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AlluraClarityファミリー × 京都桂病院増加する末梢血管疾患に対し「AlluraClarity」による低被ばくかつ高精度なインターベンションを施行─‌IVUSの併用や最新アプリケーション“2D Perfusion”がもたらす治療の進歩

2016-2-1

AlluraClarity FD10/10と心臓血管センターのスタッフ

AlluraClarity FD10/10と
心臓血管センターのスタッフ

京都市西京区にある京都桂病院は,京都・乙訓医療圏の地域中核病院として,長年にわたり高度医療を提供してきた。1997年に開設された心臓血管センターでは,インターベンションを中心に外科治療も含め,豊富な治療実績を誇っている。開設初期からフィリップスエレクトロニクスジャパンの血管撮影装置を使用しており,現在は,同社のハイエンドクラス装置である「AlluraClarity」ファミリー3台が稼働している。特に,最近では末梢血管のインターベンションが増加しており,IVUSやAlluraClarityの最新アプリケーションを活用して,低被ばくかつ高精度の治療を行っている。末梢血管のインターベンションの実際について,心臓血管センターの中村 茂所長と臨床工学科の岡田忠久科長に取材した。

中村 茂 心臓血管センター所長

中村 茂
心臓血管センター所長

岡田忠久 臨床工学科科長

岡田忠久
臨床工学科科長

 

 

循環器領域の救急医療を担う心臓血管センター

京都市西京区にある京都桂病院は,京都・乙訓医療圏における西京区や右京区,長岡京市,向日市など,西部地域の地域中核病院である。「私たちは,患者さんの人権を尊重し,地域に必要な基幹的中心的な医療を担当すると共に,さらに高次の医療に対応できるよう努力します」という理念の下,長年にわたり地域医療の重責を担い続けており,2007年には地域がん診療連携拠点病院,2011年には地域医療支援病院の指定を受けている。
また,同院の診療の特色として,内科系と外科系が連携してチーム医療を行うセンター制をとっている。1975年には呼吸器内科と呼吸器外科からなる呼吸器センター,93年には消化器内科と外科からなる消化器センター,97年には心臓血管内科と心臓血管外科からなる心臓血管センターを開設した。
中村所長は,「心臓血管センターは,京都・乙訓医療圏における循環器領域の救急医療を担うために立ち上げられ,インターベンションを中心に発展してきました。これまで総カテーテル件数は,約3万7000件の実績があります。主な治療実績としては,冠動脈のインターベンションが約9600件,末梢血管のインターベンションが約3800件,アブレーション治療が約900件,外科治療が約2400件となっています」と説明する。
心臓血管センターでは,「心臓血管病の皆さんに,妥協のない最新・最善の治療を提供します」という理念を掲げ,24時間365日体制で,迅速かつ低侵襲の治療に取り組んでいる。そして,最新・最善の治療を提供するために,医療機器の整備にも力を入れており,最新鋭のモダリティやデバイスを積極的に採用している。
特に,血管撮影装置については,カテーテル室3部屋すべてに,フィリップスエレクトロニクスジャパン(以下,フィリップス)のハイエンドクラス装置を導入してきた。現在は,同社の最新装置であるAlluraClarityファミリーが3台稼働しており,生活習慣病の増加や高齢化によりニーズが増え続けているインターベンションを施行している。

術者自身が自在に操作できるAlluraClarity

京都桂病院の心臓血管センターでは,長年にわたりフィリップスの血管撮影装置を使い続けてきた。中村所長は,その理由を次のように語った。
「私たちが血管撮影装置に求めるのは,インターベンションを行う際に,手技に応じて必要な画像をすぐに,高画質で表示できることです。手技を進める上では1フレームごとに重要となるので,テーブルサイドで自らが画像を選択することにより,妥協することなく術者自身が望む画像を得ることができます。フィリップスの血管撮影装置は,画質が良いのはもちろんのこと,術者自身の管理下で自在に装置を扱いながら,手技を行えるところが非常に優れています」
同センターでは優れた操作性を評価して,十数年以上にわたり同社のイメージインテンシファイア(I.I.)搭載型の血管撮影装置を使用してきた。更新時期を迎えたことから,末梢血管のインターベンションなど高度な手技のニーズにフレキシブルに対応できるよう,順次装置を更新していき,現在は「AlluraClarity FD10」「AlluraClarity FD20」「AlluraClarity FD10/10」の3台が稼働している。なかでもAlluraClarity FD10/10は,AlluraClarityファミリーの国内第1号機である。
各装置について中村所長は,「AlluraClarity FD10は,小口径のFPDで機動力があるので,主に通常の冠動脈インターベンションに使用しています。AlluraClarity FD20は,大口径FPD(300mm×380mm)で視野が広いため,下肢などの末梢血管のインターベンションで威力を発揮しています。バイプレーンタイプのAlluraClarity FD10/10は,不整脈のアブレーション治療にも非常に有用です。このように,当センターでは基本的に治療の内容に合わせて,装置の特長を生かして使い分けをしていますが,いずれの装置でも冠動脈,末梢血管のインターベンションに対応できるので,カテーテル室の状況に応じて,フレキシブルに使用しています」と説明する。

58インチの「FlexVision XL」と組み合わせたAlluraClarity FD10

58インチの「FlexVision XL」と組み合わせたAlluraClarity FD10

大口径FPDで下肢のインターベンションなどで威力を発揮するAlluraClarity FD20

大口径FPDで下肢のインターベンションなどで威力を発揮するAlluraClarity FD20

   
日本国内第1号機のAlluraClarity FD10/10

日本国内第1号機のAlluraClarity FD10/10

自在な操作を可能にするXperモジュールとリモコン

自在な操作を可能にするXperモジュールとリモコン

 

“ClarityIQ technology”による低被ばくでのインターベンション

AlluraClarityファミリーは,2012年4月から日本国内での販売を開始したフィリップスのハイエンドクラスの血管撮影装置である。その最大の特長は,ClarityIQ technologyによる高画質と低被ばくの両立だと言える。最新の画像処理技術と高性能プロセッサを採用したことで,リアルタイムで装置が作動し,動きのある部位でもノイズやアーチファクトを抑えつつ,強調処理や輪郭のシャープ処理により,明瞭な画質を提供する。また,患者の体動やテーブルの移動にもリアルタイムに対応して自動的に補正する。加えて,高信頼“MRC X線管球”からモニタに至るまでのデジタル処理は,心臓領域や脳神経外科領域などの各種アプリケーションに最適化して行われる。
心臓血管センターでは,AlluraClarityファミリーの被ばく低減について評価を行い,論文で発表している。中村所長らは,“Heart and Vessels”に2015年4月に発表した“Patient radiation dose reduction using an X-ray imaging noise reduction technology for cardiac angiography and intervention”において,AlluraClarityファミリーによる冠動脈インターベンションで約66%の被ばく低減が可能であったと報告した。中村所長は,「AlluraClarityファミリーに更新したことで,従来と比較し,手技スタイルを変えることなく6割以上の被ばく低減が可能となりました。最近では,透視撮影のフレームレートを7.5fpsに落としてさらなる被ばく低減を進めています。残像がなく高画質なので,ストレスを感じることなく手技に集中できます。ほとんどの手技は透視画像を見ながら行うので,透視画像の画質は重要です。その点,AlluraClarityファミリーは低被ばくと高画質のバランスがとれており,高く評価しています」と述べる(アンギオ臨床画像例を参照)。
また,岡田科長も,「低被ばくであることは,患者さんにとってもメリットになりますが,治療を行うスタッフにとっても安心できるので,手技に集中でき非常に良いと思います」と,医療従事者の被ばく低減の観点から,その効果を説明する。
このほか,AlluraClarityファミリーは,撮影している画像の再生やコマ送りなどをリモコンで行えるほか,テーブルサイドに付属する“Xperモジュール”で撮影プロトコールの設定やCアーム動作の制御などを操作でき,術者が手技に集中できる点が評価されている。また,冠動脈に留置するステントの視認性を向上する“StentBoost”や,下肢血管インターベンションにおいて造影画像の上に透視画像を重ねてステントの位置決めなどを行う“Roadmap pro”といったアプリケーションも,精度の高い手技を支援する機能として活用されている。

アンギオ臨床画像例:冠動脈インターベンションにおけるAlluraClarityの画像例

アンギオ臨床画像例:冠動脈インターベンションにおけるAlluraClarityの画像例

 

末梢血管インターベンションを高精度に行うためにIVUSを併用

現在,心臓血管センターには,内科医が9名,外科医が4名在籍している。また,臨床工学科には,インターベンションを支援する臨床工学技士が19名いる。通常,インターベンションは,内科医1名,臨床工学技士2名,看護師1名の4人体制で行っており,コンソールにはスタッフを配置せず,血管撮影装置の操作は,すべてカテーテル室内で完結するようにしている。
心臓血管センターが行う治療において,近年,特に増加しているのが下肢などの末梢血管のインターベンションである。この背景には,治療デバイスの進化と高齢化があると,中村所長は説明する。
「末梢血管のインターベンション症例が増えている要因は2つあると考えます。1つは,高齢者や生活習慣病の患者の増加です。私が医師になった30年ぐらい前は,末梢血管疾患の治療はほとんどなかったのですが,高齢化が進んだことなどにより10年ほど前から徐々に増えてきました。もう1つの要因としては,治療デバイスの開発が進み,末梢血管のインターベンションに対応する製品が増えてきて,治療環境が整ってきたことが挙げられます。これにより,従来は,重症下肢虚血から足が壊死して,切断しなければならなかった症例でも,治療デバイスを使って血行再建術を施行することができるようになりました」
心臓血管センターでは,冠動脈と末梢血管のインターベンションの比率が6対4となっており,末梢血管の比率が高まっている。今後も症例数が増えることが予想されているだけに,高い治療精度を維持しつつ,多くの症例に対応する装置やデバイスの選択が重要になってくる。
このような中,心臓血管センターでは,末梢血管の慢性完全塞栓病変(CTO)におけるインターベンションで,IVUSを積極的に使用している。CTOでは,IVUSの画像を参照することで,ワイヤが血管外に出てしまうリスクを低減できるので全例で用いており,全体でも30~40%の症例でIVUSを使っている(IVUS関連画像例を参照)。使用している装置・治療デバイスは,ボルケーノ・ジャパンのイメージングシステムとIVUSカテーテルの「Eagle Eye」などである。中村所長は,ボルケーノ・ジャパンのIVUS製品について,「フェーズドアレイ方式のIVUSカテーテルは,パッケージから開封してすぐに使用できる簡便性が非常に良いと思います。カテーテル自体も堅牢で,破損などのトラブルがなく,安心して使える信頼性の高さも評価しています」と述べている。実際のインターベンションでは,AlluraClarityファミリーのモニタにIVUS画像を表示して参照しながら手技を進めている。中村所長は,末梢血管のインターベンションにおけるIVUSの有用性について次のように説明する。
「血管の診断・治療は,血管撮影装置の進歩とともに進んできましたが,造影画像や透視画像は,血管の『影』を見ているだけで,正確な血管径を把握できません。症例数の多い冠動脈のインターベンショニストは,手技の経験を積むことで,血管径を把握できるようになります。しかし,まだ症例数の少ない末梢血管のインターベンションでは,IVUSを用いることで血管径や病変の長さを正確に実測し,血管撮影装置の画像に情報を追加することになるので,治療の精度を高められます。特に,CTO症例では,透視画像を見ながらカテーテルを操作しますが,実際に血管の真腔を通っているのか判断できない場合があります。それがIVUSを使うことで,カテーテルの正確な位置を知ることができ,治療成績の向上にもつながっています」
また,心臓血管センターでは,研修医などのトレーニングにおいて,動脈硬化の血管内の様子がわかるので,ラーニングツールとしても活用している。若手医師の治療技術が向上することは,将来的により多くの患者さんの治療に貢献できるので,ラーニングツールとしての意義は大きい。岡田科長も同様に,「臨床工学技士,看護師も理解を深めることができ,操作技術などの向上が図れ,チーム全体でのレベルアップが可能になります」と話している。

IVUS関連画像例:IVUS併用下肢インターベンションの画像例

IVUS関連画像例:IVUS併用下肢インターベンションの画像例

 

治療効果を評価できる“2D Perfusion”

末梢血管のインターベンションは,日本国内全体でも症例数が増えているが,一方で治療後の再狭窄率の高さが指摘されている。これは血管径が細く,狭窄している病変が長いことから,バルーンで拡張しても再狭窄しやすいためである。そこで,京都桂病院の心臓血管センターでは,AlluraClarityファミリーにオプションで搭載できる最新のアプリケーションである2D Perfusionを用いて,バルーン拡張術前後の血流動態の評価を試みている。
2D Perfusionは,DSA画像の情報から時間濃度曲線を算出し,(1) Arrival Time,(2) Time to Peak,(3) Wash-in Rate,(4) Width,(5) Area Under Curve,(6) Mean Transit Timeを計測して,カラーマッピング画像,曲線グラフ,計測値を表示する。プログラムを選択すれば,撮影後,自動的にワークステーションで処理が行われ,治療前後の血流の違いを比較できる。心臓血管センターでは,重症下肢虚血例の術中評価に2D Perfusionを用いている。中村所長は,「バルーン拡張術は,拡張しすぎると血管の解離が起こり,拡張が不十分だと再狭窄率が高くなるので,2D Perfusionのカラーマッピング画像で,血流速度や血流量を見て,改善具合いの判断の参考にしています。また,患者さんへの説明においても,血流をカラーで示せるので,理解しやすいと思います」と述べている(2D Perfusion画像例を参照)。心臓血管センターでは,引き続き2D Perfusionの評価を続け,バルーン拡張術の適用の判断や術後の定期的な評価での使用も検討していくことにしている。

2D Perfusion画像例:下肢インターベンション2D Perfusion画像例

2D Perfusion画像例:下肢インターベンション2D Perfusion画像例

 

今後も最新技術を導入して高度医療を地域に提供

京都桂病院の心臓血管センターでは,今後もAlluraClarityファミリーを活用しインターベンションを行っていくが,中村所長は,経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)を含む治療手技の拡大に取り組んでいきたいと将来展望を語っている。新たな治療法やそれに伴うモダリティなどの最新技術を積極的に取り入れてきた心臓血管センターでは,これからも最先端の高度医療を提供し,地域中核病院としての使命を果たしていく。

(2015年12月15日取材)

 

 

京都桂病院

社会福祉法人 京都社会事業財団 京都桂病院
住 所:〒3615-8256
京都市西京区山田平尾町17
TEL:075-391-5811
病床数:585床
診療科目:29科目
URL:http://www.katsura.com