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  • 放射線治療装置 Halcyon × 社会医療法人財団互恵会 大船中央病院高品質な治療と優れた効率性を両立する「Halcyon」で,世界有数の実績を誇る体幹部定位放射線治療を提供 ─100cmのガントリ開口径や,治療時間の短縮,静かな環境で,患者さんにやさしい放射線治療を実施

    2019-11-1

    放射線治療センターが導入したHalcyonの国内第1号機

    放射線治療センターが導入したHalcyonの国内第1号機

    1952年の開設以降,約70年にわたり地域医療を支え続けている神奈川県鎌倉市の大船中央病院は,2019年3月,放射線治療センターにバリアンメディカルシステムズの放射線治療装置「Halcyon」を導入した。放射線治療センターは,高精度な放射線治療である体幹部定位放射線治療(stereotactic body radiation therapy:SBRT)で世界有数の実績を誇り,これまでも治療の質を高め,患者により良い治療を提供することをポリシーとしてきたが,Halcyonを導入したことで,より多くの患者に高品質な治療を提供する体制が整えられた。常に最先端の照射技術を追究し,スタッフ一丸となって最善の治療の提供に尽力する放射線治療センターの治療の実際とHalcyonの初期使用経験について,武田篤也センター長と奥 洋平物理士,仁科亮平主任技師に取材した。

    武田篤也 センター長

    武田篤也 センター長

    奥 洋平 物理士

    奥 洋平 物理士

    仁科亮平 主任技師

    仁科亮平 主任技師

     

    SBRTで世界有数の実績を誇る放射線治療センター

    大船中央病院は,2010年に社会医療法人の認定を受け,現在は病床数285床,29診療科を標榜し,神奈川県南東部の地域中核病院の一つとして,湘南地域はもとより三浦半島までの医療を担っている。幅広い診療領域や救急医療を提供するとともに,SBRTで世界的にも豊富な臨床経験を有する放射線治療センターや,全国でもいち早く乳房温存療法に取り組み全国から乳がん患者が来院する乳腺センター,全国でも珍しい炎症性消化器疾患(IBD)を専門に扱う消化器・IBDセンターなど,きわめて専門性の高い医療の提供にも取り組んでいる。
    なかでも放射線治療センターは,現在は院内のtumor boardを取り仕切るなど,同院のがん診療においてリーダーシップを発揮している。2004年に放射線治療室として開設した当初は,武田センター長と診療放射線技師2名で治療を行っていた。当時,同院の診療圏内に放射線治療を行っている医療機関が皆無であったことから,病院側の強い要望で放射線治療室の開設が計画され,前勤務先でSBRTの実績が豊富であった武田センター長が要請を受けて赴任したのが始まりとなる。
    放射線治療の実施に当たっては,まず通常照射を確立してスタッフの経験を積み,次のステップとしてSBRTを実施することを視野に入れ,放射線治療装置は高精度な治療にも対応可能なバリアン社の「CLINAC 2100C」と位置照合用の同室CTを導入した。主に院内の患者に対する乳がんの術後照射を中心に放射線治療を開始し,他科との連携も積極的に行いながら症例数を積み重ねていった。また,武田センター長が近隣の中規模・大規模病院や大学病院のカンファレンスに出向いて放射線治療の周知を図ることで,他院からの紹介患者数も順調に増加。治療開始から9か月後にはSBRTの開始に至った。
    2009年には奥物理士が同院に赴任したことで,それまで放射線治療医が行っていた治療計画立案を物理士が担うようになり,放射線治療医は治療方針の決定や日常の診療により注力できるようになった。しかし,この頃には,1日の患者数が平均50〜60名,最大で約70名にまで膨れ上がり,限界をはるかに超えていた。そこで,2011年には建屋を増築し,新たにバリアン社の「CLINAC iX」を導入して2台体制とした。同時に,腫瘍に対する線量集中性を高めるとともに,正常臓器への線量低減が可能な強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy:IMRT)を開始した。現在では,IMRTの保険適用となるほぼ100%の症例に対して,IMRTおよび強度変調回転放射線治療(volumetric-modulated arc therapy:VMAT)を施行している。
    このように,放射線治療センターでは,常に最先端の技術を取り入れ,治療の質を高めるとともに,一人ひとりの患者により良い治療を提供することをポリシーとしてきた。放射線治療装置が2台体制になってからは,1日の患者数が最大で90名にまで増加。肝臓がん,早期肺がん,前立腺がん,オリゴメタスタシス(少数転移)のSBRTで優れた治療実績を上げている。特に,SBRTの照射法は,肉眼的腫瘍体積(GTV)および計画標的体積(PTV)に高線量を照射しつつ,正常臓器の線量は日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の臨床試験で採用された標準的な照射法と同等あるいはそれ以下に抑制できる同院独自の方法を実施。3年局所制御率は,早期肺がんで99%,肝臓がんで96%と,標準的な照射法よりも良好な結果が得られている。2004年の放射線治療室の開設から2019年8月までのSBRTの患者数は,肝臓がんが999例,肺がんが894例,前立腺がんは311例(SBRTが保険適用となった2016年以降)に上る。なかでも肝臓がんのSBRTの治療実績および論文数は膨大で,まさに世界トップクラスと言えるだろう。

    Halcyonはコンパクト設計でありながら高品質な治療を提供可能。壁面の放射線遮蔽レンガを生かしたデザインと間接照明で,落ち着いた治療環境を構築している。

    Halcyonはコンパクト設計でありながら高品質な治療を提供可能。壁面の放射線遮蔽レンガを生かしたデザインと間接照明で,落ち着いた治療環境を構築している。

     

    装置本体のモニタはタッチパネル式で操作しやすい。

    装置本体のモニタはタッチパネル式で操作しやすい。

    コンソールは操作ボタンが少なく,次に押すボタンが順次青く点灯してわかりやすい。

    コンソールは操作ボタンが少なく,次に押すボタンが順次青く点灯してわかりやすい。

     

    コンパクトかつ優れた治療効率を評価しHalcyonの導入を決定

    同院で放射線治療が開始されてから約13年が経過した2017年,CLINAC 2100Cが更新時期を迎えていた。しかし,更新のために一時的に1台体制に戻すと,治療数の維持が困難となり,長年かけて構築してきた近隣の医療機関との連携も途切れてしまいかねない。そこで,武田センター長は,「装置の設置スペースを確保できるのであれば,一時的に3台体制とし,治療数が伸びれば3台体制を維持,伸びなければ1台を廃棄して2台体制に戻すという2つの方針を検討しました」と述べている。CLINAC 2100Cは通常照射(乳腺に対する照射)のみを行っていたため同室CTで位置照合をする必要がなくなった。そこで,CLINAC 2100Cの同室CTを撤去し,治療計画CTを新設した。また,3台目の装置を設置する場所は,もともと治療計画CT室およびCLINAC iXの操作室であり,高エネルギーX線に対する遮蔽をまったく行っていなかったため遮蔽壁を厚くする必要があった。そのため,新しい装置はコンパクトであることが要求された。
    こうした状況の中,2017年5月にヨーロッパでHalcyon(ハルシオン)が発表され,偶然,奥物理士がそのニュースに目を留めた。「Halcyonは非常に省スペースな装置であることがわかり,すぐに3台目の装置の候補に挙げました」と,奥物理士は述べている。また,武田センター長は,「HalcyonはIMRT/VMATを効率的に実施可能な装置として開発されており,VMATを実施する頻度の高い当院の状況にうってつけでした。患者さんの治療時間を短縮でき,かつ省スペースであることは,他社の装置にはない大きな特長でした」と,その魅力を語る。Halcyonはスペック的にも,同院での治療に十分に対応可能であったことから,日本国内での薬機法承認を取得した同年11月,国内第1号機の導入が正式に決定された。

    コミッショニングの効率化により短期間で治療を開始

    Halcyonは,“高品質なケア”“運用効率の向上”“人にやさしいデザイン”をコンセプトに開発された。リング型ガントリを採用し,ガントリ回転速度がCアーム型の最大4倍(同社比)になったことで,治療時間の短縮や,治療時間を維持したまま照射野数やアーク数を増やすことが可能となる。コーンビームCT(CBCT)はMV CBCTとkV CBCTを選択可能で,MV CBCTでは最短15秒で画像を取得できる。また,この回転速度をサポートするために,マルチリーフコリメータ(MLC)は2段式で交互配列された「デュアルレイヤーMLC」が採用され,リーフ間の線量漏洩が大幅に抑制された。さらに,Halcyonはシンプルな設計により,搬入と組み立て期間が従来よりも大幅に短縮可能である。操作性も向上しており,治療開始から終了までの手順が,従来の30以上から10程度に減少し,通常は約15分を要する治療時間が5〜7分へと短縮した。このほか,リニアモーターと水冷式の採用による静かな治療環境や,100cmの広いボアの開口径,最低高が低く乗り下りしやすい治療台など,患者のストレスの軽減に配慮された設計となっている。
    一方,同院では工事業者の選定などに時間を要し,実際の着工は翌2018年9月となった。設計の段階で,コンクリートによる遮蔽では壁が厚くなりすぎて操作室が造れないことが判明し,より高密度な三石耐火煉瓦社の「RASHIX」が放射線遮蔽材として採用された(RASHIX60cm≒コンクリート120cm厚)。その後,2019年2月中旬にHalcyonが搬入され,設置・調整作業などを経て,3月18日から治療が開始された。Halcyonの搬入から稼働までの流れについて,奥物理士は次のように述べている。
    「通常,放射線治療装置の導入には,設置に1か月,装置の引き渡し後のコミッショニングに約3か月かかると言われますが,Halcyonの設置・調整作業は10日で終了し,ビームデータの確認も半日で終わりました。Halcyonの場合,併せて納入される放射線治療計画システム『Eclipse』に,出荷時にすでにビームデータが登録されているため,ユーザー側での登録作業が一切不要で,登録データの確認と治療計画の検証だけですみます」
    新しいEclipseの操作性も,同院で以前から使用しているEclipseと共通のユーザーインターフェイスであったことから,非常にスムーズにHalcyonでの治療がスタートした。

    放射線治療計画システム「Eclipse」での治療計画の様子

    放射線治療計画システム「Eclipse」での
    治療計画の様子

    操作室ではモニタで治療中の患者の様子を確認しながら安全な治療を実施

    操作室ではモニタで治療中の患者の様子を
    確認しながら安全な治療を実施

     

     

    100cmのボアの開口径が患者を選ばない治療に貢献

    Halcyonが稼働を開始してから8月までの約5か月間で,すでに150例以上に対して治療を行っている。Halcyonでの治療について,武田センター長は次のように述べている。
    「治療精度はCLINAC iXとさほど変わらないと考えますが,現時点では,Halcyonでどのような治療が可能かなどを検討しながら慎重に治療を進めています。そのため,2台の装置のどちらでも同等の治療が行えると判断した症例については,Halcyonで順次慎重に使用を開始しています。HalcyonはX線エネルギーが6MV FFFと,実効エネルギーはCLINAC iXよりも低いため,当初は前立腺がんなどの深部臓器の治療が可能か疑問もありましたが,VMATを行うことで周囲正常臓器の線量をさほど高めずに治療可能であることがわかりました」
    すでに肝臓がん,肺がん,前立腺がんについては同等の治療が行えると判断した上で臨床使用しており,現在は乳がんの術後照射も開始している。
    また,Halcyonによる治療の有用性について,奥物理士は,「CLINAC iXで治療する場合,例えば乳がん術後照射で両手を十分に挙上できない患者さんなど,体位に問題がある場合には,照射できる範囲のみで治療計画を作成せざるを得ないこともあります。しかし,Halcyonはボアの開口径が100cmと広いので,患者さんを選ばずに治療可能です。また,VMATは,全方向から照射した方がきれいな線量分布となるため,どのような体位でもボア内に収まることは,とても大きなメリットです」と評価している。

    Halcyonによる乳腺接線照射の例

     

    肝臓に対する体幹部定位放射線治療の例

     

    前立腺に対する体幹部定位放射線治療の例

     

    肺に対する体幹部定位放射線治療の例

     

    ガントリ回転速度の高速化と治療の自動化,優れた安全性を高く評価

    現在,放射線治療センターのスタッフは,治療医が常勤2名,非常勤4名,物理士2名,診療放射線技師7名で治療に当たっている。臨床業務は診療放射線技師が行い,Halcyonの操作は,導入当初は仁科主任技師を含め2名が担当したが,現在はほかの診療放射線技師も順次ローテーションを組んで,段階的に全員が操作できるように進めている。
    Halcyonの実際の操作性について,仁科主任技師は,「操作がとてもシンプルで,治療がスムーズかつ非常に速く行えます。特に,CBCTであまりに速く画像が取得できるので,ガントリの回転速度が高速化していることを実感しました。また,コンソールのボタンの数がとても少なく,次に押すボタンが順次青く点灯するため,操作に迷うこともありません」と語る。
    例えば,CLINAC iXでは,CBCT撮影用のアームの出し入れや,照射の開始角度を考慮してCBCT撮影時のガントリの回転方向を決めていたが,Halcyonではそれらがすべて自動化された。また,照射野が複数ある治療計画の場合,CLINAC iXでは照射野ごとに照射角度や照射野の大きさなどをコンソールから装置側に送信(モードアップ)し,その都度,患者や治療台,点滴などにガントリが当たらないよう確認しながら照射する必要がある。しかし,Halcyonでは“Automation”機能によりモードアップが不要となり,ガントリの干渉の心配もないため,仁科主任技師はHalcyonの安全性についても高く評価している。治療計画CTの撮影時には,診療放射線技師が患者の体に印をつけ,その印を治療時の体位補正や実際の照射位置までの距離を測る目印とする。CLINAC iXではその目印をもとに寝台を照射位置まで手動で移動させる必要があるが,Halcyonでは事前に照射位置の座標を読み込んでおけば,“デルタカウチシフト”機能により寝台がその位置まで自動で移動する。このように,多くの工程が自動化されたことで,治療の効率化が図られ,非常に優れたワークフローが実現した。
    Halcyonは,患者からも高い評価が得られている。仁科主任技師は,「CLINAC iXでも治療を受けたことのある患者さんからは,とにかく速い,そして,音が静かで眠ってしまった,以前よりも治療台に乗り下りしやすいと,非常に好評です」と述べている。さらに,治療室内は間接照明を取り入れ落ち着いた雰囲気のデザインとなっており,患者が安心して治療を受けられる環境が構築されている。

    Halcyonの本格稼働により高精度放射線治療の恩恵をより多くの患者に

    同院では,2019年1〜8月までに548例の治療を行っているが,そのうちVMATが356例(65%),肺,肝臓,前立腺のSBRTが合計250例(45.6%)と,治療全体に占めるVMATとSBRTの割合が非常に多くなっている。SBRTの治療回数は,例えば前立腺では5回で終わるなど,通常照射と比べると大幅に少ないため,同院では現在,年間の患者数は前年比で増加傾向にあるにもかかわらず,1日あたりの治療数は減少している。さらに,現在,Halcyonでは1日平均18名の治療が行われているが,仁科主任技師は,「朝8時半〜16時までの治療時間内に,おそらく今の3倍の50名くらいまでは対応可能だと考えています」と述べており,まだまだ治療数を増やせる余地がある。
    Halcyonでの治療成績が出るのは5年後となるが,武田センター長は精度検証の結果から,これまでと同等の治療成績が得られると予測している。Halcyonの本格稼働によって,一人でも多くの患者が高精度放射線治療の恩恵を受けられる日が来ることが待たれる。

    (2019年8月26日取材)

     

    社会医療法人財団互恵会 大船中央病院

    社会医療法人財団互恵会大船中央病院
    住 所:〒247-0056 神奈川県鎌倉市大船6-2-24
    TEL:0467-45-2111
    病床数:285床
    URL:https://www.ofunachuohp.net/

     

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