次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2019年9月号

No.209 フュージョン「加算」機能による画像解析

古賀 千晶/望月 純二(医療法人社団健心会 みなみ野循環器病院放射線科)

はじめに

CT装置の技術進歩により3D-CTA画像の撮影が容易となり,多くの施設で施行されている。しかし,3D-CTA画像の作成には十分なコントラストが必要であり,撮影タイミングを間違えたり,造影剤の漏出があると目的の造影能が得られず,3D画像作成が困難となる。また,再撮影は患者への負担増大となり,容易にできることではない。近年注目されているdual energy CTを用いれば,撮影後にリカバリーできる可能性もあるが,導入している施設は限られている。そこで今回,「AZE VirtualPlace」(AZE社製)の標準ソフトウェアである“フュージョン”を使用して,従来のCTでも容易にコントラストを増強させる手法を紹介する。

画像作成方法

方法は非常に簡単かつ単純であり,画像を加算するのみである。AZE VirtualPlaceでは,(1) 「フュージョン」を選択し,「ベース画像」と「重ねる画像」に同じ元画像を取り込み(図1 a),(2) 2つの画像を加算で再構成を行う(図1 b)。この作業により,CT値は均等に2倍される。フュージョンは通常,異なる位相の画像をフュージョン表示させることを目的に使うことが多いソフトウェアであるが,同じ画像においても,加算した上で再構成し,DICOM出力することが可能である。図2は,大動脈3D-CTA画像を作成した症例である。元画像の腹部大動脈のCT値が160HUと十分なCT値を得ることができず,明瞭な3D画像を作成することができなかった。しかし,フュージョンによる加算で,腹部大動脈のCT値は320HUまで上昇した。もちろん,骨などのCT値も2倍になるが,3D-CTA画像を作成するのに十分なコントラストを得ることができた症例である。

図1 画像作成方法

図1 画像作成方法

 

図2 加算再構成によるCT値の変化とVR画像の比較

図2 加算再構成によるCT値の変化とVR画像の比較

 

解析例(1)

十分なコントラストが求められる3D画像として,静脈の3D画像作成が挙げられる。静脈は,動脈と比較して高い造影効果を得ることは難しい。しかし,本手法によりCT値が2倍となることで,CT値の差も2倍となり,コントラストが増強された画像を作成することができる。肝実質とのCT値の差が小さい門脈の描出にも有用だと想定している。加算で再構成することにより,コントラストが増強され,分離が従来と比べ容易となる(図3)。それに伴い,1回の撮影で動脈と門脈を同時に3D化することも可能となる(図4)。本手法では,同じ画像から3D画像作成を行うため,フュージョンする際に一番の問題となるミスレジストレーションが起こることもない。

図3 解析例(1):加算処理におけるプロファイルの変化

図3 解析例(1):加算処理におけるプロファイルの変化

 

図4 解析例(1):加算処理で得られた動脈と門脈の融合画像

図4 解析例(1):加算処理で得られた動脈と
門脈の融合画像

 

解析例(2)

本手法は,加算によりCT値を倍増させるが,加算回数に上限がなく,任意の回数の処理を行うことが可能である。加算回数に応じてコントラストが増強した画像を作成することができ,さまざまな場面で活用することができる。図5 aは,心右心系の造影能が低いタイミングで撮影された心臓CTの画像である。しかし,加算処理を5回行うことで肺動脈の造影能の向上が得られた(図5 b)。これにより,肺塞栓を描出することができた一例である。

図5 解析例(2):心臓CT画像における肺塞栓の描出の比較

図5 解析例(2):心臓CT画像における肺塞栓の描出の比較

 

解析例(3)

本手法は,画像再構成条件を変化させた画像を加算することも可能である。特に,フィルタが異なる画像を加算することで,さまざまな応用ができる。例えば,通常の軟部条件のフィルタと高周波強調フィルタを組み合わせて加算を行えば,CT値が倍増した上で,画像のエッジも担保しつつノイズを抑えた画像の作成ができる。特に,末梢血管の描出に有効である(図6)。

図6 解析例(3):画像再構成条件を変更した加算処理

図6 解析例(3):画像再構成条件を変更した加算処理

 

おわりに

今回紹介したフュージョンによる手法は,画像の加算を行うことで単純にCT値が倍増することを利用した解析であり,十分なコントラストが得られなかった画像においても,明瞭な3D画像の作成が可能となる。また,CT装置の性能に左右されることなく,すべてのCT装置のデータで処理が可能であり,時間を要さないため,煩雑な業務の中でも活用することができる。本手法によって,これまで以上に診断や治療の手助けとなる画像を提示することが可能になると考える。

【使用CT装置】
Brilliance iCT SP,IQon Spectral CT(フィリップス社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace(AZE社製)

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