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  • 放射線治療装置 Halcyon × 近畿大学病院治療効率に優れた「Halcyon」を生かしVMATによる全脳全脊髄照射を実施 ─優れた線量集中性と治療時間の短さが患者の負担を大幅に軽減

    2020-12-1

    高品質な治療と優れた治療効率を両立するHalcyon

    高品質な治療と優れた治療効率を両立する
    Halcyon

    近畿大学病院は,2019年3月にバリアンメディカルシステムズの放射線治療装置「Halcyon」を導入し,2020年には世界的にも報告の見られないHalcyonによる全脳全脊髄照射を実施した。その治療の実際について,同大学医学部放射線医学教室放射線腫瘍学部門の西村恭昌教授,医学物理士の門前 一准教授,石川一樹医学部講師,同院中央放射線部の診療放射線技師・医学物理士の松本賢治氏に取材した。

    高精度放射線治療など最先端のがん診療を提供

    近畿大学病院は1975年に開設され,南大阪地区唯一の大学病院として地域医療の中心的な役割を果たしてきた。特定機能病院として,がん診療に注力しており,2020年には地域がん診療連携拠点病院(高度型)に指定された。
    同院で放射線治療を受ける患者は年間750〜800症例に上る。放射線治療科では現在,外部照射として「TrueBeam」とHalcyon(共にバリアン社製)による治療,内部照射として子宮がんに対するイリジウム192高線量率密封小線源治療,前立腺がんに対するヨウ素125永久挿入密封小線源治療のほか,RI内用療法も可能である。放射線治療計画にはPET/CTシミュレーションなどを活用し,安全かつ高品質な治療を提供している。また,新型コロナウイルス感染症流行下においては,寡分割照射を積極的に行うなど,感染防止に努めつつ治療が続けられた。このように,同院では常に患者の利益を最優先とする姿勢が貫かれている。

    西村恭昌教授

    西村恭昌教授

    門前 一准教授(医学物理士)

    門前 一准教授
    (医学物理士)

     
         
    石川一樹医学部講師

    石川一樹
    医学部講師

    松本賢治技師・医学物理士

    松本賢治
    技師・医学物理士

     

     

    IMRTを効率的に実施可能なHalcyonを導入

    放射線治療における同院の基本的な考え方として,根治が可能な患者は極力根治をめざすことを重視している。そのため,同院ではこれまで,画像誘導放射線治療(IGRT),強度変調放射線治療(IMRT)/強度変調回転放射線治療(VMAT)や定位放射線治療(SRT/SBRT)などの高精度放射線治療に積極的に取り組んできた。なかでもIMRTについては,わが国での臨床応用が開始された2000年に,全国で2番目に導入した。当時,同院の放射線治療装置は「CLINAC 600C」1台のみであったが,その後,「CLINAC 21EX」(共にバリアン社製)を導入し2台体制となった。さらに,放射線治療技術の急速な進歩に伴いIGRTの強化が求められるようになったことから,2015年に,まずはCLINAC 21EXをハイエンド装置であるTrueBeamに更新。2019年にはCLINAC 600CをHalcyonに更新した。
    Halcyonの選定理由について,西村教授は,「狭い旧治療室に大幅な壁の工事を行うことなく設置可能であったこと,IMRTを効率的に実施できる設計となっている点が,われわれの条件に合致しました」と述べている。Halcyonでは1回10分程度と,きわめて短時間でIMRTが実施可能である。門前准教授も,「Halcyonでは,治療時に必ずコーンビームCT(CBCT)を撮影するため,位置精度が非常に優れています。また,kVのCBCTは最速で約15秒で撮影できます」と評価している。HalcyonによるIMRTの部位別の治療時間(入室〜退室)を測定したところ,前立腺が約7.5分,頭頸部が約10分,肺が約11.7分であった。
    Halcyonの導入により,同院では,根治的照射は基本的にIMRTを実施する体制が整えられた。2台の装置の使い分けについて,門前准教授は,「IMRTはHalcyonで行い,SRT/SBRTや10MVでの治療が必要な場合,定位手術的照射(SRS)でノンコプラナー照射が必要な場合などにTrueBeamを使用しています」と説明する。IMRTの対象疾患は,以前は前立腺と頭頸部がメインであったが,現在は肺や膵臓,子宮などにも適応が広がっている。治療全体に占めるIMRTの割合は,以前の約20%から,45〜50%と2倍以上に増えており,Halcyonが同院の治療に大きく貢献していることがうかがえる。

    VMATによる全脳全脊髄照射への挑戦

    Halcyonの導入から約1年が経過した今年,同院におけるひとつの挑戦として,急性リンパ性白血病(ALL)に対する全脳全脊髄照射が実施された。Halcyonを用いた全脳全脊髄照射は,実施時点で世界的に報告は見られず,同院でも初めての経験であった。西村教授は,「全脳全脊髄照射は適応症例が非常に少なく,年に1,2例あるかどうかです。今回行ったのはALLの中枢神経再発の症例ですが,ALLで適応となることはまれです」と語る。門前准教授は,「本症例は体格が大きいため,コンベンショナルな後方一門照射では対象範囲をカバーできず,また,照射野の“つなぎ目”も課題となりました」と述べている。
    全脳全脊髄照射を後方一門で行う場合,ターゲットが長いため複数のアイソセンタでビーム配置を行う。このため,照射野につなぎ目ができるが,つなぎ目の重なった部分は線量が増加し,逆に照射野を離して隙間ができると線量不足となる。治療計画および実際の照射においては,このつなぎ位置のズレなどに細心の注意が求められる。同院では,後方一門照射の場合は,つなぎ目をずらしたAとBの2プランを用意し,交互に照射を行うことで,つなぎ目部分が過線量とならないよう工夫してきた。しかし,誤って同じプランで続けて照射すると事故につながりかねないことから,診療放射線技師にとっては非常に大きなストレスとなっていた。そこで,松本技師・医学物理士が提案したのがHalcyonによるVMATである。その理由を次のように述べている。
    「治療計画用ソフトウエア『Eclipse』(バリアン社製)に新たに搭載された“Auto-feathering機能”は,つなぎ目部分の上と下の線量分布がなだらかに重なるようVMATの計算をする技術です。これを用いることで,つなぎ目の重なりが多少ずれたとしても,大きな線量誤差が生じないよう,うまくプランニングできると考えました」
    本症例の主治医である石川医学部講師も,「VMATでは,線量分布の検証でもつなぎ目が非常にきれいでした。また,回転照射のため,脊髄への線量集中性を高めつつ,前方に抜けていく放射線量は従来よりもかなり抑えられていました」と説明する。
    さらに,治療時間やワークフローについて,松本技師・医学物理士は,「Halcyonでは1回転が30秒とTrueBeamの半分の時間で照射でき,CBCTも高速に撮像可能です。しかも,患者さんを固定してセットアップボタンを押すと,前日に照射した位置に自動でカウチが移動し,照射後には次のアイソセンタにボタン一つで移動するため,作業がとてもシンプルです」と評価する。治療時間を短くできれば,体動による位置ズレのリスクを低減でき,患者の負担軽減にもつながる。実際に,従来の後方一門照射では約1時間かかっていた治療時間が,Halcyonでは17分と1/3以下となった。
    治療に対する現状での評価について,石川医学部講師は,「今回の症例は1日1.5Gyを12回,計18Gy照射しました。治療後に少し吐き気が出ましたが,後方一門照射で強く出ることの多い放射線皮膚炎が,Halcyonでは一切見られませんでした」と述べており,治療への手応えが得られている。同院では今回の経験から,将来的にはHalcyonによる全身照射の実施も検討されている。

    Halcyonによる全脳全脊髄照射の線量分布

    Halcyonによる全脳全脊髄照射の線量分布
    高身長症例にてアイソセンタは4つとなった。全脳部分は2回転とし,全脊髄部分はすべて1回転とした。計5回転の照射である。

     

    適応放射線治療に有用なソフトウエアの登場に期待

    Halcyonへの今後の期待として,西村教授と石川医学部講師は,「バリアン社が現在開発中の再治療計画ソフトウエアを用いて,Halcyonで適応放射線治療を行っていきたい」と口をそろえる。腫瘍の縮小や体形変化などに合わせた適応放射線治療を行うためには,適切なタイミングでの再治療計画が必要となる。再治療計画には従来,数日を要していたが,この新技術が実用化されれば,患者がカウチ上にいる状態のまま約15分で可能となる。
    多くの革新的な技術によって同院の治療に貢献しているHalcyonであるが,今後のさらなる進歩と可能性に注目したい。   

    (2020年9月28日取材)

     

    近畿大学病院

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