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Infinix Celeve-i INFX-8000H × 医療法人朗源会 おおくまセントラル病院最新式のハイブリッド手術室で「高度な診療機能を持つかかりつけ病院」として地域医療に貢献 ─大動脈瘤ステントグラフト内挿術を中心にハイブリッド手術の実績を伸ばす

2013-8-1

ハイブリッド手術室でチーム医療を実践するスタッフとINFX-8000H

ハイブリッド手術室でチーム医療を実践する
スタッフとINFX-8000H

おおくまセントラル病院は,2012年8月に現在の施設名に改称し,急性期から回復期までの診療を提供するケアミックス病院として生まれ変わった。「高度な診療機能を持つかかりつけ病院」としてリニューアルした同院の目玉と言えるのが,東芝メディカルシステムズ社製X線循環器診断システム「Infinix Celeve-i INFX-8000H」を設置したハイブリッド手術室である。9月から本格的な稼働が始まり,9か月間で,大動脈瘤ステントグラフト内挿術など56症例の治療が行われている。マッケ社の手術台を採用している同装置は,優れた操作性や高画質により,スタッフの評価も高い。順調な滑り出しを見せたこのハイブリッド手術室の設置のねらいと装置選定の経緯,手術室の運用方法や撮影の実際,そしてメリットについて取材した。

大隈義彦 理事長

大隈義彦 理事長

古川一隆 院長

古川一隆 院長

 

■ケアミックス病院へのリニューアルを機に最先端のモダリティを導入

広いスペースを確保したハイブリッド手術室に設置されたINFX-8000H

広いスペースを確保したハイブリッド手術室に
設置されたINFX-8000H

おおくまセントラル病院は,経営母体である朗源会ウェルフェアグループにおけるリハビリテーションを担う医療機関として,1999年7月におおくまリハビリテーション病院の名称で開設された。朗源会ウェルフェアグループは,1942年に大阪市内に大隈外科医院を開院したことからその歴史が始まる。同院は戦災の影響により,51年に兵庫県尼崎市に移転して診療を再開。80年には50床の病床を持つ大隈病院として改築されるなど,尼崎の地域医療を担う医療機関として発展してきた。また,訪問看護ステーションや介護老人保健施設といった在宅医療,介護・福祉事業にも力を注いでおり,地域包括ケアを手がけるグループとして,住民から厚い信頼を得ている。
リハビリテーション病院として位置づけられていたおおくまリハビリテーション病院が,急性期医療も手がけるおおくまセントラル病院として生まれ変わったのは,2012年8月。病床数を急性期112床,回復期128床の計240床に増床し,救急などの超急性期から回復期までの医療を行うケアミックス病院となった。このリニューアルについて,大隈義彦理事長は次のように説明する。
「尼崎市は,救急患者の受け入れ率があまり高くないのが問題となっており,地域から救急医療の充実化を望む声が多くありました。そこで,地域住民が救急医療を受けられずに命を落とすことがないようにしたいとの思いから,本院の大隈病院から一部の機能を移し,超急性期から回復期まで,シームレスな医療を提供できる病院にすることにしました」
リニューアルにあたって大隈理事長がめざしたのは,「高度な診療機能を持つかかりつけ病院」であること。このコンセプトに基づき,新病院では,救急センター,血管治療センター,総合診療センター,おおくまリハビリテーションセンターを設け,さらに,モダリティもハイエンドクラスを導入した。これについて,古川一隆院長は,「診療の基本は診断です。高精細な画像であれば,より精度の高い診断ができ,さらにはそれが良い治療にもつながります。コストはかかるものの臨床上の有用性が高いと考え,積極的に導入しました」と述べている。また,大隈理事長は,「優秀なスタッフを集めるには,高性能な画像診断装置を導入するなど環境づくりが重要です。それによって治療成績が向上すれば,病院の評価,信頼も高まり,経営にもプラスになると考えました」と説明する。こうした考えの下に,リニューアルの目玉として血管治療センターに設けられたのが,東芝メディカルシステムズのX線循環器診断システム「Infinix Celeve-i INFX-8000H(以下,INFX-8000H)」を核としたハイブリッド手術室である。

■高度な手技に対応した血管治療センターにハイブリッド手術室を設置

おおくまセントラル病院の血管治療センターは,心臓血管外科,循環器内科,脳神経外科の3科で構成されている。同センターには,ハイブリッド手術室に設置されたINFX-8000Hのほかにも,Infinix Celeve-iシリーズが2台導入されており,心疾患,脳血管疾患のインターベンションや血管造影検査に用いられている。また,放射線科では,東芝メディカルシステムズが世界に誇る320列Area Detector CT「Aquilion ONE」を導入しており,MRIは同社の「EXCELART Vantage powered by Atlas:1.5T」が稼働している。
大隈理事長は,血管治療センターの設置の理由について,「心疾患,脳血管疾患は,早期診断,治療が患者さんの予後に大きく影響します。しかしながら,当院の周囲では,公立病院も含めて,深夜や休日などの診療時間外でのインターベンション治療に対応できる施設がありませんでした。そこで,こうした状況を改善したいと思い,心疾患と脳血管疾患を集中的に診断・治療できる組織として,血管治療センターをつくることにしました」と述べている。
大隈理事長は,自身の出身である大阪大学の心臓血管外科のアドバイスなどにより,大動脈瘤ステントグラフト内挿術など高度な手技に対応できるセンターをめざして,ハイブリッド手術室の設置を決めた。心臓血管外科の島村和男部長(編注:取材後に海外へ赴任)はハイブリッド手術室の重要性について,「心臓血管領域の手術では,血管内治療と外科手術を組み合わせたハイブリッド手術が世界的な潮流になっています。しかし,血管撮影室でのハイブリッド手術は,衛生面で十分とは言えず,手術室で行う必要があります」と述べている。

■マッケ社の手術台を採用しハイブリッド手術を実現するINFX-8000H

ハイブリッド手術室で使用する装置の選定にあたっては,複数のメーカーのシステムで検討を行ったという。大隈理事長は,「東芝メディカルシステムズの装置は,操作性に優れ,使いやすいという点を評価しました」と説明する。さらに,CT,MRIも含めた,操作環境やサポートの利便性などを考慮して同じメーカーのINFX-8000Hの導入を決定するに至った。古川院長は同社について,「日本のメーカーであり,非常に高品質な製品をつくるという信頼感がありました」と述べている。
おおくまセントラル病院が導入したINFX-8000Hは,血管内治療と外科手術を併用するハイブリッドアプローチを可能にしたX線循環器診断システムである。寝台は,カテーテル用のものではなく,外科用の手術台が採用されている。この手術台は,ドイツのマッケ社製「MAGNUS 1180」で,高機能の手術台として世界中の医療機関に採用されている。
この手術台と組み合わされたINFX-8000Hは,12インチ×16インチのFPDを搭載。Cアームは,長手(体軸)方向に約4m,横手(左右)方向に約1m移動が可能である。また,天井部の回転により,Cアームの挿入方向が左右に固定されず自由に選択できることから,外科手術で求められる術野の左右,頭側にワーキングスペースを生み出すことができる。一方で,外科手術の際には,Cアームを手術台から遠ざけて,術者の手技を妨げない。
ハイブリッド手術室では高い空気清浄度が要求されるが,INFX-8000Hでは天井レール間にHEPAフィルタを設置することができ,術野の上から清浄化された空気を吹き下ろす通常の手術室と同様の構造が実現されている。そのためには天井レールの幅が広くなければならないのだが,レール幅が広すぎると無影灯などの天井から吊られるさまざまな手術機材が術野から離れてしまい,使いにくい手術室となってしまう。INFX-8000Hは,これらの点がよく考慮されたシステムである。
もちろん肝心の画質も,同社の画像処理コンセプトである“PureBrain”技術が採用されている。その代表的な技術であるSNRF(Super Noise Reduction Filter)は,1画素ごとにノイズ低減処理を行うことで,X線量を抑えつつ,残像の少ない透視画像を提供する。さらに,回転DSA・DA撮影の画像を再構成し,三次元画像を作成する3D ApplicationやコーンビームCT機能であるLCI(Low Contrast Imaging),3Dロードマップ,TAVI(経皮的大動脈弁置換術)支援アプリといった,術前シミュレーションや術中ナビゲーションのためのアプリケーションも充実している。

TAVIも視野に入れて設計されたハイブリッド手術室

TAVIも視野に入れて設計されたハイブリッド手術室

INFX-8000Hと組み合わされたマッケ社のMAGNUS 1180

INFX-8000Hと組み合わされた
マッケ社のMAGNUS 1180

   
天井走行のレール間にHEPAフィルタを配置

天井走行のレール間にHEPAフィルタを配置

56インチモニタの画面構成例。透視画像(1)を一番大きく,次いで参照画像(2),さらにVR像(3)と心電図(4)を表示。

56インチモニタの画面構成例。透視画像(1)を一番大きく,次いで参照画像(2),さらにVR像(3)と心電図(4)を表示。

   
ペンタブレットによるマーキング

ペンタブレットによるマーキング

コンソールにUSB接続されたペンタブレットを使い,モニタ上に表示された画像に,大動脈の弓部や腎動脈の分岐部などの位置をタッチペンで書き込む。

コンソールにUSB接続されたペンタブレットを使い,モニタ上に表示された画像に,大動脈の弓部や腎動脈の分岐部などの位置をタッチペンで書き込む。

   

 

■9か月で56症例と着実に実績を積み上げるINFX-8000H

心臓血管外科は,2012年8月の病院リニューアル以降,「低侵襲治療」を特色として,着実に診療実績を築いている。2013年5月には,胸部・腹部大動脈疾患のステントグラフト実施施設の認定を受けている。島村部長は,「ハイブリッド手術室において大動脈瘤ステントグラフト内挿術などの低侵襲な治療を受け,その後,リハビリテーションセンターでADL(日常生活活動:Activities of Daily Living)の拡大に取り組めるという,包括的な診療の流れが地域住民に認められています」と述べている。そのハイブリッド手術室では,基本的に医師2名,診療放射線技師1名,看護師1名,臨床工学技士1名の計5名の体制で手術を行い,7名在籍する診療放射線技師がローテーションで手術室に入ることになっている。2012年9月から2013年5月までの9か月間で,血管内治療,ハイブリッド手術,外科手術が56症例行われ,順調な滑り出しを見せている。大隈理事長は,「大阪大学の全面的なバックアップを受けたことと,島村部長がスタッフの教育を行い,体制を整えてくれたことが大きい」と話す。

島村和男 心臓血管外科部長

島村和男 心臓血管外科部長

竹内麦穂 心臓血管外科医長

竹内麦穂 心臓血管外科医長

石田剛士 技師

石田剛士 技師

 

●‌フレキシブルに動くCアームと可動域が広い手術台など優れた操作性

INFX-8000Hについて,島村部長は,まずその操作性を高く評価する。
「Cアームの移動範囲が広く自由度が高いので,非常に使い勝手が良いです。長手方向だけでなく,横手方向にも大きくスピーディに動かすことができます。ほかの施設では,撮影装置を固定し,手術台を動かしていたのですが,手術台の移動に合わせて手術器具やチューブ,ケーブル類が一緒に動くため,手術台周りが煩雑になり,ストレスになっていました」
さらに,マッケ社のMAGNUS 1180との組み合わせについては,「可動域が広く,Cアームとスムーズに連動して動作するので,患者さんのポジショニングが容易で,開心術にも使用できるので満足しています」と述べている。
一方で,コンソールの操作性も評価されている。放射線課の石田剛士技師は,「Cアームのポジションは,東芝メディカルシステムズに要望して使いやすいように作ってもらいました。Cアームの退避位置は,患者さんの頭側と足側にあり,病例に応じて使い分けています。また,メニューやメッセージが日本語で表示されるのでわかりやすく,確実な操作にも結びついています」と説明する。

●‌ペンタブレットでのマーキングによりデバイスのポジショニングを支援

ハイブリッド手術室に設置された56インチ,8メガピクセルの高精細モニタは,目的に応じたさまざまな画像を表示できる。そこに表示されるINFX-8000Hの画質についても,島村部長は,「画質も良好で,ストレスなく手技に臨めます。特に,高精細の大画面液晶モニタに表示されるので,血管,ステントグラフトなどが詳細に観察できます」と評価する。さらに,VR像を大画面モニタ上で一緒に表示することで,ステントグラフトを内挿する際の角度などの位置決めも高い精度で行えると,島村部長は付け加える。
INFX-8000Hの画質の良さに加えて,おおくまセントラル病院では,独自の運用法で,ステントグラフト内挿術の手技の精度を高めている。それが,ペンタブレットを使ったマーキングである。島村部長は,「透視ロードマップでは,造影剤と重なる箇所でのステントグラフトの視認性が低下することがあります。実際の手技では,例えば腹部大動脈瘤ならば,腎動脈の分岐部の直下にステントグラフトを留置するので,分岐部がマーキングされていれば,透視画像だけを見ながら手技を進めることができます。他施設では,モニタ上にテープや水性ペンでマーキングしている場合もありますが,それに比べると,当院におけるペンタブレットでのマーキングは非常に視認性も良く,手技がやりやすくなります」と,メリットを説明する。このアイデアは島村部長が提案し,東芝メディカルシステムズが速やかに対応して生み出されたものだという。大阪大学など関連施設から研修に来る若い医師からも,大変好評だそうだ。

■症例1 debranched TEVAR(弓部分枝へのバイパスを伴う胸部大動脈ステントグラフト内挿術)

症例1 debranched TEVAR(弓部分枝へのバイパスを伴う胸部大動脈ステントグラフト内挿術)

大動脈弓部のsaccular aneaurysm 56mmを指摘される。 左総頸動脈遮断。 両鎖骨下動脈バイパス-左総頸動脈バイパス形成(脳への血流を維持できるように右鎖骨下動脈から左総頸動脈のバイパス術施行)。 弓部にステントグラフト留置。 左鎖骨下動脈近位部をコイル塞栓。

 

■症例2 EVAR(腹部大動脈ステントグラフト内挿術)

症例2 EVAR(腹部大動脈ステントグラフト内挿術)

腹部大動脈瘤50mm,左総腸骨動脈瘤40mm,右内腸骨動脈瘤32mm,左内腸骨動脈57mmを指摘される。 前日に左内腸骨動脈コイル塞栓施行。 右内腸骨動脈コイル塞栓術を施行し,ステントグラフトを留置。

 

■ハイブリッド手術室で「高度な診療機能を持つかかりつけ病院」に

ハイブリッド手術室が順調に稼働し,ステントグラフト内挿術をはじめとした心疾患の診療実績を着実に伸ばしているおおくまセントラル病院。今後は,最先端のハイブリッド手術室を生かし,大動脈弁狭窄症に対するTAVIも視野に入れている。2013年6月から心臓血管外科に赴任した竹内麦穂医長は,「TAVIでは,開心術に切り替えることを考慮して,広いスペースが必要となりますが,当院のハイブリッド手術室は,それに対応できる十分なスペースがあると思います。これからさらに手術室の環境を整備し,TAVIなどのハイブリッド手術の適応を広げていきたいと考えています」と述べている。
古川院長も,「血管治療センターでは,ハイブリッド手術や,内科と外科のコラボレーションが増えていくと思います。病院としてこうした機能強化を図りながら,地域に開かれた病院にしたいと思います」と,将来を展望する。大隈理事長も,「今後症例を増やして,ハイブリッド手術室を当院の大きな特色としていくことで,地域における役割を明確にしながら,周辺の医療機関と連携して,尼崎の地域医療に貢献していきたいです」と力強く語る。
「高度な診療機能を持つかかりつけ病院」をめざす同院にとって,INFX-8000Hを核としたハイブリッド手術室は,尼崎の医療を支える大きな武器だと言える。

(2013年6月4日取材)

 

医療法人 朗源会 おおくまセントラル病院

医療法人 朗源会 おおくまセントラル病院
住所:‌〒661-0953
兵庫県尼崎市東園田町4-23-1
TEL:06-4960-6800
病床数:240床
診療科目:救急科,循環器内科,心臓血管外科,脳神経外科,内科,外科,整形外科,麻酔科,放射線科,神経内科,肛門外科,消化器外科,リハビリテーション科