次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2020年1月号

No.213 下大静脈逆流に対してAZE VirtualPlaceが有用であった症例

坂本 和翔(医療法人社団高邦会 福岡山王病院放射線室)

はじめに

2009年5月に開院した当院は,医療法人社団高邦会グループの一員であり,福岡市近郊の医療を支えている。近年,CT装置の発展により,さまざまな撮影方法が医療現場で行われるようになった。特に,面検出器を搭載したCT装置の登場により,頭部や心臓などを1回転で撮影することが可能となり,同一部位を連続的に撮影する四次元コンピュータ断層撮影(four dimensional computed tomography:4D-CT)が頻回に行われるようになった。
4D-CTは,これまでCT検査で行ってきた質的診断および形態的診断に加えて,血行動態診断および機能的診断を可能とする。特に,血行動態診断における4D-CTは,従来の血管造影検査(angiography)に並ぶ検査であるとされている。

症例提示

患者は46歳,男性。病態は下肢静脈瘤および精巣静脈瘤形成で,さまざまな医療機関を受診したが,原因となる責任病変の特定ができず,当院に紹介された。当院においてエコー検査を実施し,静脈瘤部の逆流は認めたが,静脈瘤の原因となる責任病変はわからなかった。そこで,エコーで確認できなかった下大静脈付近に焦点を当て,逆流などの除外目的で主治医より4D-CTの依頼があった。

撮影体位

当院では,下肢静脈瘤精査において,患者の上体を上げ座位に近い形にし,呼吸を止める際には腹筋に力を入れるよう促し,CT撮影を行っている。これは,重量効果とバルサルバ効果を意識したもので,うっ滞した静脈の拡張および逆流の描出が期待される(図1)。

図1 下肢静脈瘤精査における撮影体位の工夫 主治医および患者とシミュレーションを行い,体に負担がなく,安全に撮影できることを確認して撮影を行った。

図1 下肢静脈瘤精査における撮影体位の工夫
主治医および患者とシミュレーションを行い,体に負担がなく,安全に撮影できることを確認して撮影を行った。

 

ワークステーション搭載型ノイズ低減処理“iNoir”

“AZE VirtualPlace iNoir(以下,iNoir)”は,AZE社が開発したノイズ低減処理ソフトウェアであり,逐次近似再構成(iterative reconstruction:IR)法や逐次近似応用画像再構成(Hybrid IR)法のように投影データに対してノイズ低減処理を行うのではなく,ワークステーションに送信したDICOM画像を基にノイズマップを作成し,ワークステーション上でノイズ低減処理を行う。iNoirの特徴としては,線量依存性がIR法やHybrid IR法と比較して小さく,ノイズ低減処理強度を高めても高周波数域のMTFを落とさずに,辺縁のエッジが保たれた画像を提供できることが挙げられる。iNoirは,IR法やHybrid IR法を搭載していないCT装置に対して有用であることはもちろんだが,CT装置でIR法やHybrid IR法処理を行った後に併用することも可能であり,この点も有用性が高いと考える。

iNoirとHybrid IR法の併用

4D-CT撮影の際,被ばくを考慮し1回の曝射線量を下げて行ったが,ノイズの影響を受けて画質が劣化した。Hybrid IR法を用いて再構成を行ったが,低線量であったため,ノイズ低減処理強度を高めると辺縁のエッジが崩れた画像となった。そこで,ノイズ低減および辺縁のエッジを保つ目的でiNoirとHybrid IR法の併用を行った結果,良好な画像を出力することができた(図2)。

図2 低線量4D-CTにおけるノイズの影響への対策(iNoirとHybrid IR法の併用)

図2 低線量4D-CTにおけるノイズの影響への対策(iNoirとHybrid IR法の併用)

 

CT値を用いた血流評価

下大静脈の逆流について,「AZE VirtualPlace」(AZE社製)の“4次元解析”を使用して四次元動画を作成し,読影を依頼したが,読影医より逆流を定量的に評価したいと要望があった。そこで,4D-CTで得られた画像の下大静脈にROIを上部から下部にかけて6つ設定し,CT値を測定した(図3)。下大静脈は足側から心臓へ血流があるため,CT値も同様に足側から心臓へ変化するものと想定されたが,患者は逆転していた。また,時相も含めた時間濃度曲線(time density curve:TDC)を作成した。TDCにおいても下大静脈が左腎静脈と同じタイミングで濃染されていることがわかり,さらに総腸骨静脈に造影剤が流入するタイミングよりも早い下大静脈の濃染が確認できた。これにより,左腎静脈血の下大静脈への逆流疑いと診断をつけることが可能となった。

図3 CT値を用いた血流評価

図3 CT値を用いた血流評価

 

In-between animationを利用した4D-CT

In-between animationとは,アニメーションの作画工程の一つで,中割りと呼ばれる作業である。原画と原画の間を補うコマを描き入れることで,アニメーションの動きを滑らかに見せることができる。4D-CTでは,被ばくを減らす目的で間欠時間を伸ばすことがあるが,これにより四次元動画の連続性は劣化してしまう。今回の症例では,このIn-between animationを4D-CTに応用して四次元動画を作成することにより,患者説明などに役立ったため紹介する。
In-between animationでは,間欠時間をおいて撮影した画像と画像の間に補間画像を作成していくが,今回は3Dアプリケーションとマルチボリュームアプリケーションを利用した。まず,3Dで各時相の画像を用意し,マルチボリュームで展開する。初期の画面上には,展開した全時相の3D画像が重なった状態で出力される。ここで始点となる基準画像以外を選択し,オパシティをゼロに変更することで,画面上には基準画像のみが出力される。この基準画像をムービー作成に登録し,次の時相以降でも同様の作業を繰り返す。このムービー作成は,登録した画像と画像の間を徐々に変化させ,連続したシネ画像を作成するツールであり,補間枚数も任意で決定できる(図4)。当院では,この処理を行うことで,4D-CTの撮影回数を減らすことが可能になると期待している。

図4 低線量4D-CTにおける間欠時間の影響への対策(In-between animationの応用)

図4 低線量4D-CTにおける間欠時間の影響への対策(In-between animationの応用)

 

まとめ

今回,4D-CTにおいて1回の曝射線量を減らし,間欠時間を長くすることで被ばく低減を図ったが,ノイズの影響による画質劣化および時間軸の連続性の劣化が問題となった。しかし,ノイズの影響に対してはiNoirとHybrid IR法の併用を,時間軸の連続性の劣化に対してはIn-between animationを応用することで,診断に支障が出ない画像を提供できたと考える。

【使用CT装置】
Aquilion ONE(キヤノンメディカルシステムズ社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace(AZE社製)
【使用ソフトウェア】
AZE VirtualPlace iNoir(AZE社製)

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