となる。

OVALのWIT RF Coil System。頭頸部用(a),膝関節用(b),肩関節用(c)

OVALのWIT RF Coil System。頭頸部用(a),膝関節用(b),肩関節用(c)

   
脊椎用コイルはベッドに埋め込まれる。セッティングは容易に変更可能

脊椎用コイルはベッドに埋め込まれる。セッティングは容易に変更可能

コイルは軽量で体に密着でき,より感度の高い検査が可能

コイルは軽量で体に密着でき,より感度の高い検査が可能

 

■ECHELON OVALと64列CTのSCENARIAを同時導入

朝戸幹雄 院長

朝戸幹雄 院長

熊谷繁夫 技師長

熊谷繁夫 技師長

同院に,2012年9月,楕円形状のワイドボアを搭載した1.5T超電導MRI装置「ECHELON OVAL」(日立メディコ)が導入された。ECHELON OVAL(以下,OVAL)は,2011年のRSNA(北米放射線学会)で発表され,日本では2012年4月から販売が開始された。OVALは,日立メディコの1.5T MRIの最上位機種となり,同院が世界での第1号機導入となる。放射線専門医である朝戸院長は,放射線検査についてCT,MRIはもちろん,一般撮影からRIまですべて自ら読影し,レポートを作成している。ステントグラフトなど血管内治療も手掛ける朝戸院長は,画像診断機器の導入と放射線科の役割について「外来や院長としての業務を行いながら,放射線専門医がいるメリットを生かして,迅速な診断によって的確な治療につなげることができるように,画像診断機器を整備してきました」と説明する。
同院では,0.3Tオープン型MRIである「AIRIS-Ⅱ comfort」が稼働していたが,16列CTとともにリプレイスのタイミングを迎えていた。CTとMRIのリプレイスの具体的な検討を始めていた2012年4月に,国際医用画像総合展(ITEM)2012で展示されたOVALを見て導入を決定したと,朝戸院長は語る。
「それまでは,日立メディコのMRIは選定の俎上に上っていませんでしたが,横浜の機器展示会場でOVALを見て,当院の診療のコンセプトにぴったりの装置だと直感しました。一番はやはり,卵形のガントリ開口部分です。当院は高齢者が多く,腰が曲がっている人や脳梗塞の患者さんなどがたくさんいますが,この形状であれば,そのままの姿勢で検査ができます。画質についても納得でき,このワイドボアのOVALの世界第1号機と,64列CTのSCENARIAを同時に導入すれば,当院にとってメリットは大きいと判断しました」

【ECHELON OVALによる臨床画像】

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画像3

 

画像4

 

■ワイドボアと検査のワークフローを改善する技術を搭載

[楕円形状のワイドボア]
OVALは左右74cm×縦65cmの楕円形状の開口径を持ち,楕円形状の傾斜磁場コイルでも高い静磁場均一度を実現する。熊谷技師長は,「以前のオープンタイプの機種に比べても,縦方向の開口が広く楕円になっていることで,腰の曲がった患者さんでも膝を曲げて横向きでボアの中に入ることができます。ボアの中にさえ入れば,後はコイルの工夫次第で検査が可能です。これまでにOVALで撮像できなかった患者さんはいません」と,その空間の広さを評価する。また,閉所恐怖症の患者さんでも,OVALなら大丈夫という声があったという。「当院のオープンMRIで継続して検査をしていた閉所恐怖症の患者さんにOVALを体験していただいたところ,“これなら大丈夫そうだ”ということで,実際に検査を行うことができました。その意味で,OVALのワイドボアは,オープンMRIよりもオープンと言っていいでしょう」(熊谷技師長)。
さらに,63cmのワイドな寝台によって,肩関節の撮像の際に撮影部位を磁場の中心に持ってくることができ,感度の高い撮像が可能になっている。

[WIT(Workflow Integrated Technology)RF Coil System]
OVALでは,撮像用コイルやテーブルなどをWIT(Workflow Integrated Technology)というコンセプトで開発しており,高感度とワークフローの向上を両立させた,WIT RF Coil Systemもそのひとつだ。WIT RF Coil Systemは,頭部では目的に応じた3種類(頭部用,頭頸部用,頸部用)のアタッチメントを交換でき,体幹部ではテーブルに組み込まれたSpineコイルと,身体に載せて使用するTorsoコイルによって,コイルの交換やセッティングを容易にした。体幹部用のコイルはSpine,Torsoとも身体に密着することができ,SNRの向上が期待できる。熊谷技師長は,OVALのコイルの運用について,次のように述べた。
 「コイルが軽いので,女性の技師でも扱いやすくなっていることと,テーブルに組み込まれたSpineコイルや交換の簡単なアタッチメントによって,コイルを交換せずに連続した撮像や短時間でのセッティングが可能で,検査時間の短縮につながっています」

[患者にやさしい,スタッフにやさしい機能(WIT)]
WIT Mobile Tableは,楕円の開口径に合わせた63cm幅のワイドテーブルであると同時に,本体から着脱が可能で,ストレッチャーとしても利用できる。MRIでは,テーブルが着脱できる機種は少ないが,熊谷技師長は運用面から高く評価する。「病棟からベッドのままで検査に来た場合,廊下でストレッチャーへ,検査室内でMRIの寝台へと2回の乗せ替えが必要です。モバイルテーブルであれば,廊下まで寝台を移動して,ベッドからそのまま乗せ替えることができます。ワークフローという面でも,スタッフの体力的な負担軽減という意味でも,メリットは大きいと思います」
さらに,WIT Mobile Tableでは折りたたみ式のアームボードを備えており,造影剤注入の際の手台や,ストレッチャーとして使用する場合の落下防止柵として利用できる。熊谷技師長は,「細かいところまで工夫されていて,患者さんにもスタッフにもやさしい配慮を感じます」と言う。そのほか,本体に設置したWIT Monitorでは,患者基本情報の表示と修正,コイル装着の状況,心電図や脈波,呼吸などの波形を表示するなど,ワークフローを考えた設計を取り入れている。

■RADAR,AutoPoseなどのアプリケーションを活用

OVALの操作端末

OVALの操作端末

OVAL導入後の検査では,頭部と上肢・下肢の非造影MRA,腹部のMRCPなどが増えており,オープンMRIの時の月間100件から,150件近くまで件数が増えている。導入初期段階でのOVALの運用について熊谷技師長は,「オープンMRIでは検査できなかった部位を中心に件数が増えています。血管系では,当日の検査で異常がわかれば,即日IVRを行うケースがありますので,できるだけ造影剤の使用を少なくする意味でも非造影MRAを行っています。腹部では,肝臓のEOBプリモビストを使った検査やMRCPなどを,OVALで新たに行っています」と説明する。
熊谷技師長はOVALの画質について,「十分に高精細な画像が得られていますが,導入初期の段階では新しい技術を習得するのに精一杯でしたので,今後,機器の性能を引き出し,120%使い切れるように,いろいろと検討を行っていくつもりです」と述べている。
OVALには,モーションアーチファクトを低減する“RADAR”が搭載されているが,同院では通常の検査ではオフになっており,救急などで制動が難しい患者や,パーキンソン病で振戦がある場合,また認知症などの患者ごとに,RADARの適応を判断している。RADARを使用するのは10人に1人ぐらいと多くはないが,熊谷技師長によれば,「RADARはどの断面でも撮像が可能で,補正によってモーションアーチファクトが抑えられますし,体動が大きすぎて補正できない場合でも何とか診断できるレベルの画像が得られます」とのことだ。

同時に導入された64列CT「SCENARIA」

同時に導入された64列CT「SCENARIA」

また,熊谷技師長は,OVALに搭載されたアプリケーションの中で,頭部撮影の際に自動的に撮像断面を設定する位置決め補助機能である“AutoPose”を評価する。AutoPoseでは,頭部の位置決め3断面から解剖学的パターン認識を行うことで,短い処理時間で基準となるOMラインなどの撮像断面設定を自動で行う。「自動で基準線を設定してくれるので,MRIの経験の浅い技師でも戸惑うことなく検査ができますし,自動的に設定されることで検査ごとのスライスのズレが少なくなり,脳梗塞の範囲の比較などでも精度が向上して正確な診断につながります」(熊谷技師長)。

 

■脳ドックや非造影冠動脈MRAによる心臓ドックへの展開を期待

本体のWIT Monitor。患者基本情報の参照・修正(1),コイルの装着状態(2),心電図や呼吸の波形(3),などをモニタすることができる。

本体のWIT Monitor。患者基本情報の参照・修正(1),コイルの装着状態(2),心電図や呼吸の波形(3),などをモニタすることができる。

本体のWIT Monitor。患者基本情報の参照・修正(1),コイルの装着状態(2),心電図や呼吸の波形(3),などをモニタすることができる。
OVALの今後の活用として期待されているのが,検診や人間ドックへの適用である。同院では病院の方針として,検診や人間ドックの体制強化を進めている。「診療報酬改定に翻弄されない病院経営をめざして,4年ほど前から自由診療としての検診部分に力を入れてきました。地域の企業や団体に営業して,検診やドックの受診者を増やし,健診センターなど専用の施設で運用する計画を立てています。これまで,人間ドックのオプションとして脳血管MRAを提供してきましたが,OVALの導入により,脳ドックとして独立したメニューで近くスタートする予定です。さらに,心臓の冠動脈スクリーニングについても,OVALでの実施を検討中です」(朝戸院長)。
熊谷技師長は,今後のOVALの活用について,次のように語る。
「循環器領域は,われわれにとっては未知の領域なので,OVALでの撮像について,これから検討を重ねていきます。また,ほかのモダリティ,例えばRIなどと連携して,検査を組み立てていきたいと考えています。当院ではもの忘れ外来で認知症の診療を行っていますが,最近,MRIの認知症に対する解析ソフトであるVSRADが使えるようになりましたので,MRIでスクリーニングを行って脳血流シンチグラフィで精密検査を行うような,精度の高い画像診断を提供していきたいと考えています」
朝戸院長は,「われわれのような個人病院では,常に最先端の機器をそろえるというわけにはいきません。地域で与えられた役割と,病院としてできることを冷静に判断すれば,当院の使命は規模の拡大や高度な治療の提供ではなく,地域の住民が困った時にすぐに対応できる体制を整えることだと思います。中小規模の医療機関が,地域での継続的な医療を提供するためには,画質とコストのバランスが取れた機器であることは重要な要素であり,今回のCTとMRIの導入が地域医療への還元につながることを期待しています」と語った。
患者にもスタッフにもやさしいMRIとして,OVALが,地域に根ざしオープンな医療を展開し続ける昭南病院のこれからの診療を支えていくことが期待される。

(2012年12月10日取材)

gaikan

医療法人愛誠会 昭南病院
住所:‌〒899-8106 鹿児島県曽於市大隅町下窪町1
TEL:099-482-0622
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