次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2020年3月号

No.215 画像解析ワークステーションを用いた診療支援

楠  悠樹(社会医療法人財団 池友会 福岡和白病院)

はじめに

当院は,“手には技術,頭には知識,患者さまには愛を”を理念として,1987年に福岡市東区で開院した。救急,循環器,がん医療などを担う地域の中核病院として,24時間365日の救命救急を中心に,高度先進医療・急性期医療を提供している。
病床数は369床で,そのうちICU病棟18床,ハイケアユニット(HCU)16床,回復期26床であり,重症患者の受け入れから日常生活の援助・リハビリテーションまで,幅広く対応している。

当院HNVCでの検査体制

2011年に心臓・脳・血管センター(HNVC)を開設し,循環器内科,心臓血管外科,脳血管外科,血管放射線科という血管病に携わる診療科が1つのチームとなり,経皮的冠動脈形成術(PCI),末梢血管治療,アブレーション,脳・頸動脈拡張術・血栓回収,脳動脈瘤塞栓,肝動脈塞栓療法(TAE)などの多岐にわたる治療に取り組んでいる。さらに,2017年11月から経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)も開始し,現在までの治療例は50例を超える。
当院には,320列CT「Aquilion ONE」,80列CT「Aquilion PRIME」(いずれもキヤノンメディカルシステムズ社製)の2台のCTをはじめ,3T 1台を含む3台のMRIを設置している。また,血管造影室3室のほか,ハイブリッド手術室,CT同室リニアック装置などの高度医療機器の率先した導入を進めている。特に,冠動脈CTの検査数は年間で2500件を超え,多い時で1日に20件撮影し,撮影から解析,結果説明までをすべて当日に行う体制を構築している。冠動脈CT解析用のワークステーションはネットワーク型を採用し,「AZE VirtualPlace 雷神」(AZE社製)で解析を行っている。1日20件の解析をこなすため,本体を合計4台,CT操作室,MRI操作室,血管造影操作室,HNVCカンファレンス室にそれぞれ設置し,さらに16台のPCにクライアント配信しており,同時に計20か所での画像解析・処理および閲覧が可能となっている(図1)。そのうち3か所(本体含む)で冠動脈CT解析を行っている。また,循環器外来,各血管造影室(ハイブリッド手術室を含む),健診クリニックにもクライアントを設置している(図2)。診療放射線技師が3D画像処理や血管解析した結果をワークリストとして保存したものを,医師がそれぞれの場所でクライアントから展開し,わかりやすく患者に提供できるようになっており,治療方針の決定,使用デバイスの選択に,なくてはならないものとなっている。

図1 当院のAZE VirtualPlace 雷神システム構成図

図1 当院のAZE VirtualPlace 雷神システム構成図

 

図2 循環器外来モニタレイアウト

図2 循環器外来モニタレイアウト

 

また,当院の特徴として,冠動脈CT解析画像の作成は,血管造影検査・治療に携わる診療放射線技師のみで行っている。本体のワークステーションでなくても,クライアント端末があれば画像作成や読影ができるため,冠動脈CTの検査件数が多い場合でも,ネットワーク型の利点を生かし,血管造影室担当の診療放射線技師が持ち場を離れず作成可能である。それにより,結果説明までの時間を大幅に短縮できることも,このシステムの強みだと感じている。
図3は,狭心症疑いで冠動脈CT検査を施行し,#6にプラークを多く含む高度狭窄を認め,今後,急性冠症候群(ACS)や急性心筋梗塞(AMI)に移行する可能性があったため,即日PCIになった症例である。ポジティブリモデリング,プラークの性状,石灰化などの把握もできるため,冠動脈解析ソフトウェアの有用性が高い。

図3 冠動脈解析ソフトウェアを用いた症例

図3 冠動脈解析ソフトウェアを用いた症例

 

画像解析の臨床応用

そのほかに,4つの血管造影室(ハイブリッド手術室を含む)にもそれぞれクライアントが設置され,PCIや血管内治療の術中に造影室の大型ディスプレイにリアルタイムに任意の角度の解析画像を表示し,Cアームの角度決定にも重宝される(図4)。特に,ステントグラフト治療の際に重要となる中枢の角度,内腸骨へのカフの追加やTAVI術中のperpendicular viewの角度の検討も可能である。ほかにも,PCIでカテーテルの挿入(engage)困難時の位置情報把握,ロータブレータや方向性冠動脈粥腫切除術(DCA)を行う際の血管内腔と石灰化プラークの関係性を,即座に短軸のオブリーク画像やcurved planner reconstruction(CPR)画像などにより提供することで,手技の安全性にもつながる。慢性完全閉塞病変(CTO)の治療に当たっては,事前にCTを撮影し,かつ実際に臨床現場で造影所見と対比させながら,閉塞部の長さ,走行のみならず,ワイヤ操作のガイドを行うことが必須となっている。

図4 血管造影室内の大型ディスプレイ

図4 血管造影室内の大型ディスプレイ

 

肝臓解析の有用性

さらに,肝切除術を行う前に肝臓解析を行うことで,簡便に肝臓実質の3D画像や体積,任意に囲んだ領域を抽出し,切除肝容量や予定残存肝容量を求めることができる(図5)。患者個々の門脈分岐形態,腫瘍の位置,進行度に合わせた系統的肝切除術の術前シミュレーションが可能であり,安全な肝切除の一助となっている。また,肝臓実質だけでなく,動脈,門脈,静脈などそれぞれの3D画像や体積も同様に求めることができる。肝臓は複雑な臓器であるため,安全かつ正確に肝切除術を行うためには,術前の肝臓解析が必須である。

図5 肝切除術前における肝臓解析

図5 肝切除術前における肝臓解析

 

まとめ

当院では,ネットワーク型ワークステーションを用いて,複雑な解剖や周囲構造物との位置関係を多方面からわかりやすく描出して,院内各所で活用している。臨床現場において,今後もこれらの機能を最大限に駆使し,より患者利益の高い画像を提供できるよう,日々努力していきたい。

*株式会社AZEは合併により,キヤノンメディカルシステムズ株式会社を存続会社として事業統合しました。

【使用CT装置】
Aquilion ONE,Aquilion PRIME(キヤノンメディカルシステムズ社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace 雷神(AZE社製)

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